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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第6章 英雄の挑戦

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タナトス戦



カーマインは大地の大剣を装備している。攻撃力が高く、カーマインに合う良い装備だ。ハルがアイテムボックスに入れていたレアアイテムを貸したのだろう。



カーマインは斧ではなく、本来剣を使うことを得意としている。戦姫エルザの剣の師匠でもある。



『死滅の魔眼』対策もできている。ウォルフガングは初めから状態異常無効だし、カーマインも神兵の腕輪を装備している。ハルが自分の分を渡したのだろう。だから、ハルは最深層に残って姿を見せていないようにしている。



俺は即座に行動を起こす。サタンを『イミテート』した。



同時にサタンのカウントダウンがゼロになり、青い粒子へと変わる。



あとは時間との勝負。俺のカウントダウンはあと75秒。



【ウルトラパワーアップ】



LOLが生み出したぶっ壊れバフスキル。ウルトラシリーズ。



対象のステータス値を100倍するという、頭がおかしいとしか思えない敵専用の強化スキルを俺は使用した。



このためにサタンが必要だった。サタンが死ぬ前に『イミテート』する必要があったから、ぎりぎりのタイミングだった。



サタンは攻撃力を強化するすべてのスキルと魔法を覚えている。これで最強の物理アタッカー、ウォルフガング、カーマイン、バクバクの攻撃力を100倍に異常強化する。



「総攻撃するぞ!」



全員が怒涛の勢いでタナトスを攻撃する。『物理ダメージ半減』のはずが、信じられない異常なダメージ数値が連続で刻まれる。



あとは時間との勝負、俺のカウントダウンが終わるよりも早く、タナトスのHPを削り取れるかどうかだ。



あと50秒。



ウォルフガングとカーマインの強烈な連続攻撃により、タナトスは激しいノックバックでまともに行動ができない。



二人が好き勝手に攻撃するので、俺はバクバクに指示を出しながら、ノックバックが続くように調整して攻撃を与える。



ウォルフガングとカーマインには回避術がない。タナトスに攻撃をさせるわけにはいかない。



あと30秒。着実にダメージを刻んでいく。



一瞬できた隙でタナトスがスキルを発動した。



『冥界の淀み』



亡者を召喚するスキルだ。タナトスのHPが減っているときに使用してくる。15体の亡者が四方八方に現れる。



本来なら大したスキルじゃないが、今はタイミングが悪い。亡者に掴まれればウォルフガングやカーマインは即死する。先に亡者を駆除しておきたいが、タナトスのHPを削るための時間のロスになる。



「現れた亡者には絶対に触られるな。俺が対処する。タナトスへの攻撃を続けてくれ!」



俺は全員に指示を出し、亡者の位置を把握し、ウォルフガングとカーマインを守るように動く。ダメージソースとして、俺が一番攻撃力が低い。残り三人には攻撃に集中させる。



『スイッチ』



一人で二人を15体の亡者から守るのはかなり無謀だった。『スイッチ』を使用しないと手が足りない。常に高速で動く戦況と位置関係を把握し、二人に近づく亡者を倒していく。超高難度のタワーディフェンスをしているような感覚だ。



どうしてもバクバクへの指示が疎かになり、ノックバックの管理ができなくなる。



そのため、タナトスが自由に動ける時間が先程より増えている。



俺のカウントダウンはあと24秒。今だけはウォルフガングとカーマイン、それぞれ個人の回避能力に依存するしかない。



二人のステータスと戦闘センスは尋常ではない。凄まじい連撃をタナトスに繰り出している。



それでも回避術だけは、俺たち英雄には及ばない。



ほんの僅かな隙だった。カーマインがスキルを使用した後の一瞬の硬直をタナトスに突かれた。カーマインの右腕がタナトスに掴まれた。



それは致命的なミスだった。『霊魂放出』を使用される。あらゆる対策が無効、発動されたら必ず死ぬスキルだ。



ゲームで『霊魂放出』を発動されると、青い粒子の死亡エフェクトすら発生しなかった。おそらく魂を完全に消滅させるスキルという扱いだ。デュアキンスに魂を保管してもらうこともできない。



