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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第6章 英雄の挑戦

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ベルフェゴールの軍団



_________レン__________




歩いていると微かな悲鳴が聞こえた。聞き間違いと思えるほどの小さな声だった。



「こっちだ!」



俺は声が聞こえた方向へ反射的に走り出す。女性の声だった。



近づくにつれて戦闘音が聞こえてくる。やはり空耳ではなかった。恐らく魔法を使用した戦いだ。俺は音を頼りに細い通路を進む。距離はもう近い。



角を曲がると、エレノアがモンスターに囲まれて単独で交戦していた。かなり劣勢のようだ。



敵の中にエンドキューブが混じっている。エンドキューブは魔法使い系のキャラクターとは相性が悪い。エレノアでは対応しきれないだろう。



エンドキューブが攻撃を仕掛けようと変形を始めている。まずい状況だ。



「待ってろ! 今助ける」



俺は『スイッチ』でエレノアと場所を入れ替え、エンドキューブから放たれるビームのような即死攻撃を全て回避する。



同時にバクバクを召喚し、2人で攻撃する。アスモデウスも遅れて戦闘に参加した。



俺とバクバクとアスモデウスが参戦したことで、戦況は一気に変わり、敵を殲滅することができた。エンドキューブも防御状態になって地面に転がっていた。



「はあ……はあ……ありがとうございます。危なかったです」



エレノアの消耗が激しい。ぎりぎりのタイミングだった。



「大丈夫か?」



「……はい、何とか……大丈夫です」



「何があったんだ?」



エレノアは思い出したように身を乗り出した。



「そうなんです! レンさんに伝えないといけないんです。みんなで逃げ出したあと、あのストーリーメーカーという人物に襲われたんです」




俺の読みは当たっていたようだ。ストーリーメーカーはルシファーを差し向けることで、俺とパーティメンバーの分断を狙っていた。



直接俺を狙わずに、周りから戦力を削っていく。ストーリーメーカーの慎重さが垣間見える。



「予想はしていたが……やっぱりそうだったか」



「はい。ストーリーメーカーは本当に強かったです。私では歯が立ちませんでした。何とか逃げ出したのですが、他の皆さんがどうなったかわかりません」



「ストーリーメーカーの戦い方を分かる範囲で教えてくれないか?」



俺はエレノアからストーリーメーカーの戦い方を聞いて情報を仕入れる。間違いなく最後に俺を狙ってくる。戦闘になるのは必至だ。情報は集めておきたい。



ストーリーメーカーはやはり黒い靄に覆われているようだ。闇魔法で姿を隠している。



剣をメインに使うようで俺と戦闘スタイルが似ているが、魔法などの遠距離攻撃も混ぜている。魔法によるバフなども使用していたらしい。一般的なRPGでいう魔法剣士タイプか。



LOLプレイヤーだとしたら珍しいタイプだ。このゲームは回避こそ命、発動時に移動が阻害される魔法を好むものは少ない。それを剣と平行して使うというのもあまり聞いたことがない。



それでも300レベルオーバーのステータスを誇るエレノア、そして『龍脈』で底上げしているギルバートやポチが勝てなかったことから異常さがわかる。



そして今の状況から、俺の頭に浮かんでいたもう一つの可能性も信憑性を帯び始めた。



俺たちはエレノアを少し休ませてから、また移動を始めた。



「ありがとうございました。本当にレンさんは強いですね。命の恩人です」



「ぎりぎりのタイミングだったな。またいつストーリーメーカーが襲ってくるかわからない。注意していこう」



「はい。でも……そう思うと少し怖いです」



俺の手に温かいものが触れた。エレノアが俺の手を軽く握っていた。俺は驚いてエレノアを見た。



「す、すみません。手なんて握ると戦いに支障出ますよね」



エレノアは顔を真っ赤にして、慌てて手を離す。



「い、いや、まあ、そうだな。いざというときは、その、困るか」



エレノアの反応が初々しく、俺もしどろもどろになってしまう。



「我は知っておるぞ。書物で学んだ。これを『らぶこめ』と呼ぶらしい」



「『らぶこめ』……さすがの博識です。興味深いですね」



外野が余計なことを言うせいで、エレノアはタコのように真っ赤になっていた。



「からかうなよ。命が危なかったんだ。怖かっただけだ」



俺はそう言って誤魔化すように、エレノアの頭をポンと軽く叩いた。エレノアは何度もこくこく頷いた。
















ーーーーーーリンーーーーーー



とんでもないところに来てしまった。



ドラちゃんの後を尾行していたら、広大な空間へと出た。天井が高く、巨大なドームのような空間だ。その中を埋め尽くすように大量の人影があった。優に一万人以上は超えていると思う。



