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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第2章 英雄の成長
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最後の準備



翌朝。俺はダインに材料を渡し注文をして、ギルバート達を連れてアルデバラン迷宮に向かった。



ダインには俺とアラン、ギルバートの武器の作成をお願いした。ギルバートには2種類の武器を用意する予定だ。全てオリハルコンが原料となるので、かなりの高い攻撃力が見込める。ダインは複数のオリハルコンとその他の材料を見て、言葉を失っていた。



午前いっぱいモンスターハウスレベリングをして、出来上がった武器を受け取り、エルドラドを出発する算段だ。



俺はレベリングをしながら、今後のことを考える。



アリアテーゼに勝てると俺は言ったが、あれはハッタリだ。プロメテウスが聞いていたので、俺がアリアテーゼを倒せる可能性がないと分かれば、リンを殺される危険があった。そのために嘘をついた。



だから、アリアテーゼと戦闘になれば勝ち目はない。



アリアテーゼは魔法特化のスキルをいくつも有している。『トリプルスペル』で魔法を3つ同時に発動でき、『魔導の真髄』でクールタイム、詠唱時間が極小となっている。さらに『MP超高速回復』により、減ったMPがすぐに満タンになる。



魔法攻撃力と魔法防御力はありえないほど高く、初級魔法で、こちらが300レベルあっても余裕でオーバーキルされる。こちらの魔法攻撃はほぼノーダメージ。



全属性の上級魔法を使用でき、戦闘開始と同時にノータイムで複数の広範囲超高威力な魔法が連続で襲ってくる。



更に【ハイマジックパワーアップ】と【ハイマジックガードアップ】も使ってくる。『トリプルスペル』により、他の攻撃魔法を使用しながら、同時にこれを使ってくるので、隙がない。



【ハイマジックパワーアップ】により、ただでさえ凄まじく高い魔法攻撃力が2倍になる。こうなると、もはや魔法防御をありとあらゆる手段で高めても、軽くオーバーキルされる。魔法防御を高める方針では攻略が不可能だ。



【フルケア】も使えるため、ダメージを僅かでも受けると、攻撃魔法を使用しながら、【フルケア】も発動し、HPを全回復させる。



唯一の救いは物理攻撃に弱いことだ。防御力も素早さも最大HPも魔王軍幹部の中では最も低い。



しかし、それを補うために【フィジカルリフレクション】を使ってくる。障壁を発生させ、一定時間物理被ダメージを3分の1にし、攻撃した相手を吹き飛ばす効果がある。



アリアテーゼ戦で重要なのは距離だ。物理攻撃は近距離のものがほとんどであり、遠距離攻撃もあるが、威力が大きくないものが多いし、距離によるダメージ減算もある。



遠距離攻撃で、一撃でアリアテーゼの最大HPを削るのは不可能に近い。【フィジカルリフレクション】を使われれば、最大HPの3倍を一撃で削ることになるので、更に不可能だ。



一撃でなければ、即座に【フルケア】で全回復されるので意味がない。



つまりアリアテーゼを倒すためには接近戦をしなければならない。アリアテーゼの魔法は広範囲の遠距離攻撃なので、その猛攻に耐えながら、接近する必要がある。しかし、【フィジカルリフレクション】の効果中に攻撃すれば吹き飛ばされてしまい、また距離が開いてしまう。



広範囲魔法攻撃が中心なので、英雄にとっては回避術が何の役にも立たない。



さらにアリアテーゼはこちらがある程度近づけば、俺もよく使っているスキル『イリュージョン』を使用してくる。



それにより、ランダムで別の場所にワープしてしまう。苦労して近づいて、また遠くにワープされれば絶望するしかない。



そして、アリアテーゼには奥の手がある。戦闘が長引けば、ユニークスキル『魔力暴走』を使用してくる。



『魔力暴走』発動中、アリアテーゼは精霊魔法を使用してくる。精霊魔法は無効が無効。為すすべもなく、一撃死する。『濃霧』の効果も精霊魔法には効かない。



このように、もはやプレイヤーに勝たせる気が全くない無理ゲー仕様だ。



しかし、勝つ道筋が存在する。まず絶対に必要なのは『濃霧』だ。



『濃霧』発動中は魔法効果がかなり弱まる。アリアテーゼが【ハイマジックパワーアップ】を使用していても、その効果さえ弱まるので、魔法攻撃で一撃死しなくなる。



それでも300レベルの最大HPで4分の1くらいは削られる。



次に必要なのが、装備品の不屈の腕輪かパラディンのスキル『不動心』だ。アリアテーゼの魔法の猛攻で毎回ノックバックし吹き飛ばされていたら、永遠に彼女に近づけない。だから、ノックバック無効の効果がいる。これはあのジャスパーの『天地崩落』を耐えるためにも必須だ。



