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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第1章 英雄の目覚め
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準備完了



それから俺たちは毎日、地下でレベリングを行った。その間、デュアキンスには除霊させないために嘘の情報を流し続けている。少し申し訳なく思うが、俺たちが生きるためには必要なことだ。



リンは3日目にして俺でさえ、その成長ぶりに恐ろしくなってきた。今も5体のシャドウアサシンの攻撃を全て紙一重で回避している。



もうシャドウアサシン級までたどり着いている。正直、ここまで成長するとは思っていなかった。間違いなく今のリンは全キャラクターの中で最も回避能力が高い。



「よし、もう修行はこれで十分だな」



これ以上、リンはシャドウアサシンと戦っても成長はない。次はエルザかナイトメアを相手にしないといけないだろう。



「そうね、今はこいつらの攻撃が止まって見える」



達人の発言がリンから漏れる。俺でも止まって見えたことはないのだが。リンは高速でシャドウアサシンの間を縫いながらエクスカリボーで切りつけた。ダメージ計算もしていたのか、ちょうど5体が同時に青い粒子になって消失した。



俺は苦笑いしながら、廊下を突き進み、ノーライフキングがいる部屋へと向かう。リンは俺の背中に向け、声をかける。



「いよいよ、親玉を倒すのね」



「え? そんなことしないけど」



俺は驚いてしまった。なぜノーライフキングを倒すと思ったのだろう。



「だってもう修行は終わりなんでしょ?」



「ああ、これ以上やっても意味がないからな」



「……」



何か話が噛み合わない気がする。修行が終わったのだから、次にすることは決まっている。むしろ当たり前のことをするだけだ。



俺は鞄から尖った石を取り出した。



「だから次はシャドウアサシンを燃やすんだよ」



そもそもここに来た目的はレベリングのためだ。リンの回避能力を高めることも目的ではあったが、むしろレベリングがメインと言って良い。



狭い部屋で入り口が一つだけ。



倒しても無限に湧き出るシャドウアサシン。



ノーライフキングはデュアキンスのスキル以外で死なない。



ここまで条件が揃ったら、燃やすという選択は当たり前のように出てくるはずだ。むしろ、思いつかない方が難しい。



リンは気づいていなかったようだ。少し抜けている一面もある。普通ならみんな気づくだろう。



俺は入り口に尖った石を並べ、部屋からシャドウアサシンが出られないようにして、タールを大量に投げ入れ始める。



そして、十分タールが広がったところで、炎を付ける。部屋一面に赤い炎が広がり、まるでオーブンの中のようになる。



俺はそこに露店で購入していた不発弾を大量に投げ入れる。これが今回の『養殖シャドウアサシンレベリング』のコツだ。



ブルースライムとは違い、HPが高く5体以上増えることがない。そうなると効率がかなり悪くなるのだ。



一体討伐するのにかかる時間を短くするためには、鍛治でも使用した不発弾が有効だ。



不発弾はダメージを与えると、一定確率で爆発し、広範囲に大ダメージを与える。正確にはダメージを与えた際の1%で爆発する。確率があまりに低いため、戦闘ではまるで使えない。



しかし、炎上している炎の中で継続ダメージを与え続けると、その都度、爆発するかどうかの確率計算がされる。炎は2秒に1回ダメージ判定があるので、待っていれば平均200秒で爆発する。



