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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第3章 英雄の躍進
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爆弾解除



_____裏切りの騎士団長_____



やはり奴の狙いは宝物庫のようだ。どうやって俺の目的を知ったのかは分からない。情報統制は完璧なはずだ。どこまで知っているか分からないことが不気味に感じる。美術保管庫の前に本来ならいるはずの衛兵がいない。



俺は部屋に入ると、2人の衛兵が倒れていた。奥には隠し通路が開かれた状態になっている。俺は索敵スキル『動体感知』を発動する。球上の効果範囲の中の動く対象を察知できる。



まだいるようだ。階段の下で俺は動く存在を確認した。



本当に何者なのだろうか。宝物庫の存在まで知っている。これは王国でも一部の限られた者しか存在を知らない。



俺は自身の武器である両手斧を握りしめた。レンは恐らくかなり強い。邪龍討伐ならまだしも、その後に現れた魔王軍幹部を倒したと聞いている。



実際にこの目で見れなかったのが悔しいが、並の実力ではないだろう。俺が負けるとは思わないが、心してかからないとな。



俺は階段を降り始める。ここから先は一本道だ。逃げ道はない。



「いやー、よくないねぇー、国の宝を荒らしちゃダメだよ」



この石段では足音が響くのは避けられない。だからあえて声を出してレンに恐怖心を与える。恐怖心や焦りは判断を鈍らせる。



いると分かっている相手から不意打ちを受けるほど、俺は弱くない。



俺は水晶の灯りに照らされた扉の前に出た。レンの姿はない。床には兵士が横たわっている。



笑えてくる。まさか気絶したふりで乗り切ろうとは。反乱軍が身につけていた兵士の服を奪っていることぐらい予想している。



俺は斧を倒れている兵士に振り下ろそうとした。しかし、すぐに思い直す。



もし一撃で倒してしまい、粒子にしてしまえば、本当にレンだったか判断ができない。



俺は兜を掴んで、持ち上げて、顔を確認した。



別人だ。この王城で見かけたことがある。間違いなく、ここの兵士だ。



そうなると、可能性は1つ。どんな手段を使ったかわからないが、奴は宝物庫の中にいる。



俺が開けられないと思って避難したのだろう。残念ながら、その目論みは外れている。



俺は既に鍵を入手している。いつでも入ることが出来るから、全ての準備をしてから、取りに来ようと考えていた。



もしあれが宝物庫から消えていることが判明したら、大事件になる。あれを持ち去るのは封印を解く準備が全てできてからだ。



そろそろ現国王も、王位をロンベル王子に譲るだろう。そうなれば、即位式で代々王に受け継がれるグランダルの紋章はロンベルの手に移動する。その紋章が封印を解く鍵だ。



俺は鍵を差し込み、回す。錠の外れる音が聞こえた。斧を油断なく構える。



窮鼠猫を噛む。追い詰められた者ほど用心をしなければならない。



扉を開け放ち、攻撃に備える。



しかし、そこには誰の姿もなかった。



馬鹿な。ここは袋小路だ。逃げられる場所などない。隠密系のスキルも俺には通用しない。



俺はすぐに宝物庫の中を確認する。そこには、俺が求めていた蝿の円環がなかった。



「くそがあぁぁぁぁ!!」






________________


















俺は全力で逃げていた。危なかった。一瞬、宝物庫の中に隠れようと思ったが、いずれ蝿の円環を盗み出すカーマインが既に鍵を手に入れている可能性も考えられたし、もし扉の前に待機されれば逃げることができないと判断してやめた。



それにカーマインは索敵スキルも豊富に持っている。『動作感知』で階段下にいる俺に気づいているから、声を出しているのだろう。



だから、俺はカーマインが階段を降りてくるタイミングで、『スイッチ』を発動した。階段上にいる気絶している兵士と場所を交換した。



これでカーマインが下に来るのと入れ替わりに、上階に移動した。『動作感知』は常時発動型のパッシブスキルではないから、一度使って下にいることが分かったら、2回目は使わないだろうと読み、そのまま部屋を出て走り出した。



