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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第5章 英雄の意志
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放置ゲーム



マリリンに連れられて、2階の奥の部屋に向かう。マリリンの交換イベントはRPGでよくあるお金とは違うものを使って、アイテムを手に入れるイベントだ。



こちらが差し出したアイテムによって選択肢が増える。俺が差し出した龍の鱗はSクラスだから、全てのアイテムと交換可能だ。



ジェラルド家の宝物庫についた。厳重な鍵をマリリンが手際よく外していく。



「じゃ! じゃーん! これが我が家のたからものだよ!」



重い扉の先には様々なアイテムがある。グランダル城の宝物庫よりも豪華な気がする。これは全てマリリンが集めているらしい。



ジェラルドの金を湯水のように使ってコレクションを集める。一見、浪費癖のように見えるが、ジェラルドが何も思ってないのなら良いのだろう。家庭の在り方は様々だ。



「特別にどれでも好きなの1こあげるよ!、あ、でもそこにかかってる剣とそこに飾られているネックレスと、あの上にある腕輪は駄目、それとあのへんの」



俺はマリリンからNGリストを教えてもらう。どれでも好きなのと言われたが、やたらNGリストが多い。



俺は目当てのものを探す。他にも欲しいアイテムがいくつもある。また貴重な宝石が手に入ったら交換しに来よう。ちなみにオリハルコンは希少価値のわりにクラスが低い。マリリン曰く綺麗じゃないかららしい。



見つけた。映画などでよく見かける茶色に変色した古びた地図だ。これからシーナポートへ行く。この宝の地図を使用することによってあるアイテムが手に入る。



「ええー、そんなのでいいの?」



「はい、シーナポートに行く予定があるんで、宝探しとかしてみようと思いまして」



「その地図はね! いろんな冒険者の人が探し回っても見つからなかったんだよ! 嘘かもしれないよー」



「それなら俺が初めて見つけ出しますよ! 得意なんです」



まあ、正確にはゲーム知識があるだけだが。ちなみにこの地図を持たずに手に入れようとしてもフラグが立たないため、その宝は入手不可能になっている。



マリリンの目が変わった。何か俺をじろじろと観察している。



「決めた!」



いきなりそう言って飛び出していく。



宝物庫に他人の俺を残して、鍵もかけないで出ていくなんて不用心にもほどがある。俺は他のアイテムを眺める。全く、俺がもし悪人だったらどうするつもりなのか。



ゲーム脳に支配されている俺の悪魔が囁きかける。ぬす……無断で借りちゃえよと。もう1人の天使も囁く、ジェラルドさんに殺されるよと。



くっ、どうすれば良いんだ。俺は頭を抱えて葛藤に悶える。



「もう閉めてよろしいでしょうか?」



俺はびっくりして飛びあがる。真後ろに音もなくアンリが立っていた。俺が頭を抱えて唸っている姿をばっちり見られている。



「マリリン様は基本鍵をかけ忘れるので、私が鍵閉めをサポートしております」



「あ、はい、そうですか、じゃあ出ますね」



俺は大人しく宝物庫を後にした。



最初の部屋に戻ると、マリリンとジェラルドがいちゃついていた。



「いきたいー、いきたい! いきたい! いいでしょ!」



「わがままはいけないよ、今は国が大変な時期だ、それが落ち着いてからだよ」



「やだぁ! 今すぐ行きたいの! あなたは、マリリンとグランダル王国のどっちが大切なの!」



うわー、私と仕事どっちが大切なのと問い詰める厄介系彼女の構図だ。ジェラルドが不憫に思えてくる。



あの厳格なジェラルドが今の状況で国の復興から抜けるとは思えない。どのようにマリリンを説得するのか見ものだな。














「マリリンの方が大切に決まっているじゃないか! よし、国のことは全て放置して旅行に行こう!」



「やったぁ! あなた大好き!」



「……」

















それで良いのかジェラルドさん……ジェラルドは国よりもマリリンを選んだ。マリリンの前ではジェラルドは駄目なキャラに成り下がってしまうらしい。



「ということでレンちゃん! マリリンもシーナポートに一緒に行くからね!」



「へっ?」



「バカンスと宝探し! マリリンもしたいもん!」



「レン君、悪いね、マリリンがそう言っているんだ、同行させてもらえないか?……まさか、マリリンの頼みなのに断るなんて……ないよな? そんなことは絶対ありえないと思うが、念のため聞いておくよ、どうだい? 同行しても良いかい?」



