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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第1章 英雄の目覚め
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覇王戦



「いいだろう、受けて立つ、だが条件がある」



俺の言葉には既に恐怖はなかった。そこには勝利への飽くなき執着があった。俺は続ける。



「お互いに最強の一撃を受け合おう、まずは俺からお前に最強の一撃を放つ、もし生き残ればお前の最強を受けよう」



提案にウォルフガングの目がギラついた。



「お前、俺を一撃で倒す気か? ハハ、おもしれぇ、やってやろう」



乗ってきた。第1条件はクリア。ゲーム時代では出来ない交渉が成立した。ウォルフガングの性格を考えれば行けると思っていた。これで素早さの差は埋められた。



「さぁ、どこからでも来な!」



ウォルフガングは両腕を広げる。



俺は息を大きく吸い込み、覚悟を固めた。俺が今放つことができる最強の一撃を作り出す。



[エルフの秘薬]……一定時間、MPをいくら使っても消費しなくなる。1つで3回使用できる。



俺はエルフの宝物庫で手に入れたエルフの秘薬を使用する。魔法で攻撃するわけではない。これには別の用途がある。



[魔剣ダイダロス]……触れているもののMPを吸収し、次の一撃だけの攻撃力を上昇させる。



俺はダイダロスの刃を自分の腕に押し当てて、能力を発動する。本来ならば俺のMPを全て吸い尽くしても、僅かしか上がらない。



しかし、エルフの秘薬の効果でMPが減らないため、最大まで吸収できる。ダイダロスの攻撃力が4000まで上がる。俺の攻撃力と合わせて4300。



[聖樹の蜜]……使用すると一時的に最大HPが2000増える。



次に世界樹でドリアードから手に入れた聖樹の蜜を使用する。俺の最大HPが2600になる。



【アンデッド】……対象一体を状態異常ゾンビ化にすることができる。



[ゾンビ化]……最大HPが3倍になる代わりに、回復魔法で逆にその分のダメージを受けるようになる状態異常。



俺は神兵の腕輪を外す。これで俺に状態異常が通るようになる。俺はデュアキンスに声をかけた。



「デュアキンス、俺に【アンデッド】をかけてくれ」



デュアキンスはこの状況に戸惑いながらも、言われた通り【アンデッド】を発動する。俺はゾンビ化状態になり、肌が白くなる。最大HPが補正されて3倍の7800になる。ステータス補正と状態異常の補正は重ねがけすることができる。



これはウォルフガングの攻撃に耐えるためではない。これだけのHPがあっても無駄だ。俺は攻撃の為だけにHPを増やした。



『ワンナイトカーニバル』……ポチのユニークスキル。味方全員を状態異常の狂乱にする。



[狂乱]……混乱の上位状態異常。魔法が使えなくなり、HPが1になる。その代わり攻撃力が2倍になる。



俺はポチに指示をし、『ワンナイトカーニバル』を使用させる。赤い光に包まれ、俺は狂乱状態になった。



『狂戦士の怒り』……バーサーカーのスキル。減少しているHP分だけ攻撃力を上げる。



俺はワンナイトカーニバルにより、7600あったHPが一気に1になる。減少した約7600がそのまま攻撃力に加算される。これが最大HPを上昇させた理由だ。



元の攻撃力600、強化されたダイダロスの攻撃力4000、狂戦士の怒りによる攻撃力補正7600、合計12200。そしてこの値に狂乱状態の攻撃力2倍がかかり、24400。



「覇王、俺の最強を受けてくれ」



俺は地面を蹴り、ウォルフガングに向かう。ウォルフガングは愉快そうに歯を剥き出しにして笑顔を作る。



『ドッペル』……一定時間、自分と同じ行動をする分身を作る。



俺は『ドッペル』を使用する。左手側にもう1人の俺が分身する。これでダメージ総計は更に2倍。48800。



『ワンモアチャンス』……1日に1回、HPが0になっても、復活できる。



ウォルフガングの最強の攻撃を受けても、俺は生き残れる。それはポチのワンモアチャンスがあるからだ。しかし、それで生き残ってもウォルフガングがその後見逃してくれる保証はない。



