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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第4章 英雄の決意
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ディアボロ戦



ディアボロが自由を得た。予め自害を命ずることで、腕輪が破壊される細工だったのだろう。



自由を得たディアボロは辺りに一気に瘴気を撒き散らす。



「これで我は……自由だ、もう一度、この世界を我が手に」



ディアボロの目が不気味に光る。レーザーのような紫色の光がマットに降り注ぐ。マットはそれを辛うじて回避した。



あれが『精神支配』のスキル。至近距離では避けられないが、意外に光が届く効果範囲は広くないらしい。レンの旦那に教えられた距離を保てば問題ない。



ユキとフレイヤが一斉に魔法での爆撃を始める。容赦ない攻撃だ。俺も銃による援護を行う。しかし、ドラクロワがいないため、火力が足りない。



マットはディアボロを無視して離れていく。



「おい、あんた! 手伝ってくれないのか?」



俺はマットに声をかける。マットは手をヒラヒラと振った。



「俺の要件は済んだ、あとはよろしくやってくれ」



駄目か。この男が攻撃に参加してくれるなら戦力が大幅に上がるのだが。



「おい……まだ帰さねぇぞ、こらぁ」



入り口からドラクロワが現れる。目が覚めたようだ。かなりダメージが残っているようで動きは緩慢だ。



「お前には寝ていてほしかったな」



その時、ディアボロが大きく息を吸い込んだ。俺はそのモーションを既に旦那から聞いている。



「まずい! ブレスが来るぞ!」



ディアボロの口から禍々しい瘴気が溢れ出す。



それはこの部屋の入り口、ドラクロワに向けて放たれた。唯一の入り口を瘴気で満たして誰も逃さないようにしたかったのだろう。



ドラクロワにブレスを避ける余力はない。ドラクロワはただでさえダメージを受けている。この一撃で死ぬ可能性は十分にある。



「くそがぁあ!」



ドラクロワは声を上げるが身体がついていかない。あっさりと瘴気の塊に飲み込まれた。



「ドラクロワ!」



瘴気は晴れずに辺りを漂い。辛うじて視界が確保されたとき、俺は予想していない光景を見た。



マットが両手を広げ、ドラクロワの前に立っていた。あの勢いの瘴気を全て1人で受け切っていた。



なぜかドラクロワを庇った。いくらあの男でもかなりのダメージを受けたはずだ。そもそも生きている時点でとてつもない耐久力だ。防御力に魔法防御力、恐らく最大HPもとんでもなく高い。



