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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第5章 英雄の意志
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釣りイベント



シーナポートの騎士団はマフィアとぐずぐずの癒着関係にある。汚職警官ならぬ汚職騎士団だ。



このサギールという爽やかな青年も例を漏れない。このマモル君袋、実は中の空間がサギールの持っているもう1つの袋につながっている。



マモル君袋に貴重なアイテムを入れておくと、サギールに取り出されてしまい帰ってこない。



詐欺は一度引っかかると、さらに詐欺師が寄ってくると言われる。それをしっかりとゲームで表現している。



スリリングストリートで不快な思いをし、そこに現れた親切な騎士団も詐欺師という、作成スタッフのモラルを疑うシナリオだ。子供がプレイしたら絶対人間不信になる。まあ、子供はここまで辿り着けないと思うが。



もちろん、こんな袋に貴重なアイテムなんて入れる気はない。俺は笑顔でサギールに別れを告げた。



俺達はそのままホテルへの道を進む。ホテルもリゾート地だけあっていくつもある。しかし、そのほとんどはマフィアの息がかかっており、安定のぼったくり仕様だ。



ジェラルドはその辺りをしっかり分かっているのか、泊まると言っていたホテルは俺たちが今から向かう場所と同じだった。



「わん! しょっぱい匂いする」



「きれい……」



ポチとユキが反応する。潮の匂いがしてくる。美しい海岸線が目の前に現れた。この海沿いの道を進めば、ホテルに到着する。



しばらく歩くと船着場があった。そこの人々の表情は暗い。全ての船が停泊している。



これはRPGではよくあるシナリオだ。沖に出現したクラーケンのせいで船が出せない。誰か倒してくれないか。みたいな流れでプレイヤーが討伐することになる。



アトランティスに行くためには船は必須となる。飛空艇では海底にあるアトランティスには行けない。



だから、クラーケンの討伐は避けては通れない。そのために必要なのは戦うための船の準備だ。



船を手に入れる手段は主に3つ。釣り人テッペイをイベントで仲間にして、釣り船に乗せてもらう方法。海賊キャプテンジョーンズのイベントをこなし、海賊船に乗せてもらう方法。最後はグランダル王国が派遣した討伐隊の船に乗せてもらう方法だ。



1番選んではいけないのは王国討伐隊となる。物語のイベント的に普通に進んだら討伐隊に参加する流れになるが、これが罠だ。



討伐隊の船は乗組員が多く、移動に支障が出る。それにスピードが遅いため、クラーケンの足にすぐ貫かれる。



クラーケンは冒頭、海から足だけを出して攻撃してくる。船にある程度のスピードがなければ避けきれない。



海賊キャプテンジョーンズのイベントは難度が高い。こちらが死ぬ可能性もある。ここは釣り人テッペイルートで行くべきだ。



「よし、先に釣りイベントだけクリアしておくか」



「わん! つりって何?」



「魚を捕まえることだ」



「魚、おいしい!」



俺は船着場に向かう。人気が少なく閑散としている。この辺りは観光客も来ないからか活気がない。



そこの波止場に1人の青年が釣竿を垂らしている。



「あの……」



「お、どうった? 俺はテッペイっつうんだ、おんまえ、つりに興味あんのか?」



訛りが激しい。LOLスタッフは釣り人だから田舎者っていう偏見に満ちている。



「ええ、まあ、そうです!」



「よっし、おんなじ釣り好きじゃ、これやろう」



俺は古びた釣竿を手に入れる。



「釣エサを先端につけるんよ、投げ入れって、ぶるったら引っ張る、けんどもあんまりにつよ引っ張ると、魚に逃げられよる」



ここで釣りのチュートリアルが始まる。他のゲームにもよくあるが、LOLにも釣りシステムがある。



釣った魚は料理をして回復アイテムとして使える。特殊効果が付くものもある。



釣竿によって、ヒット率やステータスが違う。魚がヒットすると謎のバーが現れて、それが、振り切れないように調整しながらリールを巻かなくてはならない。良い釣竿だとそのバーが優遇されている。



エサやルアーなどもあり、どの魚が釣りやすいなどの設定もある。また海のポイントによって生息する魚は異なっている。とても奥が深いシステムだ。



レアな魚は特殊効果も高く重宝する。その魚がいなければ倒せないボスもいたりする。



「釣りの道具はそこの建物で売ってるけん、好きにこうたらええ」



一通りチュートリアルが終わり、自分で釣れるようになる。



「あの……沖に船を出してほしいんですが」



俺はイベントを進めるために話しかける。



「おんまえ、知らんのか? えらいでけぇイカが現れよって、船だせんのよ」



「そのイカを俺達が倒します」



「おんまえ、強いんか? なら俺を認めさせてみー、でっかい魚釣ったら認めたる」



こうして釣りイベントが発生する。これはテッペイが認めるレベルのサイズの魚を釣る必要がある。大きければ、大きいほど良い。



「よし! ということで皆で釣り大会と行こう!」



俺はパーティのメンバーに声をかける。魚釣りイベントは運要素が激しい。俺はこのイベントをゲームでクリアするために、一週間魚釣りしかしなかった時期がある。



一応おすすめの釣竿とエサの組み合わせは英雄達によって調べられている。しかし、それを揃えてもサイズは運に左右される。



だから、これだけの人数で人海戦術を使えば、クリアにかかる時間も短縮できるだろう。



「お! 楽しそうだな! みんなで勝負しようぜ」



競争好きのドラクロワが乗ってくる。



「燃えてきたな! ユキ! 私と勝負だ!」



「ええ、いいわよ」



フレイヤが意気揚々と提案し、ユキが快諾する。この2人も最近打ち解けてきた。



「中々楽しそうな余興じゃないか」



ギルバートも楽しそうに笑う。今まで命懸けの戦いが多かった。たまにはのんびり楽しく羽を伸ばすのもありだろう。



「じゃあ、釣り大会開催だ!」



俺はショップで全員分の釣竿やエサを買う。これは勝負なので、それぞれ自分の竿とエサを選んでもらった。俺自身も最も釣れる組み合わせと言われているエサと釣竿を買い揃える。



各地に散らばって釣りを開始する。一応、事件に巻き込まれないように安全エリアだけ教えておいた。



俺もよく釣れるポイントと言われる波止場の端を陣取る。みんなには申し訳ないが、俺にはゲーム知識がある。この勝負は俺の勝ちだろう。



釣りを開始する。本物の釣りは待つ時間が長い。それも一興なのだろう。しかし、ゲームでそんなに待ち時間があれば、プレイヤーに飽きられてしまう。だから、ヒットする時間は短い。もちろん魚がいないポイントもある。そこではいつまで待ってもヒットはしない。



「来た!」



早速ヒットした。俺は糸が切れないように注意しながら、リールを巻く。記念すべき一匹目、手応えはかなり重い。



「きたきたきたぁ!」



俺は最後一気に釣竿をひっぱり、釣れた魚が姿を現した。



このシーナポートで1番釣れる種類だ。初心者向けであり、最初は皆これを釣り上げる。






















そう、ゴム長靴だ。



「……」














このシーナポートで初めに釣りをした者はこのゴム長靴に苦しめられる。というか一体何個釣れるんだってくらい釣れる。



誰かがゴム長靴を海に大量廃棄してるとしか思えないレベルだ。さらになぜゴム長靴がヒットし、他の魚と同じように逃げようととするのかわからない。ちなみに2番目によく釣れるのは空き缶だ。これも大量廃棄されている。



環境破壊とは何かを考えさせられる。綺麗な海を守りたい。俺は気を取り直して、もう一度釣竿を振った。




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