『不動心』を使用し、両手に別の属性吸収の腕輪を付け、『濃霧』の効果中に、ひたすら魔法攻撃を耐えながら接近して一撃で倒せる攻撃をする。



2属性吸収でHPを回復しながら、他の属性でダメージを受け、エクストラポーションを使用しながら、接近する。そして、『フィジカルリフレクション』が切れたタイミングで『イリュージョン』を使われる前に、一撃を入れる。



そして、『濃霧』の効果時間が終わるか、アリアテーゼが『魔力暴走』を使用した瞬間に時間切れとなり、死ぬしかなくなる。



大体このような戦い方だ。多少運が絡むが、この方法で20回に1回くらいの確率で、アリアテーゼを倒すことが出来る。ウォルフガング戦に比べれば、かなり高い勝率だ。



今の俺は『不動心』と『濃霧』を持っているが、属性吸収の腕輪がない。それにコンティニューのない現実世界で20回に1回の勝率は絶望的だ。それにゲームでは時間経過によって使ってくる『魔力暴走』を早めに使われることも考えられる。



シリュウが『死影』をHPがまだある状況で使ってきたことからもその可能性がうかがえる。



以上のことから、俺が現状アリアテーゼを倒せる可能性はない。魔王城では絶対に出会ってはいけない相手だ。



午前いっぱいレベリングを行い、ギルバートのレベルもかなり向上した。レベルは230まで伸びた。スキルもいくつか取得した。



『スナイプショット』即死効果のある弾丸を放つ。成功率は低い。

『ロックオン』一定時間、対象に指定した的に全ての銃弾がホーミングで当たる。

『アサルト』前方広範囲に広範囲に中威力の弾幕を張る。

『二丁銃の心得』片手銃を両手で装備出来るようになる。

『火炎弾』一定時間、銃弾に炎属性を付与する。

『雷撃弾』一定時間、銃弾に雷属性を付与する。たまに攻撃した相手を麻痺させる。



230レベルでは正直魔王城では戦力にならないが、ギルバートは遠距離から攻撃でき、ノックバック効果があるスキルが多い。逃げること前提なら何とかなるだろう。



それに、これらのスキルとダインに作ってもらった武器を組み合わせれば、中々面白い攻撃が出来る。



俺は残念ながらソードマスターの最後のスキルを覚えられていなかった。さすがに最上級職は必要経験値がありえないくらい多い。



俺たちがエルドラドに戻ると、ダインがドヤ顔で待っていた。自信作が出来たようだ。



「おう、待ってたぜ、ご注文の品だ」



まずはギルバートの武器。1つ目はフィンガーピストル。材料が安価で最も攻撃力と耐久値が弱い片手銃だ。



しかし、これがギルバートの切り札になる。俺はゲームではギルバートを使っていなかったが、覚えるスキルは全て把握している。



このフィンガーピストルにはギルバートのスキルの効果を最大限に引き出せる秘密がある。



フィンガーピストルには、空きスロットが1つある。だから、ここに『爆砕』のスキルを付与する。



『爆砕』はエクスカリボーにも使われている。耐久値が0になる攻撃をした時、必ずクリティカルが発生するスキルだ。



そして、ギルバートには『スナイプショット』がある。まれに即死させる効果だ。



クリティカルが発生すると、効果が100%発揮される。つまり、即死の完全耐性を持っていない限り、必ず一撃で倒す悪魔の凶弾となる。



ただエクスカリボーとは違い、同時に耐久値が0になり、壊れてしまう。しかし、別に構わない。



俺はダインに100個のフィンガーピストルを作ってもらったからだ。材料が安価だから、いくらでも作成することができる。



全てをあと一撃で壊れるように使用しておけば、使い捨ての即死銃となる。魔王城に出現する敵で即死の完全耐性を持つものは多くない。



これでギルバートは魔王城で活躍できる頼もしい仲間だ。







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