表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第4章 英雄の決意
187/371

最悪の状況



少し廊下を進んで、メイン管理室と書かれた部屋があった。ここがこの研究施設の頭脳だ。研究施設のマップもある。セクター4への入り口はマップ上、壁となっている。



この部屋にもレンブラントにつながる情報がいくつもある。彼がどれだけ天才なのかがよく分かるという演出だ。



またここにはアバランチを無効化する手段がある。電磁パルス装置があり、このフロア一帯のアンドロイドを一撃で無効化できる。アンドロイドに埋め込まれたチップがその信号を受けると焼き切れるらしい。



これは隠し要素のようなもので、各部屋に散らばるレンブラントの研究論文を読み解くことで、パスワードを知ることが出来る。そして、ここにある端末にダウンロードをして電磁パルス装置として持っていくことができる。



一見するとかなり良い物に思えるが、残念ながらガーディアンには通用しない。発見された当初は、ついに超耐久ガーディアンレースを楽にクリアすることができると話題になった。



しかし、実行してみるとガーディアンには全く効かない。LOLスタッフがプレイヤーに楽をさせることはありえなかった。どう見てもガーディアンってアンドロイドじゃん!っとプレイヤーは全員ツッコんだだろう。



結局この隠し要素はあまり使われることがなかった。単純にアバランチを無効化してしまえば、経験値やドロップアイテムも手に入らないし、別にこっそり隠れながら進めばクリアはできる。



何よりせっかくこの研究施設で手に入れられる強力な仲間、殺戮兵器アドマイアも同様に動かなくなってしまう。アドマイアは最終パーティに入れる人も多い、かなり人気なキャラだ。だから誰もこの電磁パルス装置は結局誰も利用しなかった。



俺がここに来たのは、それらが理由じゃない。もっと重要なことがある。



「ヘルマン、監視カメラの映像を出せるか?」



「ちょっと待ってください」



マルドゥークの状況だ。奴が今何をしているかを確認したかった。ここなら施設中の監視カメラ映像を見ることができる。



「できました」



俺は無数のモニターからマルドゥークを探す。そして、彼の姿を見つけた。



「レン……」



リンが俺を見上げている。表情に出てしまったのだろう。マルドゥークは床に伏して倒れている。()()()()3()()()()()()



これが意味することは1つ。マルドゥークは教典が返されても俺たちのことを諦めていない。



レーザーで何度も死にながら、少しずつセクター3に入ってきている。奴がレーザーを抜けるのは時間の問題だ。



そうなれば、セキュリティが解除され、ヘルハウンドが入ってくる。



俺たちがそれまでに超耐久ガーディアンレースを終わらせることは、時間的に不可能。



つまり、俺たちはヘルハウンドとマルドゥークをこのセクター3で迎え討たなければならない。



状況は最悪だ。



ヘルハウンドはこっそりと侵入するなんてことはしないだろう。一目散に俺達を追ってくる。そうなれば大量のアバランチを引き連れてくるはずだ。



ヘルハウンド一体でも勝ち目はない。そこに、大量のアバランチが追加される。俺でさえ、ゲーム時代の全盛期でアバランチ3体が限界だった。それ以上のアバランチに囲まれたら全滅する以外、道はない。



だから、考える必要がある。幸いマルドゥークがセクター3に入るのにはまだ多少の時間がかかる。その間に迎撃の準備をすべきだ。



「おい、どうすんだよ?」



「ドラちゃん、今はレンに話しかけちゃだめ」



俺は目を閉じる。全員のスキル、ステータス。そこからできることのリストアップ。可能性を模索。



周りの音が消えていく。時の流れが遅くなっていく。



俺はシミュレーションを開始する。ヘルハウンド、マルドゥーク、ガーディアン、アバランチ。全ての絶望を切り抜ける道を探す。



思考の海に深く深く沈んでいく。それに呼応するように、脳が激しく稼働し、1つの案を提案してはそれを却下するという工程を、同時に何百回も連続で行っていく。



情報が足りない。今の俺の持っている情報だけでは、光を見つけられない。



「フレイヤ、お前の魔法、スキルを全て教えてくれ」



俺はフレイヤのスキルを全て把握していない。ゲームでも仲間に入れて、後悔をしてすぐに外した。だから、ここで知る必要がある。



「ああ、いいぜ! 『爆裂ブースト』『爆炎の極み』【ボム】【エクスプロージョン】【メギド】だ!」



『爆裂ブースト』確か一定時間爆裂属性の攻撃力を倍増させるスキルだ。『爆炎の極み』爆裂属性ダメージが無効で、爆裂魔法のクールタイムを極小にする。



そして、【メギド】か。俺はこの世界でフレイヤに絶対に使わせたくない魔法だ。いろいろなRPGでも存在する自爆魔法だ。命を代償に広範囲に莫大なダメージを与える。復活が出来ない現実では絶対に使わせるわけにはいかない。



俺はその情報を下に、更に思考を加速させる。



達成条件を変えれば、栄光への道(デイロード)をすでに見つけている。ここから()()で脱出をすること。その条件を変えればクリアできる手はある。



誰かを切り捨てて、犠牲にして、その末に生き残る。きっと一度でもそれをしてしまえば、俺はもう後戻りができないだろう。



次に同じことがあったとき、俺はまた仲間を切り捨てる。それは俺の望むハッピーエンドとは違う。1人でも欠けたら、それはバッドエンドだ。



だから、俺は目の前に光る栄光への道(デイロード)を掻き消す。そして、暗闇の中にもう一度、光を探し求める。



全員で生き残る。そのためなら不可能の一つや二つ、超えてやる。



膨大なシミュレーション、イレギュラーの想定。その中で何度も仲間が、俺が殺される。



そして、その中で1つ最後までたどり着く道があった。いや、道と呼ぶにも心許ない、光の糸だ。



運の要素が絡み、作戦などと呼べないかもしれない。失敗する可能性の方が高い。それでも確かに見えた栄光への道(デイロード)



俺は仲間を見る。誰も欠けさせない。全員でこの無理ゲーをクリアする。



「よし、作戦を伝える」



か細い糸だが、俺なら渡り切れる。俺達ならできる。










さあ、無理ゲー攻略を始めよう。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