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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第6章 英雄の挑戦

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奈落の海賊



________リン________



私は息を潜めていた。



ドラちゃんの中には間違いなく、別の意識が入り込んでいる。口調が明らかに違うし、自分が持っているスキルなども恐らく把握していない。



強引にデストロイヤーを振るうだけだったため、簡単に逃げ延びることができた。倒すわけにもいかないが、ステータスが高いため束縛することも難しい。



レンと早く合流したい。レンなら私が知らない情報を持っている。打開策を教えてもらえるかもしれない。



だけど、この広い奈落をあてもなく歩いても偶然出会うのは難しいだろう。私自身も注意しなくてはならない。一応、レンから情報は聞いてるが、悪魔と遭遇すれば命がない。



足音が聞こえる。



私はドラちゃんをこっそりと尾行することにした。もしピンチになれば助けられるし、向かう先で解決するヒントが得られるかもしれない。



私は気配を消し、どこか目的を持って進んでいるように見えるドラちゃんを追った。






________フレイヤ_________



完全に迷った。



普通にレンたちの後をついて行っていたはずだった。いつの間にか意識が途切れ、気づいたら周りには誰もいなかった。一体何が起こったか分からない。



「はぁ……どっちだ?」



景色が全部同じで、自分がどこにいるかもわからない。



その時、私に名案が浮かんだ。まさにレンが考えるようなすごいアイデアだ。私も英雄を名乗れるかもしれない。



「大きな音で爆発させたら、みんな気づくな!」



私はとにかく大きな音の爆発を発生させながら歩いた。



「ん?」



後ろから音がする。きっとレンが見つけてくれたんだな。計算通りだ。私でもやればできる。



満面の笑みで振り返ると、そこには爆発音により集まった大量のモンスターがいた。



「……あれ? そうか! 爆発させたらモンスターにも居場所がバレるのか!」



予想外だった。やはりレンのようにはいかない。



私は爆裂魔法で向かってくる大量のモンスターに攻撃を仕掛けるが、予想以上に吹き飛ばない。



爆裂魔法に対して耐性があるモンスターが混じっているようだ。特に黒いキューブみたいなモンスターが全然吹き飛ばない。本来、爆裂魔法は吹き飛ばして距離を取ることができることが強みだが、その強みを発揮できない。



とりあえず、爆裂魔法の後方に放ちながら走って逃げる。黒いキューブは素早さも高いらしく、少しずつ距離が詰められる。



いつもはレンが指示をして、それに従っていれば上手くいくが、今はレンがいない。



私には爆裂魔法しかない。爆裂魔法に耐性を持つモンスターには打つ手がない。近接戦闘で私が勝てる訳がない。



私はいつもそばにレンがいるから強くなった気がしていた。それがただの勘違いだったと独りになって気がついた。



あれ? 視界が滲む。



これは怖いからじゃない。悔しいからだ。



レンは私をうまく使ってくれる。私はその環境に甘えていた。だから、1人では何もできない。それじゃあ、ダメだ。



一緒に旅をしていれば分かる。リンやユキのように、みんな強くなっていく。



私はレンという英雄の仲間。あらゆる不可能を覆す英雄に認められた。もっと成長しないといけない。



私はもうルミナリアで震えていた少女じゃない。



いくら決意を固めても現実は厳しかった。もう追いつかれる。死がすぐ側まで迫っている。



角を曲がった時、私の前には1人の男が視界に入った。



「お困りのようだな」



海賊帽から真っ黒な髪が伸びている。無精髭を生やし、日に焼けた肌。目はギラついていた。腰には曲刀が2本提げられている。



「手伝おうか?」



「いいのか! 誰かわからないが助かる!」



男が何者かはわからないが、今は藁にもすがりたい状況だった。



男は曲刀を2本抜いた。カトラスとかいう剣だった気がする。そのまま、弾丸のようにモンスターの大群に突っ込んでいき、回転しながら斬撃を放った。嵐のような剣撃が巻き起こり、敵を切り裂いていく。



物理攻撃が効きにくいはずの実体がないモンスターにも不思議と斬撃が入っていた。強い。さすがにレンたちよりはステータスが低いように見えるけど、この奈落のモンスターの上を行っている。



荒々しい戦い方だけど、実戦に即した動きをしていた。とても戦い慣れている。程なくして私を追ってきたモンスターはその男によって殲滅された。



「ふうー久しぶりにこんだけの数を相手にしたな。俺の腕もまだまだ落ちちゃいない」



海賊帽の男はカトラスを鞘に収めて、私のところまで歩いてきた。



「怪我はないか?」



「ありがとう! 助かったぞ。こんなところで人に会えるとは思えなかった」



「今の俺を人と呼んで良いのかは微妙だけどな。俺はブラックだ」



「私はフレイヤだ。ん? ブラック? どこかで聞いた気が」



私はレンから教えてもらった情報を思い出す。私はレンの話を聞いていないわけじゃない。しっかりといつも聞いている。聞いた上で理解できないだけだ。



「ああ! 確か海賊の人で、奈落から連れ出すってレンが言ってた」



「レン……あの時の変な男か。あいつがここに来ているのか?」



その後、私は持っている言葉で必死に伝えた。自分でも説明が下手くそだと思うが、ブラックは何とか読み取ってくれた。



「そうか。あいつの言う通りに名刺を門に挟んでおいたが、そんな意味があったのか」



「なんで開くかの理由はさっぱりわからなかったけどな!」



「俺もレンと合流したい。同行しよう」



「それは助かる! ありがとうな!」



私はほっとした。ブラックがいてくれれば、奈落のモンスターに遅れを取ることはないだろう。これでレンと合流できる。



ふとあることを思い出した。レンたちの後ろを歩いていて、私は何か光を見た気がする。気持ち悪い光だった。あの光を見てから、私は記憶をなくしていた。



あの光は何だったのだろうか。もし敵の攻撃なら、このことを早くレンに伝えたい。



役に立ってほめられたい気持ちがあった。子供じみているかもしれないけど、好きな人の役に立ちたいっていうのは普通のことだと思う。



地面に黒い小さい箱が転がっていた。



「なんだこれ?」



「さっき戦っていたエンドキューブというモンスターだ。こいつは強いダメージを受けると、このように小さく固まって防御状態になる。こうなったら倒すのは不可能だ。」



「え! また動き出したりするのか?」



「そのうちな。結構時間がかかるから今は気にしなくていい」



ブラックは奈落に住んでいるらしく、モンスターにもレン並みに詳しい。そういえば、レンもこの黒い箱のモンスターのことを言っていた気がする。



ブラックによると、もともと防御力と魔法防御が高く、空中を浮いていて魔法でも物理でも全く吹き飛ばないらしい。だから、さっき私の爆裂魔法が効きづらかったのか。



強いダメージを受けると、小さくなって防御状態になり、そうなるとほんの僅かしかダメージが通らなくなり、自動回復のスキルも発動するから実質倒すのが不可能らしい。



幸い、この形になったら攻撃もしてこないし、ダメージを与え続ける限り防御状態を解くこともないらしい。



「追いつかれてなくてよかったな。攻撃状態のエンドキューブは即死攻撃を連発してくるからな。普通の人間には命がいくつあっても足りない」



あと少しブラックと出会うのが遅かったらと思うとゾッとした。



私は地面に転がっている黒いエンドキューブを見つめた。



レンから教えてもらったことが頭の中で、繰り返し響いている。



私は話をしっかり聞いている。ただいつも理解できないだけだ。



だけど、理解できなくてもできることがある。レンはそれを私に教えてくれた。




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