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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第4章 英雄の決意
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バクバク捜索



翌日、俺たちは旅館を朝早く出た。レーダーを元にバクバクの捜索を始める。



研究所で見た位置から結構移動している。俺たちは街を出て、麓の間欠泉が多くある地域に向かう。



「旦那、どうだ? 場所わかるか?」



「うーん、正直結構移動されてて、分かりづらい、ここなんだけど」



「恐らく、この山があそこに見える山じゃないか、だから方角的にあっちか」



手探り状態で進む。バクバクはどうもガルドラ山脈にいるようだ。



「ちょっと困ったことになった、恐らくドラゴンの生息地に入る」



「ふん! ドラゴンなんて現れたらボコれば良いだけだろ」



「いや、戦闘は回避したい、ドラゴンと戦うと奴らは仲間を呼ぶときがある、一体でも厄介なのに複数に襲われるとかなりきつい、隠密行動を取るべきだ」



「バクバクがドラゴンにやられる可能性はない?」



リンの質問は最もだ。バクバクよりもドラゴンの方が遥かに強い。



「可能性はある、いくらバクバクでもドラゴンのHPは削れないから『捕食』できない、ただバクバクは強すぎる相手とは戦わずに全力で逃げる傾向がある、今まで溜め込んだ回避スキルと逃亡スキルを最大限に使ってな」



少なくともレーダーによるとまだバクバクは生きている。



俺たちはガルドラ山脈を登り始める。標高が高い地域には木々がないため、隠れられないが、低い地域には森がある。俺たちはできるだけ森から出ないように山脈を登る。



道は険しく、体力を消耗していく。単純に戦闘ではなく、登山が辛い。ゲームでは疲れなど感じなかったが、現実では移動で体力を取られる。



昼になり、休憩を取ることになった。みんな疲弊している。ドラクロワとポチだけは全く疲れていないのか元気だった。



火を起こすと、ドラゴンに気づかれる可能性があるため、火を使わない乾燥した食材で食事をする。



「美味しいご飯が食べたい」



干し肉をかじりながら、ポチが文句を言う。



「あの草とか、美味しいよ」



リンがまた雑草を指差す。



「ぼく、にくしょく」



俺とギルバートはレーダーを確認して、この後の道順を確認する。地形しか分からないため、かなり苦労する。



「もし日暮れまでに見つけられなそうなら、一旦ガルデニアに戻ろう、夜のガルドラ山脈は危険すぎる」



普通なら魔物除けのお香で野営できるが、ドラゴンにはそんなもの通用しない。それにドラゴンは夜行性のものも多く、夜になると凶暴化する。



交代で寝ている状況でドラゴンに見つかれば、対応しきれない。



休憩が終わり、俺たちは再び進み始める。足場が悪く、体力を消耗していく。



しばらく進んだとき、大きな唸り声が響いた。



「全員止まれ、音を立てるな」



俺たちは音を立てないように身を屈める。何かが近づいてくる足音が聞こえる。



木々の隙間からその存在の姿が見えた。赤い鱗を持つ赤竜だ。ガルドラ山脈に最も多く棲息するモンスターだ。



火炎ブレスが範囲が広く、かなりの高威力だ。もちろん、防御力や攻撃力も極めて高い。



赤竜に気づかれないように息を殺す。赤竜はゆっくりと移動していき、やり過ごすことができた。



「ふぅー、もう大丈夫だな」



俺たちは再び、進み始める。奥に行くに連れて、ドラゴンとの遭遇率が高くなっていた。



何度かドラゴンを隠れてやり過ごす。幸い、ドラゴンは足音や羽ばたきの音が大きく、鳴き声も響く。こちらが先に相手を知覚できるので、隠れるのは造作もなかった。



山脈の中腹まで来た。既に太陽が傾き始めている。ここに来るまで随分と時間がかかった。俺は特徴のある切り立った崖を見上げた。



「よし、恐らくあの崖がこのレーダーに写っている部分だ」



俺はレーダーを確認しながら、確信を得る。やっとバクバクの近くまで来た。



「バクバクとは俺が戦うから、手を出さないでくれ」



「ん? 何でだよ、俺も暴れたいぜ」



「今まで捕食してきたから、かなりのステータスとスキルを持っている、俺はほとんどのモンスターが使うスキルを知っているから対応しやすい」



ゲームでもバクバク戦は厄介だった。スキルが今まで何を捕食したかで決まるため、予想ができない。それにバクバクは唯一、『捕食』により無限にレベルが上がっていくモンスターだ。何となくゲーム開始からの時間で強さを予想できるが、予想外の成長をしていればかなりの苦戦が強いられる。



「あと、HPが半分を切れば、俺たちが『捕食』される可能性がある」



そのリスクが大きい。『捕食』されれば確実に死ぬ。『ワンモアチャンス』や『極根性』のような即死防止スキルが役に立たない。HPが半分を切ってはいけない。



そして、もう1つの理由がある。俺たちが最強になるために、バクバクを利用する。



「念のため、皆は近くに待機していてくれ、ドラゴンが現れる可能性もある、すぐ逃げ出せるようにしていてほしい」



俺はそう告げて、バクバク戦のための準備を進める。テイムしたモフメーを出現させる。モフメーは全く役に立たないように見えて、実は有益なモンスターだ。なぜなら『物理ダメージ無効』を持っているから。



ユキのような『物理ダメージ無効』は一部の特殊なモンスターが持っている。しかし、ほとんどテイムが不可能なモンスターだ。



そして、『テイム』の真価は『イミテート』があって発揮される。『テイム』したモンスターの姿にも『イミテート』することができる。



これにより、俺は一時的に『物理ダメージ無効』を手に入れることができる。ちなみにライオネルが使用する『龍牙斬』は物理属性ではなく、無属性なのでダメージを受けてしまう。



この『テイム』『イミテート』のコンボは非常に強力だ。ネロは『捕食』を『スキルコピー』したことで、多くのスキルを集めているが、それはアクティブスキルのみに限られる。つまり自分の意思で発動する『スキル』だ。



『物理ダメージ無効』などは常時発動型のパッシブスキル。これは手に入れることができない。『イミテート』はパッシブスキルを利用できる。



モフメーはイベントモンスターだから、ゲームではテイムして持ち出すことは出来なかった。現実になったから、それが可能になった。



モフメーには悪いが、俺はこのモンスターを利用しようとしている。バクバクとの戦いでモフメーは死ぬことになる。



俺が強くなる為に、モフメーの犠牲が必要だ。ゲームでは何も思わなかったが、心が痛む。



獣人の国アニマに行けば、今までテイムしたことのあるモンスターをお金を払って復活させることができる。その時は復活させようと思う。



俺は立ち上がり、峰の上を走り出す。バクバクがいる場所へ。







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