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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第5章 英雄の意志
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統率された海賊



案外何とかなるもんだな、とか思ってる。



取り敢えず思いつきの作戦を実行してみたら、トントン拍子で進んで行った。



俺は今、ギルバートと一緒にダークスーツを着ている。そして、マリリンを縛った縄を握っている。



俺が思いついた、『マリリンを餌にしてラインハルトの居場所を探しちゃおう作戦』だ。ちょっと長い気がするが、俺のネーミングセンスをもってしてもこれが限界だった。



組織の人間はいっぱい見張りにいたので、こっそり倒して2人分の衣服を奪った。



見た目的に違和感がない、俺とギルバートが組織の人間に扮している。俺のオールバックとサングラスは中々箔が付いていると思う。



ポチには何か変と言われたし、フレイヤには仮装みたいだな、とか言われたが個人的には似合っていると思っている。



ギルバートはダークスーツが決まっている。渋い中年はちょっとずるい。



俺はマリリンを泳がして、わざと人質に取らせた。ジェラルドに知られたら殺されるだろうから、マリリンには口止めもお願いしている。案の定、ドンパチーノファミリーは餌に食いついた。



ドンパチーノは組織を総動員して、人質を見張っていると予想した。新しい人質を手に入れたときに、わざわざ戦力を分散させずに同じ場所に監禁するだろうという読みは正解だった。



マリリンを捕まらせて俺達は部下のフリしてついて行ったらラインハルトの居場所にたどり着いた。



俺はさっきからずっと辺りをキョロキョロしている。気になって仕方がないことがある。



「レオンさんとニキータさんはいないのか?」



俺が尋ねると周りの奴らがあからさまに不審な顔をした。



「あの人たちはボスの護衛って言ってただろ? ちゃんと伝令読んでるのか?」



「ああ、そうだったな、悪い悪い」



俺は笑って誤魔化す。同時に安堵した。あの2人がいなければ雑魚は何人いても同じだ。



ラインハルトはマリリンと俺を見て、気まずそうにしている。



ふと見ると、ジョーンズがいた。末端のジョーンズまで駆り出されたようだ。ジョーンズはガタガタと震えている。



「ラインちゃん! 大丈夫だった!?」



「ええと……母さん、大丈夫だよ、その……何しに来たの?」



「そんなの、ラインちゃんを助けるために決まってるでしょ!」



周囲から笑い声が起こる。人質として捕まったのに、助けに来たなどと言うからだ。



「おいおい、奥さん、か弱いレディでも俺たちは容赦しないよ? 自分の立場分かってる?」



組織の偉そうな奴がマリリンを煽って、なぜかジョーンズの震えが更に激しくなる。もはや恐怖で痙攣している。



「おい、せんちょーさん、早くこの生意気な女も縛り上げろ」



「で、できましぇん!!」



まさかの拒否に一同は唖然とする。しかも緊張しすぎて噛んでいる。



「はあ? お前、何を言ってんの?」



「お、おおおおれにはできましぇん!」



「お前さ、俺に逆らっていいわけ?」



男がジョーンズを思い切り蹴り飛ばす。ジョーンズは苦痛に呻くか、意識は完全に違うところに行っている。



「マリリンは大人のお話がしたいから、ラインちゃんを奥の部屋に移動させてほしいな」



「はいっ! ただいま!」



組織の男の指示を完全に拒否した癖にジョーンズは素早い動きで、ラインハルトを椅子ごと持ち上げて、奥の部屋に運んだ。



「おい! お前ついに頭でもおかしくなったか、なんで人質の女の言うことなんてきいてんだよ!」



男が戻ってきたジョーンズをまた殴ろうとする。しかし、その腕は細く小さな手に掴まれていた。



「あ?」



男の手を掴んだマリリンはにっこりと笑う。次の瞬間、マリリンが足払いを放つと同時に掴んだ手を引く。男の身体が180度回転し、頭から凄まじい音を立てて床に突っ込んだ。



