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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第5章 英雄の意志
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純粋な強さ



「それでは2回戦だああ! 先ほどはどんな卑怯な手を使ったのか、あのギガンテス兄弟が敗れてしまいました、その敵討ちをしてくれるのは、大人気の我らがアイドルこの二人!!」



再び大歓声が上がる。会場にライトグリーンと紫のビキニ姿のアメリカン美女2人が現れる。



「輝く美しさ、神様も嫉妬する完璧なプロポーション、ジュリア!!」



ライトグリーンのビキニ女性、ジュリアが観客に手を振る。金髪が美しく舞う。



「大人の魅力が溢れ出す! 全人類を虜にする美貌、圧倒的インフルエンサー、キャメロン!!」



紫のビキニのキャメロンがセクシーなポーズと取る。まさにアメリカンドリーム。俺が目を見開き、前のめりで敵情視察をしていたら、リンに足を踏まれた。



ジュリアとキャメロンは純粋にバレーのルールの上で強い。ギガンテス兄弟やジョニーが相手の場合と違い、こちらが殺される心配はない。本来のルール通り3点先取されて決着がつく。



それなら難易度が低いと思われるかもしれないが、それは間違いだ。バレーのルールの上で彼女たちはチート級の技を使う。



「はい、それではチャレンジチームメンバーの紹介です、がさつで大きいだけ、フレイヤ選手」



観客からフレイヤにブーイングが飛ぶが、フレイヤがキャメロンの真似をしてセクシーポーズと取ったら、急にブーイングがどよめきに変わった。



「白いロリっ子、ユキ選手」



他の3人と並んだことで、観客からなぜかため息が聞こえた。ユキは若干涙目になって呟いた。



「……絶対勝つ」



ジュリアとキャメロンが2人に近づいてくる。



「良い試合をしましょうね」

「張り合いないと困っちゃうからがんばってね」



挨拶のように見えて、明らかに視線と表情が見下している。ユキとフレイヤは気にせずに笑顔で応対する。ユキの笑顔は若干引きつっている。



「それでは2回戦! 試合開始だあああ!」



解説者のハイテンションな声で試合が開始される。サーブ権はこちらになった。



サーブを打つのはフレイヤだ。フレイヤがボールを持ってラインに立つ。そして、アンダーハンドでボールを大きく打ち上げた。



敵のコートには飛んでいくがかなり高い。どう考えてもアウトになることは明確だった。



フレイヤがボールに右手をかざす。そして、パチンと指を鳴らした。



その瞬間、轟音と共にボールのすぐ真上で爆発が起こり、爆風によりボールが垂直に真下へと吹き飛ばされる。



これが俺が考えた爆裂サーブだ。そもそも素人のフレイヤはまともにサーブを相手コートに入れることなんてできない。だからとにかく高くボールを上げて、相手コートの上空にあるときに爆裂魔法で真下に吹き飛ばす作戦にした。



ちなみにこのビーチバレーのルールでは爆風によって、相手がダメージを直接受ければ失格負けとなる。だから、上空で爆破させる必要があった。



「ふふふ、甘いわね」



ジュリアが微笑む。この程度で点が取れるほど彼女たちは甘くない。



ジュリアの足元に魔法陣が浮かび上がる。ボールは地面に近づくと急に勢いが落ちて、空中で止まり、ふわっと浮き上がった。



風魔法だ。どれだけの威力でどこにボールを打ち込んでも、ジュリアは風魔法により、地面にボールをぶつけずに浮き上がらせることができる。



これがどれだけ恐ろしいか分かるだろうか。相手のコート内にどの部分にどんな威力で打ち込んでも必ず風で巻き上げられる。これはポチのスパイクであろうと無効化できる。



ギガンテス兄弟なら直接ボールに触れてくれるのでポチの威力で吹き飛ばせるが、ジュリアは直接触れることがないので、ボールでダメージを与えることもできない。得点の取りようがない頭のおかしいレシーブだ。