全員武装しており、兵隊のように整然と並んでいる。最初はただの銅像かと思ったが、呼吸で肩が動いていた。種族もばらばらで統一感はない。



今はバレないように岩の隙間に隠れているが、見つかったらさすがにこの人数は相手にできない。見渡す限りの兵士だ。奈落にこんな部屋があるなんて想像もしていなかった。



そして、奥に祭壇のように高くなっている場所がある。そこには巨大なベッドが置かれ、その上に何かが横になっている。



膨れ上がった肉のせいで、四肢さえ判別できない。顔らしき場所には、カエルのような横に広い口と、眠そうな細い目があった。



兵士に運ばせた食べ物をむしゃむしゃと寝転びながら咀嚼している。



あれは悪魔だ。悪魔は普段人型の姿をしているが、本来の姿に戻ることができるとレンが言っていた。あれは初めからもとの悪魔の姿なのだろう。



ドラちゃんは兵士たちが開けた道をまっすぐに進んでいった。敵対されていないことから、あの悪魔が何かしらの精神支配をした可能性が高い。周りにいる兵士と同じ状況なのかもしれない。



私は潜入できるぎりぎりまでその祭壇に近づいていたが、これ以上は無理そうだ。



これはもう私では手に負えない。この大量の兵士の一人一人がドラちゃんのような戦力を持っていたら、勝ち目はない。数の暴力で殺される。



私のすべきことは決まった。レンと合流する。この状況をレンに一刻も早く伝えなければならない。



「ぐふふふ……」



急に不気味な笑い声が聞こえた。この広い部屋全体に響くような声だった。



「ねずみが紛れているな」



嫌な予感がして、私は咄嗟に隠れていた岩陰を飛び出した。同時に私がさっきまでいた場所の地面から無数のトゲがせり上がった。



気配は完全に消していたはずなのに気づかれた。近くにいた獣人の兵士が私を視認して向かってくる。



一瞬で間合いに入られる。予想していた何倍も早い。その高速の剣による攻撃を回避術で対処する。



「くっ……」



回避した瞬間、背後から来ていた金槌を持った別の兵士から攻撃を受ける。紙一重で躱すが、衝撃波で吹き飛ばされてしまう。



空中で回転しながら、ポケットから石を出して靴に当てる。



『雷光突き』



この部屋の入口に向かって、空中でスキルを発動する。『雷光突き』は攻撃スキルでもあるが、私が持っている一番速い移動スキルでもある。これで一気に逃げ切るしかない。



スキルは発動し、私は紫電を纏いながら一気に進む。入口近くにいた兵士を吹き飛ばそうとする。



しかし、その兵士は予想に反して吹き飛ばなかった。恐らくレンの『不動心』のようなノックバック無効スキルだ。



私は逆に反撃を受ける。スキル使用後で体勢を崩しているのでかなり無理をして回避する。その時、私は体に違和感を覚えた。



兵士の動きが急に速くなった。重力が急に何倍にもなったかのように身体が重たい。これは……。









()()()()()()()()()()()()()()















デバフの魔法をかけられたエフェクトはなかった。私にはわかる。これは『龍脈』の効果が切れている。持続の腕輪で効果時間は途中で切れないほど延長していたはずなのに。



本当にまずい。『龍脈』の上乗せがなければ、ここから逃げ出すのは絶望的だ。



動揺したせいで地面のくぼみに足を取られる。致命的なミスをした。回避ができない。



兵士が私にとどめを刺そうと攻撃を仕掛ける。



その兵士の首が消えた。



遅れて青い粒子に変わっていく。その向こう側にはいつの間にか大男が立っていた。



「ベルフェゴール。お前を殺しに来た」



その顔は私の知っている誰かに似ている気がした。






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