「おい、てめぇ、何のつもりだ」



「……ふん」



マットはドラクロワの横を通り過ぎようとする。ドラクロワが肩を掴むが、力が入らずに制止できていない。



マットが今度こそ去っていったと思ったが、彼はすぐに戻ってきた。手にドラクロワが落としたデストロイヤーを持っていた。



「やはり手に馴染むな」



あの重量のある大斧を軽々と振る。まるで重さを感じさせない。かなりの筋力だ。その姿はドラクロワがデストロイヤーを扱うよりも遥かに滑らかだった。



「予定変更だ」



ディアボロに向かってゆっくり歩いていく。ディアボロが闇魔法をマットに浴びせるが、全く怯まずに同じペースで歩き続ける。



「叩き潰そうか」



マットが一気に加速し、デストロイヤーで強烈な一撃を入れる。瘴気の影響で素早さが半減しているとは思えない。



ディアボロの巨体が一気にのけぞる。デストロイヤーの攻撃力を上乗せした一撃は凄まじい破壊力だ。



そこから始まった攻撃は信じられないほどのものだった。鬼神のような強さ。巨大なデストロイヤーを巧みに操り、強烈な一撃を絶え間なく入れ続ける。



力任せの攻撃ではない。戦い方が洗練されている。攻撃と攻撃の間に隙が全くない。遠心力を利用し高速でありながらも一撃があまりに重い。



こんな強い奴がいたのか。俺達が束になっても勝てない。それだけの実力差がある。



ドラクロワもその実力差を理解できたのか、目を離すことができず悔しそうに拳を握りしめている。



フレイヤとユキの怒涛の魔法攻撃の嵐も止まない。MPが切れればすぐにエクストラマナポーションで回復している。



爆裂魔法と氷雪魔法の嵐の中でもマットの動きは一切鈍らない。魔法防御力があまりに高く、その魔法の嵐の中でものけぞりすらしない。



ディアボロだけが一方的に攻撃を受け続けて怯んでいる。辛うじて手を振り回して反撃しているが、まともに当たるものでもない。



もちろん、俺もクールタイムが回復するたびに『64コンボ』を打ち続けている。



このペースなら行けると思うが、唯一の懸念がある。この状況を一気に逆転させるスキルをディアボロは持っている。



「ドラ! 旦那に言われたことを思い出せ!」



俺が声を上げると放心していたドラクロワは我に帰った。レンの旦那から託された仕事を思い出したのだろう。



ディアボロが瘴気を撒き散らす。あまりに広範囲のため、マットは瘴気の影響をもろに受けるが、それでも止まらない。ここまで防御に特化した者の強さは異常だった。



ディアボロはがむしゃらにもがきながら、一瞬の隙をついて顔を一気にマットに近づけた。目が怪しく光る。



ついに来た。ディアボロがこの形勢を逆転する唯一の方法。それはマットを『精神支配』で操ることだ。



マットが操られて敵になれば俺達の負けは確定する。先ほどマットはギリギリで回避したが危なかった。恐らく回避し続けられるものではない。レンの旦那の回避を近くで見続けている俺にはそれが分かった。



マットは一気に地面を蹴り移動する。同時に移動先にディアボロの手が振り下ろされる。マットが攻撃を受ける。



鉄壁の防御力によりダメージ自体は大したことがないが、動きが阻害される。



「我の配下になれ」



ディアボロの目の光が強くなる。それがマットに降り注いだ。とても回避できるものではない。
























「借りは返したぜ」
















このタイミングを狙っていた。ドラクロワがマットとディアボロの間に入り、その紫色の光を浴びている。



レンの旦那から授かったミラーシールドを構えて。



紫の光はミラーシールドで反射し、逆にディアボロに降り注ぐ。これが旦那の考えた作戦だ。



ミラーシールドは旦那がプロメテウスの対策として、魔王城で手に入れたものらしい。旦那は普段盾を使用しないが、光属性の魔法を反射させる効果があると言っていた。



『精神支配』は光属性じゃないらしいが、エフェクトやあたり判定とかいうものが光属性の魔法のものを流用されているから可能らしい。俺には旦那が何を言っているのか全く理解できなかった。



これでディアボロは自分の『精神支配』を自分にかけたことになる。既に旦那からどうなるかは聞いている。【精神支配】の効果時間が切れるまでディアボロは何の行動もしなくなる。

案の定、ディアボロは腕をだらっと下げ、動かなくなった。



本来、このミラーシールドがあってもディアボロ戦はきつい戦いになると旦那は言っていた。ディアボロのHPとこちらの攻撃力を考えた時に少なくとも3回は『精神支配』を跳ね返さないといけないらしい。



1度受ければ終わりの『精神支配』を3回連続で成功させないといけないし、ディアボロが警戒して『精神支配』を使ってこなくなる可能性もあった。



だが、今は違う。たった一回の『精神支配』のカウンターだけで、ディアボロのHPを削り取れるアタッカーがいる。



『剛力』『無双』『防御破壊』『連続スキル』



ディアボロが動かなくなったとわかった瞬間、マットが自分にスキルをかけ始める。



『大地割り』



隙だらけのため攻撃。今までを遥かに超えた超絶ダメージが与えられる。



クールタイムを無視して、再度同じ構えを取る。



『大地割り』



再び轟音が響く。恐らく先程使ったスキルの中にクールタイムを0にする効果があったのだろう。マットは止まらない。



『大地割り』『大地割り』『大地割り』



一方的にダメージを与え続け、ついにディアボロは青い粒子に変わった。




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