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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第1章 英雄の目覚め
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世界樹の頂上



俺は無事にエルザを撃退し、胸を撫で下ろした。命がかかっていてもゲーム同様に動くことができた。それは1つの自信につながった。



そして、更に上を目指して木を登り始める。ここからは極楽鳥と木の精霊ドリアード、ウッドゴーレムが出現する。



ドリアードは物理攻撃無効で魔法によるダメージしか与えられない。もちろん、俺の十八番の『金ダライ』も物理属性なので、攻撃が通らない。



ウッドゴーレムは硬い木の身体を持った身長3mほどの人型モンスターだ。防御力が高く、火属性が弱点となる。そして、やっぱり今の俺が一撃もらえば軽く死ぬ。HPも高いため、今の俺では討伐は不可能だ。



素早さは高くないので、普通に全て逃げれば問題はないだろう。



俺は木を登りながら急に足を止めた。ドリアードを発見したのだ。樹皮からどこにでもありそうな草が数本伸びている。あれがドリアードの隠れている姿だ。



気づかずに接近すると、いきなり木が変化して、無数のツルと木の葉で攻撃してくる。このツルがまた厄介で強制スタンする上、数が多すぎて英雄の力でも回避は不可能だった。



つまり近づけば死が確定する。幸いなことにドリアードは木に固定されているため、自身で動くことができない。気づかれずに通ったり、全力で逃げれば追って来れない。



俺は十分距離を取って、アイテムを取り出す。液体の入ったビンだ。それを木から生えている草に向かって投げた。ぶつかりビンは割れ、黒い液体が付着する。ドリアードは擬態をやめ、木の表面から女性の上半身のような姿を現す。樹皮で形取られた顔は醜悪で、言葉にならない声でわめきながら、無数のつるで辺りを無差別に攻撃し始める。



しかし、俺はかなり遠く、つるは俺のところまでは届かない。俺は魔法を発動した。【ファイアーボール】火球がドリアードに向かって飛んでいく。そう、あのびんに入った液体はタールだ。火球はタールに引火して炎上を始めた。



タールは非常に安いため、大量に買い込んである。物理攻撃無効でも火属性の攻撃は通る。ダメージは高くないが、継続ダメージが積み重なれば十分にドリアードを倒すことができる。



俺は安全な位置から、タールが切れそうになったら投げ込むだけの作業を20分ほど続け、ドリアードを討伐した。



ドリアード自体は時間をかければ倒すことはできるが、極楽鳥と当時に出現するとなすすべがない。



その場合は、極楽鳥をドリアードの隠れているところから、誘導して引き離し、金ダライダッシュで逃げるしかない。



俺はそんな細かい作業を続けながら、また時折遭遇するウッドゴーレムから逃げながら、先を進んでいった。ちょうど四体目のドリアードをタールで倒した時、ドロップが発生した。



俺はこれを待っていたのだ。別にドリアードは居場所がわかるため、あえて近づかないようにスルーして進んでいける。それにも関わらず、時間をかけて討伐するのは、このドロップのためだ。



聖樹の蜜。使用すると最大HPが2000アップする。一撃死が多いこのLOLでは破格の効果だ。もちろん万能ではない。



ダメージを受けた分、最大HPが減り、本来の最大HPまで来たら効果が消える。つまり、最大HP300のキャラが使用すれば、最大HPが2300になる。そこで500のダメージを受ければ1800になり、このタイミングで回復薬を使用しても最大HPが1800になっているため、HPは回復しない。



それでも一時的に2000もHPを増やせるのは破格の効果だ。



俺は倒せるドリアードの討伐を続け、木を登って行った。頂上付近に着くまでに、運良く聖樹の蜜は3つになった。



ドリアードで経験値を稼ぐことも出来たので、マジックナイトの熟練度が上がり、『マジックバリア』を覚えた。



『マジックバリア』は魔法防御の3倍の強さを持った障壁を張り、魔法属性の攻撃を防ぐことができる。



俺の魔法防御は大して高くないから、中級魔法でも食らえばあっけなく破られるだろう。更に使用中、常にMPを消費していく。はっきり言って防ぐより、回避した方が効率がいい。



回避不能な広域範囲魔法の時は重宝するので、その点では有益なスキルだ。



_________________



遂にゴールに到着した。ここでボス戦が始まる。俺は意を決して頂上に広がる広場にたどり着いた。木の中に神聖な雰囲気を発する円形闘技場があった。



その中央で禍々しい色の石が心臓のように脈動している。そこに漆黒の刀剣が突き刺さっていた。見た感じ、エルフの里の疫病は明らかにあれが原因だと分かる。



その付近に黒いローブの三人組がいた。一番背の高いリーダー格の男と、横に広く、ここまで登ってきたことが信じられない太った男、そして、ローブの外からでも膨らみが分かるダイナマイトボディーの女だ。



「お前、何者だ? まさかあの戦姫を倒して上がってきたのか?」



リーダーの男が警戒心を表しながら言う。そこにデブも追随した。



「そうに違いないぜ、けっ、やっぱりたかが傭兵か、役にたたねぇな」



「わたしは「これを見られたからには生かしてはおけない」



かわいそうに、女が何か話そうとした瞬間、リーダーに被された。



俺は冷や汗を流していた。イベントの強制力があれば大丈夫なはずだ。もしそれから外れれば俺は間違いなく死ぬ。



「そうだぜ、短い人生、ご苦労だったな」



デブが何か言っているが、俺の目線は女しか見ていなかった。いや、別に下心ではない。断じてない。あの豊満な果実に触れたいなど微塵も思わない。



俺が見ている理由は一つ。あの女が戦闘に参加すれば、死ぬしかないからだ。



一見下っ端のように装っているあの女が一番やばい。実は4人いる魔王軍幹部の一人。魔法使いキャラでソラリスの次に強い。敵キャラでは最強だろう。



艶王アリアテーゼ。



膨大なMPにぶっ壊れて高い魔力と魔法防御。



『トリプルスペル』という3つの魔法を同時発動できるスキルと、『魔導の真髄』という詠唱時間極小、クールタイム極小、となるスキルを有している。



簡潔に言えば、同時に3つの魔法をほぼノータイムで連発できるという頭がおかしい能力だ。更に『全属性魔法適正』というパッシブスキルがあり、このゲームで唯一、全ての属性魔法を使えるキャラだ。



魔法が強い敵との戦いは、無効や軽減アクセサリーを駆使して戦うのが王道だ。しかし、例に漏れず、アクセサリーは2つまでしか装備できない。つまり無効に出来る属性は2つまでだ。アリアテーゼの攻撃を完全に防ぐ手立てはない。



HPや防御力、素早さは魔王軍幹部で最弱だが、そもそも近づく前に消し炭にされる。



今のレベルを考えれば、戦闘になった瞬間に詰むことが確定していた。








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