それに俺は生き残りたいというより、ウォルフガングを倒したい。だから、ワンモアチャンスは攻撃に使用する。



『絶命斬り』……最大HPの100%を使用し、ダメージ量を8倍にする。



ウォルフガングが俺の大剣に込められた力を感じ取ったのか、表情から笑顔を消した。



これが俺が放てる最強の攻撃だ。俺は絶命斬りを放つ。



ドッペルはそれぞれの攻撃なので、ウォルフガングの防御力による軽減がかかる。分身は抜きにして、24400から防御力8000が軽減され、16400のダメージ。絶命斬りは最終計算されたダメージ量を補正するので、その8倍の131200ダメージ。



それが分身込みで2倍。



総合計262400ダメージ。



攻撃が当たった瞬間、ウォルフガングの絶叫と共に俺の視界は暗転し、俺は死んだ。
















どこからかポチの遠吠えが聞こえ、俺は意識を覚醒させる。



ワンモアチャンスが発動し、俺はすぐにウォルフガングの様子を見る。



俺の最強の攻撃を受けたウォルフガングは、倒れずに悠然と立っていた。



「すごいな、お前、今のは効いたぜ」



()()()だった。これではまだHPを削り取れないと思っていた。



「次は俺の番だな」



ウォルフガングがにっと笑い、腰溜めに拳を握る。最強の破壊力を誇る。全てを無に帰す一撃。『グランドゼロ』。



溜めが5秒ほとあり、その間はスーパーアーマー状態で、一度構えに入れば攻撃を与えてもキャンセルできない。



効果範囲は前方極大射程。ただのパンチの筈が、放たれる光の奔流により、どれだけ離れていても無意味だ。後ろに回ることも出来ない。回り込もうとしても、溜めながらウォルフガングはプレイヤーの方を向き続ける。



つまり一度構えを取られれば回避不能。その威力は攻撃力の10倍という常軌を逸している。



そして、ここまで全て予想通りだった。俺はお互いの最強の一撃を打ち合うと言った。ウォルフガングがこの技を選ぶことは分かっていた。



俺は正々堂々なんて戯言を捨て置き、溜めに入ったウォルフガングに攻撃を仕掛けた。



計算上、HPを削りとれないことは分かっていた。だから、5秒の溜めがあるこの技を発動させたのだ。この技を止める唯一の方法。それは溜めている最中にウォルフガングを倒すことだ。



ダイダロスの攻撃力は元に戻っており、俺の攻撃力と合わせて1100。しかし、狂戦士の怒りとワンナイトカーニバルは健在で、7600の上乗せ8700の2倍17400。ドッペルはクールタイム中で使えないが、防御力8000を差し引いても9400のダメージを与えられる。



俺はこの5秒に全てをかける。出来るだけ早く、高速で斬撃を繰り出す。



ウォルフガングの瞳に怒りが見える。お互い一撃ずつ与えるという約束を反故にしてるのだから、当たり前だ。



俺は焦り始める。まもなく溜めが完了する。この一撃はイリュージョンでも避けるのが難しい。範囲が広すぎるため、イリュージョンで移動した先が範囲内である確率が高い。そんな運否天賦に命はかけられない。



俺は限界まで切り続ける。俺の体内時計が残り1.5秒をカウントする。そして、最後に放った一撃がウォルフガングのHPを削りきった。



ウォルフガングの身体が赤い光に包まれる。ウォルフガングは『ド根性』のスキルを持っている。初めてHPが0になると自動的にHP1で耐え抜くのだ。この後、もう一撃入れる必要があった。



だが、それは間に合わない。『ド根性』には僅かな無敵時間がある。俺の経験が、無敵時間が終わるまでに『グランドゼロ』は溜め終わると告げている。



俺はあと一撃で倒せるという未練を捨て、バックステップをし、咄嗟に頭上へとあるアイテムを投げた。同時にカウントが0になった。



『グランドゼロ』圧倒的な力の奔流が大地を削り、大気を震わせ、全て破壊し尽くしながら、遥かに遠くまで伸びる。



その波に呑まれ、俺の視界は白に染まった。







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