俺は全力でブンブンと首を縦にふる。ジェラルドさんの圧が半端ない。



「ありがとう、やはり救国の英雄は器が違うな、そうと分かれば旅支度だ」



「用意してくる!」



「レン君、我々も準備をする、君もグランダルでやることがあるだろう、出発する前に声をかけてほしい」



「あ、はい、分かりました」



なぜかジェラルドとマリリンがシーナポートに同行することになってしまった。これはゲームにはなかった動きだ。



俺は残りの料理を美味しくいただいてから、ジェラルドの屋敷を出た。



宝探しイベントはマリリンのコレクター魂に火をつけたらしい。そう考えるとゲーム時代に言われていたあの仮説は正しいのかもしれない。



その後はとりあえず用もないのに、リリーさんと会話をしに行く。今日もリリーさんは美しい。特に欲しい物はないのだが、無駄にポーションを買って会話した。



そう言えば、あのうるさいイケメンを見かけない。いつもならそこら辺で美女を引き連れて歩いているんだが。まあ別にいいか。



俺はそのままグランダル城下町を出る。のんびりと外を散歩するように歩く。この辺りの敵はもう俺には脅威ではない。



向かう先は青壁の洞窟。リンと初めて出会った場所だ。俺は洞窟に入り、あの時と同じように格安石ころ結界の準備をする。



あの頃からいろいろなことがあったな。



エルフの里を救って、ウォルフガングを倒して、魔王城に乗り込んで、エルザイベントをクリアし、あのドラゴンスレイヤーを倒した。今思うと、とてつもない無理難題を解決してきたように思える。



そして、この後もソラリス復活という不可能が待ち受けている。そのためには戦力の増強が必要不可欠。



仲間の能力強化は必須だ。それに、どこかでネロがまた俺たちに立ち塞がるだろう。その時に向けて準備をしておかないとならない。



ブルースライムを一匹誘い出し、結界の中に閉じ込める。準備は完了した。



これからレベリングを始める。当然、俺のレベリングではない。もう300レベルを超えているので、ブルースライムでは全く経験値を得ることができない。



それは経験値の減少補正の影響だ。自分よりレベルの低いモンスターでは補正がかかり、ある程度のレベル差ができれば経験値が0となる。



だが、無限に経験値を得られる存在がいる。



俺は空中にバクバクを出現させる。バクバクは無限に成長していくモンスターだ。普通に敵を倒してしまえば、俺たちと同様に経験値を得られないが、『捕食』を使用すれば補正されていない経験値を得ることができる。



残念ながら『分裂』のスキルは覚えられないだろう。正確には覚えられても使用できない。スキルには使用条件があるからだ。



ネロが徒手系のスキルばかり使っていたのもそれが理由だ。例えば俺の『剣神の太刀』は片手剣か両手剣を装備していないと使えない。他の装備では使用できない。



ネロは杖か短剣しか装備できないキャラだから、もしネロが『剣神の太刀』を覚えても使用出来ない。



そのモンスター固有のユニークスキルはバクバクが使えない可能性が高い。もし使えたら高レベルバクバク軍団という恐ろしい戦力を手に入れられるのだが。



「よし、バクバク、この結界の外からブルースライムを攻撃してHPを半分ぐらい削って、捕食できたらひたすら捕食してくれ」



俺はバクバクに指示をする。バクバクはスキルを使って早速、ブルースライムを攻撃する。ちゃんと手加減して弱いスキルを使用している。



攻撃を受けたブルースライムはすぐに分裂する。HPが半分以下にならないと『捕食』は使用できない。そして、そのために攻撃すれば分裂する。



これでバクバクの食糧がなくなることはない。むしろ無限に増え続けるだろう。そして、バクバクは『捕食』により経験値を手に入れ続けることができる。ブルースライムは弱いので時間効率はかなり良いはずだ。



「じゃあ、後で迎えに来るから、それまで続けてくれ」



俺はバクバクを置いて、青壁の洞窟を出た。よくある放置育成ゲームだ。これで自動的にバクバクのレベルは上がっていく。あとはシーナポートに行く時に迎えに行こう。






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