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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第5章 英雄の意志
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常識の枠外




僕はカマセーヌを拘束して移動させた。一番近くにはクラウスを配置する。神の使徒はずっと文句を言っているが、ついて来てくれている。



怯えながら必死にレンではないと叫ぶ男。もしレン君なら大した演技力だ。どちらにせよ。ダルマの効果範囲に入れば全てが分かる。



もし演技だとしたらレン君はどうするつもりだろう。この状況から逃げ出す方法を持っているのかもしれない。最大限の警戒をすべきか。



まもなくダルマを隠している塔へと到着する。クラウスが立ち止まった。



「すまない、俺はここで待たせてもらう」



クラウスはダルマの範囲に入ることができない。もしかしてレン君はそのことも把握しているのか。



レン君の情報ソースは不明だ。どこからか普通なら知り得ない情報を手に入れている。クラウスのことを知っていても不思議ではない。



仕方がない。僕自身が連れて行こう。僕はカマセーヌを縛った縄を持って先に進む。



もう少しだ。それで全てが分かる。



周りには大量の騎士団と白がいる。神の使徒も待機している。この状況をレン君がどう切り抜けるのか、僕は少しワクワクしていた。



そして、効果範囲に入った。











「え……」












僕は思わず声を出してしまった。効果範囲に入ったのに、姿が全く変わらなかった。つまり、この男は正真正銘のカマセーヌだ。



僕はため息をついた。さすがはレン君だ。僕の罠を見抜いていた。カマセーヌを囮にし、今頃雪山を登頂しているのだろう。



肩透かしをくらったが、これで良い。こんな見え透いた罠にかかるようでは面白くないからね。



作戦を切り替える。雪山を登っているレン君を待ち伏せしよう。








________________



ネロが待ち伏せしているのは予想通りだった。



ネロとロンベルでは知能が違い過ぎる。ロンベルにあのネロを出し抜けるとはどうしても思えなかった。俺はネロがあえてロンベルを逃がすことで、俺を誘き出そうとしているのだと予想した。



だから、俺は選択した。ネロが用意した2択ではなく、新しい3つ目の選択肢を。



そもそも選択肢なんてものは無数にある。ネロはそれを条件付けして、さも2つしかないように見せかけているだけだ。英雄は自分でその選択肢を作り出す。



あのネロやクラウス、騎士団員に包囲されたとき、俺がすべきことは1つだった。ただ身動きをせず、全員がいなくなるのを待つことだ。



そして、ほとんどの騎士団員がネロとカマセーヌについていき、ここにはもう数名しかいない。俺は()()()()()()()を取り去り、残りの数名を一瞬で倒した。



俺が選んだ3つ目の選択肢。それはカマセーヌと一緒にエレベーターに乗ることだ。



カマセーヌを脅して、エレベーターを起動させ、俺はカマセーヌを『イミテート』した。そして、リンが闇市で購入していた透明マントを羽織ってエレベーターに乗った。



透明マントは少しでも動くと空間が歪むし、NPCは透明マントを羽織っていても普通に話しかけてくるので、ゲームでは何の価値もなかった。しかし、現実では違う。動かなければ完全に姿を消すことができる。



カマセーヌの姿でないとエレベーターが動かないから『イミテート』していた。カマセーヌ本人にエレベーターを起動させて、ずっと透明マントを羽織って隠れていた。



カマセーヌ自身、俺が隠れていることを知らない。こっそりと後ろに乗って透明マントを羽織っている。ただ上に行って、戻って来てくれたら解放すると伝えただけだ。



俺の思惑通り、ネロはカマセーヌを俺だと思い込んだ。その後、ネロが取る行動は真偽を判明させるためにダルマの範囲に連れていくことだ。



俺の予想通りにネロは動いてくれた。おかげで俺の周りには騎士団員がほとんどいなくなった。カマセーヌの周りに厳戒態勢を敷いたからだ。



これで俺は自由に動けるようになる。ネロはカマセーヌをダルマの範囲まで連れていけば、俺が雪山を登っていると思い込み、そっちに人員を割く。まさかもう内部に侵入しているとは思わない。そうなれば、教会の中をある程度自由に動くことができる。



そして、俺が3つ目の選択をしたのにはもう一つの理由がある。俺はバクバクを召喚する。



『スイッチ』



バクバクにスキルを使わせる。バクバクは一度俺を『捕食』している。その時に俺が得ていたスキルは使うことができる。



目の前にリンが現れた。



俺はバクバクを解除し、再び召喚する。『テイム』したモンスターは自由に解除と召喚ができる。召喚されたモンスターは必ずプレイヤーの近くに現れる。そして、また『スイッチ』を使わせる。今度はユキが現れた。



俺は単身で乗り込むのではなく、全員を連れてくるという選択をした。エレベーターの床は洗礼を受けた者以外が乗っていれば起動しない。だから、()()()()()()()()連れてくればよい。



このエレベーターは速度が遅い。動き出したエレベーターの床の下にトリモチ団子を使って、村にあった縄をくっつけた。ドラクロワがロンベル達を縛るために使っているのを見て思いついた。



ゲームでは、トリモチ団子はモンスター以外にくっつかないが現実では違う。トリモチ団子を接着剤代わりにしてロープを何本も垂らし、パーティ全員がそのロープに捕まった。



あとは床の上でバクバクに『スイッチ』を使わせて、床下の仲間と場所を交換させ、床下に行ったバクバクを解除して再び召喚し、床の上に戻すことを繰り返せば良い。



これで雪山を登頂することなく、ハル、ギルバート、ドラクロワ、ポチ、ラインハルト、フレイヤ、リン、ユキ、ラファエル、全員で教会に侵入できた。



ネロは確かに強敵だ。だが、ネロはこの世界の常識の中で天才なだけ。俺はその常識と枠を超えることができる。これが俺の選んだ第3の道だ。



「よし、こっちに移動しよう」



俺は頭の中にゼーラ神殿の地図を浮かばせながら、皆を誘導する。ゼーラ神殿はグランダル王城ぐらい広い。普段使われていない部屋はいくつもある。その中の1つの部屋に入った。ここを一時的な潜伏先に使う予定だ。



「無事に侵入は成功したな」



「先輩、さすがですね! 俺には思いつきもしなかったです」



「私達はもう慣れてるけどね」



「レンの旦那が奇想天外な行動をするのはいつものことだからな」



「よし、一応アルペン村でも話したけど、この後の行動を細かく伝えるぞ」



最終目的はゼーラ討伐。ゲーム時代には不可能だったことを可能に変える。それができなければ世界が滅ぶ。



さあ、無理ゲーを攻略し、この世界を救いに行こう。




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