一応魔法が作用されても、タッチをした認定になる。そのため、次はキャメロンが行動することになる。



キャメロンの足元に紫色の魔法陣が広がる。



手を前に突き出した瞬間。真っ黒な霧がこちらのコートを覆った。



キャメロンは闇魔法の使い手だ。闇の霧によって完全に視界と音を遮断してくる。霧の中にいるフレイヤとユキは何も見えず何も聞こえない状況で対応しなくてはならない。



これはダメージはないので、ルール上認められている。これでこちらのレシーブは極めて困難になる。視覚と聴覚が封じられてどうやってボールを認識するのかわからない。俺はゲームで何度もチャレンジしたが、レシーブは不可能だった。



キャメロンが妖艶な笑みを浮かべながら普通にトスを上げる。



ジュリアが飛び上がり、スパイクの体勢になる。追い打ちをかけるようなジュリアのスパイク。風魔法により、通常ではありえない変化をする。そんな変化球スパイクを視覚と聴覚なしで対応するなどできるはずがない。



ジュリアがスパイクを放ち、ボールは呆気なく地面にぶつかった。同時に2人を覆っていた闇の霧が晴れる。



「ジュリア選手のスパイクで先制点!! キャメロン選手の魔法も光りました! この2人のコンビはまさに最強です!」



会場が一気に沸き立つ。ジュリアとキャメロンのコンビは純粋に強い。こちらが死ぬことはないので、その面では安全だが、勝利しようとすると力で押し切れるギガンテス兄弟よりも遥かに無理ゲーとなる。



どこを狙っても100%レシーブされ、向こうの攻撃の際は視覚と聴覚が封じられる。普通に考えればそんな相手に勝てるわけがない。いつもながらLOLスタッフを限度という言葉を知らない。



「これは決まったな、もうジュリキャメは止められない」



隣の親父が通ぶって略語を使い始めた。



ジュリアとキャメロンもすでに勝利を確信している。



「あらあら、どうしたのかしら? 実力差がありすぎて可哀想になってくるわ」



「あはは、気にしないでいいのよ、相手が悪かっただけ」



ジュリアとキャメロンが2人を煽っている。



「強く美しいこの2人を前にチャレンジャーは何もできません、ジュリア選手とキャメロン選手が勝利したときには、いつも通り撮影会とグッズ販売がありますので、皆さんお楽しみに! しかも今回はキャメロン選手の手書きサイン入りグッズを抽選で3名様にプレゼントです!」



会場は異常な盛り上がりを見せている。隣の親父が、「俺は今までのジュリキャメグッズはすべてコンプリートしてる」と誇らしげに要らない情報を教えてくれる。



「この世界はね、勝者こそがすべてなの、負けるあなた達は女として私達より下ってこと、ふふふ」



ジュリアがいたずらっぽく笑う。しかし、ユキとフレイヤは涼しい顔をしていた。今のは様子見、既定路線だった。



「勝者こそがすべてか、いい言葉だな!」



「ええ、勝てばいいだけね」



キャメロンがその反応に不快そうな顔をする。



「私達の今の攻撃見てたの? あなた達が勝つなんて不可能よ」



「多分、私たちだけじゃ勝てないと思う、でも私たちには不可能を覆せる英雄がついている」



ユキが俺をちらっと見る。



「私はその人を信じる、彼の言うとおりにすれば絶対勝てる」



「ああ、私も信じてるぜ!」



「ふん、口だけは達者ね、いいわ、手加減せずに潰してあげる」



試合が再開され、次はジュリアのサーブとなる。ジュリアはサーブでも風魔法により異常な速度と変化をする。もはや念力が作用しているのではないかと疑うレベルの変化球だ。



「さあ、ジュリア選手のサーブです! もはやジュリア選手のボールを止められる人はいません!」



「行くわよ」



ジュリアの足元に魔法陣が生まれる。そして、サーブを放つ。



どう考えても腕のフリと勢いが合っていない。加速が激しく、ネットを超えた瞬間90度に近いカーブで方向転換する。



こんなもの正攻法で止められるわけがない。



だから、俺達は()()()()()()使()()()()




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