現実になったら、思いの外『スイッチ』の汎用性が高い。これからも重宝しそうだ。



もうカーマインは明確に俺を敵と認識したはず。王国の重要人物の前では襲われないだろうが、1人の時に遭遇したら、間違いなく殺される。



俺はすぐに謁見の間に向かった。すでにドラクロワとユキによって戦いは終了している。



「レン、無事でよかったわ!」



ユキが嬉しそうに声をかけてくれる。俺はユキから状況を手短に聞く。爆弾は既に見つかっていると聞いて驚いた。俺の予想ではもう少し時間がかかると思っていた。



俺はすぐに兵士の1人に案内され、爆弾が発見された場所に向かう。



この後は解除が必要だ。これも無理ゲーで、配線を切ることで爆発を阻止できる。映画などでは赤と青だけだが、そこは安定のLOL、全部で10色あるカラフル仕様だ。



一応どれを切れば良いかのヒントは隠されている。爆弾を開けるとカラフルな配線が迷路のようになっており、どれが繋がっているか調べるパズルゲームのようになっている。



途中から全て白い配線に変わるので、どれが信管まで続いているのかは迷路を辿るしかない。途中枝分かれして、行き止まりになっていたりもする。



結局時間がなさすぎて、そんなゲームをやっている暇はなく、皆適当に切って爆死する。10分の1だったらいつか成功すると信じて。しかし、それがスタッフの罠だ。



何とこの配線、2本が信管につながっており、2本同時に切らないと止められないのだ。パターンは45通りだ。



更に更に、この配線のカラーはゲームがリセットされる度に、ランダムにシャッフルされる。つまり答えの色をネットなどであらかじめ知っておくこともできないし、一度失敗して、やり直しても答えは変わっている。



このように反乱軍と戦いながら、爆弾を見つけて、解除する、という3つのことを成し遂げないとならない。



幸い、今回はまだ十分に時間がある。迷路を解く時間はある。俺は兵士に連れられて、爆弾を確認した。すぐに中を開けて、配線を確認する。



無数の白色線が複雑に迷路を作っている。こうゆう類は俺の得意分野だ。



「俺はこれから爆弾の解除を行う、万が一失敗したときのために城から皆を避難させてくれ」



「レンさんはどうするんですか?」



「ギリギリまで粘ってダメなら俺も逃げる」



俺はタイマーの残り時間を確認して、兵士に伝える。



「あとちょうど10分ある、それまでに全員を非難させてくれ、できる限りこの場所から遠ざかるように伝えてくれ」



伝言を受け取った兵士はすぐに走り出した。



俺はその場に残って、迷路を続けた。皆が逃げてくれることを祈りながら。



しばらくして、リンが姿を現す。



「おいリン、何してるんだ、早く逃げないと」



「大丈夫、レンが逃げきれるタイミングなら素早さが高い私も逃げ切れる、何か手伝えることがあるかもしれない」



リンは成長している。ただ俺のことが心配で無茶をしているわけではない。



「それに兵士が伝えてくれた伝言を聞いたから、はい、これ」



リンは俺の愛刀である斬鉄剣と妖刀村正を持ってきてくれた。彼女は俺が綱渡りをしていることを理解していた。



「わかった、じゃあ力を借りるよ」



俺は迷路を解くだけなら、残り時間から考えて十分に可能だ。問題はその後、カーマインが俺を放置しないということだ。



俺が解除に手惑えば、カーマインは俺の前にやってくる。戦闘になれば、俺は殺される。



それを見越して、リンは俺に武器を持ってきた。そして、自分もいざという時に戦えるように。



「リンは逃げる準備をしてくれ、俺はカーマインと戦うつもりなんてないからな」



俺はカーマインがもし現れた場合の逃走方法をリンに伝えて、準備をさせた。



そして、爆弾解除の迷路に集中した。





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