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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第4章 英雄の決意
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復興活動



俺達はリンが戻ってくるまで城下町の復興を手伝うことにした。



大工達が破壊された建物などの解体や修繕を行なっている。俺達も一緒に資材の運搬を手伝う。



「おお! すげぇな、あんちゃん」

「いやー、こりゃ、大助かりだ」

「力持ちに、悪い奴はいねぇ!」



大工達が俺に駆け寄ってくる。



「いえいえ、こう見えて、力はありますからね」



俺が重い資材を軽々持ち上げているので、羨望の眼差しを向けられているのだろう。ステータスによる恩恵だ。中々気持ちが良い。



大工達は俺の元へ辿り着き、そして、無反応で通り過ぎていく。



「え?」



俺が後ろを振り返ると、ドラクロワとポチが俺の5倍くらいの資材を運んでいた。



「すげえ怪力だな」

「小僧もそんな小さな身体でとんでもないパワーだ」

「どうだい? 俺の組に入らないかい?」



「……」



べ、別に気にしてないし。世の中、力が全てじゃないし。俺はむしろ頭脳派だし。



俺は少し拗ねながら、資材を運ぶ。



資材を現場に運び入れて、地面に並べた。



「いや、ありがとうね、助かるよ」



頭にタオルを巻いた大工のお頭が、今度こそ俺にお礼を言ってくれる。



「いえいえ、俺もこの国を早く復興させたいんで」



「救国の英雄さんはさすがだな」



救国の英雄と呼ばれるのは少し照れくさい。お頭は少し困ったような顔をしていた。



「実は木材が足りなくてな、今、きこり達だけじゃ賄えないから、冒険者達に依頼してるんだ」



LOLには採集イベントもある。グランダルの木材採集はきこりのトムのイベントだろう。



武器作成の原料は金属だけではない。強力な杖を作るためには、貴重な木材が必要になる。それを手に入れるためにきこりのトムを仲間に入れる必要があった。



俺はゲームでソラリスしか魔法使いキャラを使っていなかった。永遠の扇があるから杖は必要なかったので、トムのイベントは最後まで進めたことがない。



それにトムの最初のイベントは強制的にあるキャラが仲間になってしまう。だから、今回は申し訳ないが、俺達は木材採集には協力できない。



広場から男が1人歩いてくる。



「これはこれは、レン君、復興を手伝ってくれてるんだね」



ジェラルドだ。貴族の身分でありながら、グランダル城下町復興の陣頭指揮を取っている。その方向にも類稀なる才能があるらしい。天は二物を与えたようだ。



「ジェラルドさん、お疲れ様です、もうすぐこの街を出るんですが、少しでも手伝いたかったので」



「それは殊勝なことだ、どこかの愚息にも見習ってほしいものだ」



やはりジェラルドと会話すると緊張する。笑っているが、その笑顔も普通に怖い。



その後、ジェラルドと復興に関しての話を続けた。ジェラルドのプランは完璧なものと言ってよかった。更に今後街が襲われた際の防衛能力の向上に関しても意見を求められた。



変なことを言わないように、頭をフル回転させて会話する。こんなに疲れる会話は久しぶりだった。



一通り会話が終わると、ジェラルドは参考にするとお礼を言い、俺の目を見て、ある提案をしてきた。



「君からは他の人にはない特別なものを感じる、どうかな? 私の部下として働かないか? 報酬は約束できる」



どうやら冗談ではなく、本気のスカウトのようだ。



「すみません、俺にはやるべきことがまだあるので」



「そうか、それは残念だね、君ならいつでも歓迎する、好きな時に声をかけてくれ」



嬉しい気持ちもあるが、ジェラルドの下で働くとか怖過ぎる。ミスしたときの報告とか、出来る気がしない。俺ならミスは絶対に隠滅する。



「では、私はあそこでレディを困らせている愚息を止めに行くので、これで失礼するよ」



ジェラルドはそう言って、離れていった。そして、広場に聞き慣れた悲鳴が響き渡った。



その後、昼過ぎまで俺達は復興を手伝ったところで、リンが到着した。



リンはどこか浮かない顔をしている。失敗したのかと思ったが、そうでもなかったらしい。



「闘志のガーネット、もらってきた」



手には綺麗な赤茶色の宝石が握られている。



「ありがとう、手に入れられてよかったよ」



「シュタルクに行ったら、私が王様になってた」



「え?」



「マックスに跪かれた、マッチョの大群にキングリンって大コールされて、最悪だった……」



ムキムキのマッチョ集団が、キングリンと大声でコールしている光景を想像した。ぞっとする。



「とりあえずガーネットだけもらって、王位は辞退してきたけど、『君の筋肉はここにある、シュタルクはいつでもキングリンの帰還を待っている、マッスルは永遠に』って意味不明なこと言われた」



体育会系とすぐに仲良くなれるリンだが、ガチな方々とは相入れないようだ。



「……ま、まあ、お疲れ様、俺も無事にヒドラを倒したし、早速次の目的地に向かおうか」



これでトパーズとガーネットが手に入った。そろそろ次の行動に移ろう。




















 

俺たちは地竜に乗り、グランダル王国を出発した。ヘルマンはラブちゃんの背中に乗っている。ラブちゃんは普通に地竜より足が速かった。



目的地は研究施設だ。ヒドラの血清と飛空艇を手に入れる。



研究施設は深い森の中にある。セルバ森林だ。この森を攻略するためには、グランダル王国の図書館にある本からヒントを得なくてはならない。だから、ネロは研究施設に行くことができた。



出現するモンスターはさすがに300レベルを超えていれば、問題はない。ただ問題は迷いやすいことだ。複数のギミックもある。



それにあの森には様々なイベントが関与している。それらに巻き込まれないことを祈るしかない。



この世界は現実になってから、本来はプレイヤーがフラグを立てないと発生しないイベントが自動的に発生してしまう。だから、俺の知らない所でどんなイベントが起こっているか、不安で仕方がない。



セルバ大森林で一番代表的なイベントはアザール信仰だろう。森の奥地の集落にアザール教という宗教の聖地がある。こいつらはゼーラ教から邪教だと言われて迫害を受けている。



ちなみにアザール教はゼーラ教と同じ信仰だという落ちがある。ゼーラ教大司教のコーネロが自分でアザール教というものを作り上げ、自分で敵として迫害している。完全なマッチポンプだ。あの狡猾老獪のハゲタヌキが考えそうなことだと思う。



あとは細々としたイベントがいくつかあるが、危険性はそんなに多くない。



俺たちは途中で休憩を挟み、日が沈んだ頃にセルバ森林の入り口まで到着した。



「どうする? さすがに夜は危険だろう、一旦ここで野宿するか?」



ギルバートが聞いてくる。その懸念は最もだ。しかし、研究施設には夜しか行くことができない。



「いや、このまま向かう、むしろ夜じゃないといけない理由がある、夜にしか発光しないコケがあって、それを目印に進まないとたどり着けない」



このコケのことがグランダル城下町の図書館に書いてある。昼間は見えないが、夜になることで光るコケを辿って研究所に向かうというギミックだ。



「なるほど、じゃあ、注意して進もう」



「俺は夜目効くから、あんまり夜でも関係ねぇけどな」



「わん! ぼくは暗いと見えない」



各々何か言いながら、暗い森に向かう。夜でもこのメンバーなら問題ないだろう。



森に入ろうとした時、暗闇を切り裂くような強烈な光が見えた。



凄まじい爆音と共に、炎が膨れ上がる。俺は爆風により、吹き飛ばされる。



重さのステータスが低い俺たちはドラクロワ以外、みんな吹き飛ばされてしまった。




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