俺はカーマインに向かって走り出す。『スイッチ』がクールタイム中であることを呪った。『バニシング』の効果範囲にタナトスを入れないと、カーマインが死ぬ。



直感的に悟る。ゲームで何度も殺された経験が蘇る。



俺は間に合わない。
















ーーーーーーカオリーーーーーー



前にここに訪れたときはレンに邪魔をされた。きっとあの頃から私を疑っていたのだろう。だから、私に会わせることを拒んだ。しかし、今は邪魔者がいない。



奈落の王、ハーデスを私のものにする。



私は壊れた扉をくぐり、ハーデスの部屋へと入る。ハーデスは王座に座っていた。



「何者だ?」



低い声が響く。



「エレノアと申します。先程謁見したレンの仲間です」



攻撃をされないように、念の為演技をする。まだ『デバッグプログラムδ』の効果範囲に入っていない。



「ハーデス様にどうしても伝えないといけないことがありまして」



私はそう言いながら、違和感がないように数歩前へ進んだ。スキルの範囲内にハーデスを捉えた。



「どのようなことだ?」



私の勝ちだ。ハーデスがどれだけの強者であろうと、NPCである以上、私からは逃れられない。



私はハーデスの問いに答えず、スキルを使用した。



『デバッグプログラムδ』



途中はどうなるかと思ったけど、最終的に私は勝った。レンがタナトスに奇跡的に勝ったとしても、私はハーデスという最強のカードを手に入れた。












「なぜ黙っている?」













え。



なんで。



私は『デバッグプログラムδ』を発動したのに。



()()()()()()()()()()()



スキルが発動すれば、自分の意思でNPCが話すことなどないはずなのに。



「……お前の言うとおりだったな」



ハーデスが槍を握った。同時に王座の後ろからある人物が現れた。こちらを見ないように後ろを向いている。



「はい。この女がハーデス様の仲間である悪魔たちを操った、奈落に紛れ込んだ異物です」



意味がわからない。なぜリンがこんなところにいる。彼女はただのNPCのはず。



「ち、違います。私の話を聞いてください」



私は高速で頭を回転させ、ハーデスを納得させるシナリオを構築する。早口でそのストーリーをハーデスに説明する。



「ハーデス様は騙されています。なぜなら、そこにいる女は」



物語を作る。それが私の武器。その力だけなら誰にも負けない。



「言葉には……重みがある」



ハーデスが私の弁明を遮って、立ち上がった。



「お前は賢いのだろう。口が上手いのだろう。だが、人を動かすのはうわべだけの理屈ではない」



私はもう一度『デバッグプログラムδ』を使用する。だけど、ハーデスには効かない。



ハーデスが兜の下で目を閉じているとしか考えられない。



「言葉の重みが違う。俺はそこのリンの言うことを信じる。リンの言葉はお前の取り繕った言葉より、ずっと重かった」



私は崩れ落ちた。たとえ目を閉じていたとしても、ハーデスに敵対されて勝てるわけがない。



「た、助けてください! なんでもしますから」



私は醜く泣き崩れて、命乞いをする。か弱い女性を全面に出す。もう感情に訴えるしかない。



たかがNPCに命乞いをする。屈辱だったが、私は殺されるわけにはいかない。



「無理だ」



一切迷いの無い言葉だった。私はすぐに方針を変えた。



「リン! 私は大事な情報を持っています。私は死ねばレンが困ることになる!」



リンにハーデスを止めさせる。それしかない。



「私にはレンの考えていることが誰よりもよく分かる。あの人の側でずっと見てきたから」



一縷の望みに賭ける。このNPCを騙すことができれば私は助かる。



「レンは仲間を本当に大切にしている。でも、仲間を脅かす敵には容赦しない。レンもきっとあなたを助けるつもりはない」



容赦のない返答だった。私の武器であるはずの言葉が何の力も持たない。



「なんでよ! なんで! 私は上手くやった! NPCのくせにどうして私の言うことを聞かないの!」



「それ以上、醜い言葉を吐くな」



ハーデスが槍を振り下ろした。




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