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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第1章 英雄の目覚め
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過去の栄光



ポチもレベルが62まで上がった。ステータスは初期に毛が生えた程度だが、有益なスキルを覚えた。



『ワンナイトカーニバル』味方全員を状態異常の狂乱状態にさせる。

『オールフォーワン』一定時間、対象の1人が受けるダメージ量をパーティ全員に均等配分する。

『ワンフォーオール』一定時間、パーティ全員が受けるダメージを1人に集約する。

『ワンデーパス』一日に一回使用することができ、使用するとその施設利用費が無料になる。



完全にネタスキルであるが、俺はこれらのスキルの真価を知っている。やっぱりポチは最高だ。



狂乱状態は、混乱状態の上位にあたる。混乱状態は2分間、魔法が使えなくなる。ほかのゲームでの魔封じの効果だ。



狂乱状態は追加でHPが1になり回復が一切できなくなる。その代わり攻撃力が2倍になる。2分間過ぎれば、HPは元に戻る。



狂乱状態は時と場所を選べば、かなり有効に使える。バーサーカーの『狂戦士の怒り』との相性は抜群に良い。



ちなみに状態異常のステータス変化は補助扱いではないので、『狂戦士の怒り』と効果が重複できる。



もちろん、狂乱状態が致命的な時もある。クラウンというピエロのモンスターはこちらを狂乱状態にしてくる。



クラウンは物理攻撃無効であり、さらに広範囲の威力が低い魔法を連発する最悪な敵だ。狂乱状態で魔法が使えないのでダメージを与えられない。更にこちらは弱い範囲魔法でもダメージを受ける。もちろんHPが1だから即死する。嫌な思い出だった。



『オールフォーワン』も使い勝手がいい、パーティーを4人連れていれば、ダメージが分配され4分の1になる。回避が困難な一撃死攻撃を受けきることもできる。



逆に『ワンフォーオール』は広範囲で全滅必至の攻撃を1人を犠牲にして耐え切るために使用する。現実になったこの世界で使用することはないだろう。



俺たちはかなり強くなった。しかし、まだ足りない。まもなく、LOL史上、五本の指には入る無理ゲーイベント。邪龍討伐が始まる。



LOLで一ヶ月を過ぎると発生する強制イベントであり、封印された邪龍が復活し王都を襲って来る。それを撃退するイベントだ。



このイベントはLOLの中では伝説になった。発売開始から半年経過しても、誰もこのイベントを越えた人がいなかったのだ。このイベントを越えられず去っていったプレイヤーは計り知れない。



まず邪龍が強すぎる。高HPに高攻撃力であり、防御力もそこそこ高い。魔法防御はそれ以上に高い。敵の攻撃は複数パターンがあるが、ほとんど一撃で死ぬ。



まず防御力を突破できる攻撃方法を手に入れることが最低条件だ。あとはかなりの長期戦になる。防御力を突破した分のダメージをコツコツと積み上げ、膨大なHPを削っていくしかない。



しかし、真に恐ろしいのはそんなことではない。これが時間経過で発生する強制イベントということだ。つまり準備期間は一ヶ月しかなく、その間に必死に準備をしないといけない。準備不足になってしまえば、もう攻略は不可能になり、データをリセットして、オープニングからやり直す他ない。



一時的に高レベルの仲間が2人、パーティーとは別に参戦をする。この人選は決まった面子からランダムで選ばれる。これで外れを引いてしまえば勝ち目がない。セーブして再戦しても同じ人選になる。ゲーム開始時から決まっている。



当時《養殖ブルースライムレベリング》が発見されていなかったため、この戦いに誰も勝てないまま半年が過ぎた。



そして、英雄たちはあらゆる方策を模索し、ついに討伐に成功した。《養殖ブルースライムレベリング》がなければ一ヶ月でどんなに頑張ってもレベル30ぐらいまでしか上げられない。巨神兵のスタートダッシュもこの時点では発見されていなかった。



その中で勝ちとったのだ。ネット掲示板では邪龍討伐委員会が結成された。俺もその一員だった。みんなで意見を出し合い、いかに討伐するかを話し合った。あの時は本当に楽しかった。英雄達のたゆまぬ努力が不可能を超えた。



俺が当時邪龍を討伐したときは10時間かかった。10時間集中力を切らさずに全ての攻撃を回避し続けた。邪龍にトドメの一撃を与えたあの時の感動は今も忘れられない。



今は巨神兵とブルースライムのおかげで大分ハードルは下がったが、それでも邪龍か強敵であることに変わりはない。そろそろ装備品を整えないといけないだろう。



今の装備は店売りの一番良いものであるが、所詮は店売りであり、性能は低い。



候補はいくつかある。最強武器と呼ばれる錆びた剣がその一つだ。錆びた剣は攻撃力がかなり低いが、イベントでパワーアップをしていく。最後まで行けば攻撃力が全部武器中5番目だ。攻撃力は5番目だが、そのスキルがかなり使えるため、英雄達の中では最強武器と称される。



だが、邪龍イベントまでに錆びた剣の強化を最後までしきるのは現実的ではない。それならば、次点で白浪の剣だろう。



白浪の剣は中レベルダンジョン海賊の墓場で手に入る。攻撃力はそこそこだが、特殊効果の使い勝手が良い。素早さがかなり上昇し、こちらの攻撃が全て範囲攻撃に変わる。剣の先から波が発生し、敵を斬りつける。



回避もしやすくなるし、乱戦では特に効果を発揮する優秀な武器だ。俺もゲーム時代にはお世話になった。しかし、邪龍のように単体相手では波による恩恵はない。



または自分で作成するという手もある。鍛冶屋イベントを終えれば、鍛冶場で材料を揃えて武器を作成できる。



攻撃力一位の武器は作成でしか手に入らない。まあ材料を手に入れるのが現段階では不可能なので、その選択はない。



そこで俺はふと思った。もしかしたらゲーム時代は不可能でも現実になった今なら行動できる範囲が広がるかもしれない。



もしそれが可能なら、本来邪龍討伐前には入手不可能なアレが手に入るかもしれない。



アレが手に入れば攻撃力の増強は申し分ない。さらに向かう先でリンの武器も手に入れる当てがある。今は店売りの小太刀を装備しているが、あの武器が手に入れば大分戦いやすくなるだろう。



俺は方向性を決めて、城下町に戻ると、教会に足を運んだ。そこで、魔法使いと戦士を極めることでなれる上級職マジックナイトに転職する。



マジックナイトは攻撃力、MP、魔法攻撃力、魔法防御力が上昇する。代わりに防御力とHPが下がる。



次に露店で必要なポーションやタール、そして万能薬を大量に購入した。アクセサリーショップではアンチポイズンリングとアンチパラライズリングを購入する。



これから向かう先は、ステータス異常対策をしないと生きていけない。製作者がクリアさせる気がないほどの悪意に満ちた場所だった。




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