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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第1章 英雄の目覚め
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最高のパートナー



だから、ゲンリュウを倒すには物語後半で手に入る氷雪の剣を手に入れるしかない。この剣は氷結属性の付与ダメージ上乗せがある。斬撃属性のダメージは通らないが、この付与ダメージ分だけは通る。また一定確率で状態異常である氷結にさせることができる。



ゲンリュウを凍らせて動けなくしてから、チマチマ付与ダメージ分で倒すしかない。



だから、この物語序盤でゲンリュウを倒すのは不可能なのだ。



「どうした? 小僧、怖くなったか?」



ゲンリュウが挑発をするように言った。俺は大きく息を吐き出し、ゲンリュウに向かって歩き出した。



この世界は不可能に満ちている。そんなことは百も承知だ。それをいくつも超えてきたのが、俺たち英雄だ。



ゲンリュウが目を細める。きっと俺が今までに出会った中で別世界の存在だと勘付いたのだろう。ゲンリュウの表情から余裕が消えていく。そこに残されたのは、獰猛であり研ぎ澄まされた剣士としてな顔だった。



俺はゲンリュウの目の前に立ち、大きな声で宣言した。



「俺はその一騎打ち」



これが俺、英雄の戦い方。この世界で生き残るための力。














「絶対受けません!」



「よかろう! お主のその覚悟……へっ?」



ゲンリュウが間の抜けた声を出した。



「勝てる気しないんで、いいっす」



不可能からあえて逃げること、これも英雄としての英断だ。



「ちょっ、ちょっと待て、お主、わしを仲間にしにきたんじゃないのか?あきらめて良いのか?わしは強いぞ」



必死で有能アピールをする老人に俺は少し申し訳なく思った。



「いや、本当に結構です」



俺はそう言って、おもむろによく分からない骨を取り出して差し出した。彼は嬉しそうにパクっと食いついた。



視界にダイアログが流れる。



ポチを仲間にしました。



俺は踵を返して、帰ろうとする。骨を加えたポチは老人を放置して付いてくる。当初の予定通り、俺的使える仲間一位のポチを仲間に出来た。



老人は口を開けたまま、放心していた。よく分からない骨に、唯一の家族をあっさり奪われたのだから仕方がない。



俺は一抹の申し訳なさを感じながら、道場を後にした。



______________________



そもそもゲンリュウを仲間にする気など全くない。彼は仲間にしてみたらガッカリだったランキングで上位に君臨する。



あれだけ強そうであり、更に仲間にするのも一苦労なのに、いざ仲間にするとその使えなさに愕然とする。



まず『剣の極み』だが、モンスターで斬撃属性の攻撃は意外に少ない。それ以前に魔法で一撃死する。



次に『一閃』だが、攻撃対象は一体しかない。乱戦にもつれ込んで一体を倒した後、やたらに長くかっこいい残身をする。その間に他の敵に殺される。



素早さが高いにも関わらず回避ではなく、カウンター技である『流水の構え』を多用する。カウンターが発動するタイミングがあまりに狭く、基本発動せずに攻撃を食らって死ぬ。



以上の理由により、とてもガッカリキャラだった。それに比べてポチは優秀だ。



ポチはネタキャラである。ステータスは全てが最弱。装備も付けられない。しかし、それでもポチは最高だ。



ユニークスキルもネタであり、『ここ掘れワンワン』と『ワンダフルパンチ』を初期から持っている。



『ここ掘れワンワン』はフィールドアイテムテーブルの中で最もレア度の低いものを掘り当てることができる。



フィールドに落ちているアイテムは専用のテーブルがあり、そのテーブルから場所と物を抽選してランダムに出現する。



『ここ掘れワンワン』を使用すれば、探さなくてもレア度の最も低いアイテムをすぐに入手することができるのだ。まあ基本的に石ころとか木の枝しか手に入らないが。それでもポチは最高だ。



『ワンダフルパンチ』の効果も素晴らしい。防御力無視でダメージを与えることができるのだ。どんな敵でも固定ダメージ1を与えることができる。ワンだから1ダメージ。やっぱりポチは最高だ。



俺は早速ポチと共に駆け出す。何の準備もせず、気ままに城下町の東へと。



そもそも無一文であり、何も準備をすることができない。だが、俺とポチなら大丈夫。ゲームのときにずっと共に冒険してきた最高の仲間、それがポチだ。



俺たちは浮かれた気分で城下町の東門を出た。そこには広大な草原が広がっていた。



暖かい日の光に気持ち良い風が吹いている。シートでも広げてピクニックでもしたい気分だ。モンスターが跋扈しているので、そんなにゆっくりできないが。



早速目の前にグレイウルフという狼のモンスターが駆け寄ってくる。名前の通り灰色の狼だ。俺は剣を構えた。チュートリアルを除いて初めての戦闘だ。



ポチも戦闘にそなえて、構え……ずに何も考えないでちょうちょを追ってグレイウルフの方に走っていく。



グレイウルフの目の前でちょうちょに飽きて、今度は地面の虫を捕まえ始める。



グレイウルフはそんなポチの真横まで移動し、あっさり素通りした。



やっぱりポチは最高だ。スキルではないのだが、ポチは自分から攻撃を仕掛けない限り敵の目の前にいても攻撃されない。攻撃対象にならない。



今ポチには何もするなという指示を出している。これで範囲攻撃魔法以外でポチが攻撃を受けることはない。



グレイウルフは助走をつけて、俺に飛びかかってくる。身体が勝手に反応した。右に一歩で避け、ウルフの軌道に合わせて剣を振るう。視界にダメージ数字が現れ、グレイウルフは青い粒子になって消えた。



やはり身体が覚えている。これなら戦える。俺は自信を持った。城下町近隣のモンスターは、もはや巨神兵のブーストを受けた俺の敵ではない。



俺は目的地である東の森に向かうまで、楽しくなって草原の敵を片っ端から狩りまくった。途中で大岩や木に登って遊んだりもした。ポチは相変わらず穴を掘ったり、虫と戯れた。



俺のレベルは上がらなかったが、ポチはレベル3まで上がった。パーティを組んでいれば、経験値は分配されるので、何もしていないポチのレベルも上がっていく。



しかし、計算方法は分割なので、ソロで戦う時の二分の一になってしまう。4人パーティなら四分の一だ。だから、本当に経験値が欲しいときはソロで狩りをしていた。



そして、俺はヒール草のある東の森に到着した。はじめての採集イベントが始まる。




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