「「「え……」」」



全員が唖然としている。マリリンは乱暴にピンク色の髪をかきあげた。表情に笑顔はなく、まるで別人に見える。俺は海賊帽子と曲刀を取り出す。偶然ポチが海底から見つけたものだ。それを彼女に手渡す。



彼女は海賊帽をぶかぶかに被り、腰に曲刀を下げた。目つきが鋭くなり、ピリピリとした肌を刺すような殺意が漂う。









「情けない顔すんじゃねえよ、てめえら! 海賊だろうがぁ!」












元海賊達が背筋を正し、一斉に整列する。ジョーンズもその列に加わっている。身体に染み込んいるとほどの統率された動きだ。



「何こんな奴らにぺこぺこしてんだ!? ふざけてんのか!」



マリリンがジョーンズを殴り飛ばす。大男のジョーンズが盛大に吹き飛ぶ。



「あたしはな、てめえを信頼してこの帽子を預けた、それがこのザマか?」



「す、すみませんでした!!」



ジョーンズが凄まじい速度でスライディング土下座する。完全な上下関係が叩き込まれている。



「こいつらはあたしの宝を奪おうとする敵だ! おいおい、教えてくれよ、あたしら海賊は敵をどうするんだぁ?」



「「「「「ぶっ殺す!」」」」



全員の口調が揃う野蛮なハーモニー。



「あたしら海賊は誰にも支配されない、気に食わねえ奴はどうするんだぁ?」



「「「「「ぶっ殺す!」」」」」



殺意のアンサンブル。ジョーンズ船長とは格が違う。



「海賊は自由なんだよ! やりたいことをやれ! 我慢なんてすんじゃねえ!」



「「「「イエッサー!!」」」」



「あたしらを支配しようなんて馬鹿は、力でねじ伏せろ! あたしが正義で他全ては悪だ!」



「「「「イエッサー!!」」」」



「総員、戦闘準備!!!」



「「「「イエッサー!!」」」」



呆気に取られていた組織の男達が我に帰るが、既に遅い。



海賊達は一斉に組織の男達に襲いかかる。あの優しいジョーンズでさえ、海の戦士として戦っている。その中でも群を抜いてマリリンが強い。鬼のような強さだ。一人で何人も蹴散らして無双している。



邪悪な笑顔を浮かべており、いつものほんわかマリリンとは別人だった。



マリリン、フリードリヒ婦人の正体は元伝説の女海賊マリアだ。



ゲームではそれが実装されるイベントがなかったため事実は誰も知らなかったが、所々に匂わせる演出があった。コレクターでお宝が大好きなのもその名残だ。惚れてしまったジェラルドと結婚をするために、船を降りたのだろう。



俺が大通りでマリリンを見つけた時に確認をした。始めは否定されたが、ゲームでしか知り得ない情報を次々と出して言ったら、「黙れ殺すぞ」という肯定の言葉をもらうことができた。仮説は正しかった。この作戦はマリリンに危険が及ぶ。彼女自身の強さを知っておきたかった。



外で待機している他の仲間達も突入してきた。大乱戦の始まりだ。



「おらああ! てめえら、コックをなめんじゃねえ!」



組織の男たち5人ぐらいがまとめて吹き飛ばされた。凶暴に目をギラつかせたボルドーが現れる。



「ボルドー副船長!」



ジョーンズが思わず名前を呼ぶ。マリリンお抱えのシェフは元副船長だった。力わざで組織の男達を次々と吹き飛ばしている。



「強くなければコックは務まらねえんだよ!」



いや、そこは務まると思う。



「失礼します」



乱戦の間をするすると最低限の動きで抜けながらアンリが現れる。必要な時は手刀で一撃で倒している。洗練された動きだ。



アンリはまっすぐに奥の部屋に向かっていく。ラインハルトを救出する役目だ。あとは暴君と化したマリリンをラインハルトに見せないようにするためか。



外に待機していた俺達の仲間も戦闘に加わる。敵味方混じっての大乱闘だが、レオンとニキータがいないのだから俺達に敵はいない。



「あたしらが最強だああぁ! 殺し尽くせ!」



「「「「イエッサー!」」」」




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