その不発弾を20発投入すれば、確率的に10秒に1回は爆発が起こる。



俺は大量に不発弾を買い込んでいるので、あとはタールと不発弾を投げ入れ続ければ、凄まじいスピードで経験値を入手できる。



作業を開始し、断続的な不発弾の炸裂音と共に経験値が流れ込んでくる。なぜかリンは呆れたような、残念な目で俺を見ている気がした。俺には全く理由が分からない。



それから俺は毎日、朝から晩までただタールと不発弾を投げ入れ続けた。ポチは飽きて居眠りをし、リンは俺を無視して、1人で素振りをした。



5日間が経ち、俺たちのレベルは十分なレベルに達した。邪龍討伐前で最善の準備ができたと言っていいだろう。今のレベルなら邪龍の右手ひっかき以外一撃死することはない。



俺のレベルは117、マジックナイトと武闘家とグラディエーターを極めることができた。


マジックナイトのスキル

『マジックバリア』魔法を弾く障壁を作る。耐久力は使用者の魔法防御の3倍。展開中、常にMPを消費する。

『魔法剣』自分が最後に受けた魔法の属性を剣に付与できる。

『吸魔剣』ダメージを与えることで、MPを少し敵から奪う。

『セイントレイ』光線を放つ光属性の中級魔法。回避は不可能で貫通効果があり、直線上にダメージを与える。




武闘家のスキル

『飛燕脚』蹴りで衝撃波を飛ばす中距離攻撃、距離が遠いほどダメージが減衰する。

『会心撃』当たればクリティカルが発生する。命中率は10%。

『旋風脚』周囲2メートル範囲に蹴りの衝撃波を飛ばす。

『根性』HPが0になった時、30%の確率で残りHP1で踏ん張る。一度発動したら、一日間は発動しない。



戦士と武闘家を極めることで上級職のグラディエーターになれる。これも極める事が出来た。

『一刀両断』大剣を装備していることが使用条件。前方5メートルにダメージ量3倍。距離による減衰なし。

『なぎ払い』前方の敵を吹き飛ばす。ダメージ量は通常攻撃と変わらないが、相手と距離を取ることができる。

『剛殺斬』大剣、片手剣を装備していることが条件。異様に長い溜めの後、前方の敵一体に特大ダメージを与える。

『二刀の心得』片手剣を二刀流で装備可能になる。



職業は邪龍討伐に向けて、攻撃力と素早さに秀でているグラディエーターのまましておくことにした。



『二刀の心得』は非常に有効だ。ゲームでは俺は基本的に二刀流を使っていた。今は優秀な片手剣が手に入っていないので、しばらくはダイダロスで行く予定だ。



リンも110レベルまで上がった。大器晩成型の恩恵もあり、ステータスの伸びがここに来て大きくなり、素早さとMP、魔法防御力、魔法攻撃力は俺のステータスを超えている。



【フルケア】対象一体の最大HPの100%を回復する。

【ボルケーノ】範囲内の敵に大ダメージを与える火属性の上級魔法。

【テンペスト】広範囲に嵐を引き起こす風属性の上級魔法。

【ハイパワーアップ】パワーアップの進化スキル。一定時間、対象の攻撃力を2倍ににする。

【ハイガードアップ】ガードアップの進化スキル。一定時間、対象の防御力を2倍ににする。

【ハイスピードアップ】スピードアップの進化スキル。一定時間、対象の素早さを2倍ににする。

『ど根性』根性の進化スキル。HPが0になる攻撃を受けた時、残りHP1で耐えることができる。一回発動したら一日間は使えない。

『生魔転換』生命魔法の進化スキル。HPとMPの役割を一定時間、入れ替えることができる。

『五月雨斬り』片手剣、短刀装備が条件。高速の5連撃を与える。

『流星剣』片手剣、短刀装備が条件。斬撃を流星のように飛ばす中距離スキル。

『一閃突き』片手剣、短刀、槍装備が条件。一気に高速で接近して、突きを繰り出す。ノックバック効果が大きい。



恐ろしいほど優秀なスキルが揃う。回復役にもサポート役にも、前線でアタッカーにも、後衛で魔法役としても活躍できる。まさにオールラウンダーだ。



俺はゲーム時代、リンを使っていなかったが、今なら愛用していたプレイヤーの気持ちが分かる。



更にシャドウアサシン級の回避術も身につけている。頼りになる仲間だ。



ポチもレベル112になった。ステータスはほんの少ししか伸びていないが、ネタスキルは少し覚えた。



『ワンダーランド』一定時間、自分の周辺にいる者のMPを徐々に回復させる。敵のMPも回復する。

『ロンリーワン』常時発動型スキル。敵に認識されていない限り、広範囲攻撃によるダメージを受けない。



ようやく安定してきた。『ロンリーワン』を覚えられたのは大きい。今までは広範囲の攻撃をされれば、ポチが巻き添えになる可能性があった。しかし、今後は自分から攻撃を仕掛けない限り、広範囲攻撃の巻き添えになることがない。



ここまで仕上げれば、邪龍討伐には十分だろう。明日がちょうどこの世界に来て一ヶ月。邪龍イベントが始まる日だ。



「よし、今日はここまでにして、酒場で明日の打ち合わせをしよう」



「……何の打ち合わせだ?」



「何って邪龍の討伐にきまっ……」



俺は予想外の声に錆びた機械のように振り向く。暗闇の中にデュアキンスが立っていた。



「げっ、じゃなくて、ちょうど良かったよ、デュアさん! 今呼びに行こうと思ってたんだ、さっきこの通路を見つけて、親玉がこの部屋の奥にいるんだ」



デュアキンスは辺りを見渡す。間食用の食料や毛布、暇つぶし用の本などが散乱している。まさにここで生活していると言われても不思議ではない。



不発弾とタールを投げ込むだけの毎日だったので、いろいろ快適になるように持ち込んでいた。



「……ついさっき、見つけたのか?」



「はい! デュアさん!」



俺は全力で頷いた。












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