表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第3章 英雄の躍進
127/370

竜人戦



対戦カードが発表された。俺はもちろん、キングとは逆のブロックだ。決勝戦でキングと当たることになる。リンはキングと同じブロックだった。ドラクロワと仮面の女は俺と同じブロックだ。



そのあと、順番に試合が開始される。俺の出番はまだ先だったので、観客席でギルバート達と試合を観戦する。



ユキはメアリーに代わっており、メアリーは露店で買った食べ物をおいしそうに食べている。ポチは分前をもらおうと全力でメアリーに媚びていた。



「くぅーん」



「何? ポチさん、お腹すいたの?」



「わん!」



「どうしようかなー、ポチさんはメアリーの言うこと何でも聞いてくれるの?」



「くぅぅうん!」



お腹を見せて、寝転がるポチ。



「そっかぁそっかぁ、じゃあ、ポチさんのもふもふをもふもふさせてくれたら、ごはん分けちゃうかな」



「はぁはぁはぁ」



もふもふできるように顔を擦り付けるポチ。



何だかポチが完全にメアリーに支配されていた。



「お、ドラの出番だぜ」



ドラクロワの試合になり、俺達は試合に目を向ける。相手はミアだった。



可哀想だが、勝負は決まっている。ミアではドラクロワの圧勝だろう。



試合が開始されたが、予想通りだった。



ミアが持ち前の素早さで連続攻撃で切り付けるが、ドラクロワは回避すらしなかった。そもそも、防御力が突破出来ず、ダメージを受けてすらいない。



そして、ドラクロワが一撃、突っ込んできたミアに拳を合わせただけで、ミアは派手に吹っ飛んで場外となった。最初から最後までドラクロワは一歩も動かなかった。



「あんまり俺たちが応援も必要ないな」



ギルバートがその圧勝具合を見て呟いた。



「じゃあ、俺もそろそろだから、行ってくる」



「おう、旦那も頑張ってくれ、まあ俺は旦那が負けるところは想像出来ないけどな」



俺の第一試合はよく分からないモブだった。もはや一撃で終わる。リンも第一試合をあっけなく勝利した。



俺はすぐに上に戻って観客席に着く。次行われる試合を見るためだ。あの仮面の人物対ジークフリートだ。



遂にあの仮面の人物の力が分かる。



仮面の人物が現れる。なぜか観客席の俺を見ている気がする。ジークフリートは女性ファンが多いのか、黄色い歓声がうるさかった。



試合が始まる。



ジークフリートが先制して攻撃を仕掛ける。その剣技を仮面の女が避ける。



「ん?」



俺は思わず、身体を前に乗り出した。あまりに()()()()。俺が見た時と比べて、遥かに遅い。



手を抜いている。実力を隠しているとしか思えない。普通のNPCがそんなことをするとは考えにくいが。



俺は集中して、仮面の女を観察する。



ジークフリートの攻撃後の隙を狙い、反撃が始まる。華麗な剣捌きだ。俺はどこか既視感を持った。どことなくモーションに見覚えがある気がする。



スキルは全く使用していない。ユニークスキルを使ってくれれば、一発で正体が判明するのだが、そう簡単にはいかないようだ。



それにしても強い。ジークフリートはNPCの中ではかなり実力がある方だ。ステータスも高い。それにも関わらず、有利なのはスキルを一切使っていない仮面の女の方だ。



最終的にジークフリートが場外に吹き飛ばされて試合は終わった。



あいつは俺と同じブロックにいる。あの強さなら間違いなく上に上がってくる。戦いは避けられないだろう。



しかし、その前に、俺の次の相手が問題だ。相手は純粋にこの立候補者の中で最強の男だった。



俺の肩に手が置かれる。



「よう、次の試合、よろしく頼むぜ、全力でな!」



俺はあらゆる手を使って、強敵に勝ってきた。しかし、今回は搦手など使わない。正面からドラクロワに勝つ。



これは完全な無理ゲーだ。ドラクロワは魔王城の中ボス。300レベルパーティで挑んで、苦労する相手だ。本来ソロで勝てるわけがない。



「2人とも、頑張ってくれよな」



ギルバートの応援を受け、俺たち2人は会場に向かった。







____________________



「さて! 次の試合はバトルロワイヤルで上位のふたり、ドラクロワさんとレンさんの戦いだぁぁあ!」



会場が熱気に包まれる。特にドラクロワは先程のミアとの戦闘で人気が上がったようだ。



ドラクロワの表情には一切の笑みもない。ただ集中して俺を見ている。間違いなく本気だ。



俺は二刀を鞘から抜き、両手に構える。それならこちらも全力で戦うのみだ。



「それでは! 試合開始!」



かけ声と同時に俺とドラクロワは同時にスキルを発動する。



『竜化』『不動心』



俺は場外の危険を避けるために、『不動心』を発動する。ドラクロワは『竜化』を発動した。



うっすらと身体に浮かんでいた鱗がくっきりとし、全身を覆い、完全に竜族の姿になる。



これでステータスが爆発的に上がる。全てのステータスが俺の何倍も高い。



ドラクロワが向かってくる。凄まじい速度だ。300オーバーの俺の素早さを遥かに凌駕している。



しかし、それぐらいのステータス差は俺には()()()()



俺はドラクロワの拳をすれすれで回避する。続く連撃も全て紙一重でかわす。



俺の回避術はたとえ俺よりはるかに速い相手でも関係がない。完全に見切れる。それにしても、速い。恐らくリンでは通常のドラクロワなら問題なく回避できるが、竜化した状態ではまだ回避しきれないだろう。



回避しながら、俺は反撃を挟む。本来、竜化したドラクロワは防御力がとてつもなく高い。俺ではその防御力を超えられない。しかし、俺には斬鉄剣がある。



防御力無視で、ダメージを貫通させることができる。俺はダメージの数字を見て、表情を歪めた。



ドラクロワの最大HPはかなり高い。それに『HP自動回復』のスキルがある。今のダメージ量では削りきれない。回復するスピードの方が早い。



この戦いはポチのスキルを使うことができない。そのため、攻撃力を上げる『ワンナイトカーニバル』が利用できない。『狂戦士の怒り』で攻撃力を上げることは出来るが、それでも火力不足だ。



俺は回避しながら、『捨て身斬り』を発動し、あえてHPを減らして『狂戦士の誇り』で攻撃力を増強する。それでもHPを削り取れない。わずかに回復スピードより多く削っている感覚はあるが、このペースでは何時間もかかる。



ならば、場外を狙うしかないが、それも中々に難しい。ドラクロワは人型をしているが、見た目に反して重さのステータスがとてつもなく高い。竜化していれば、更に重さが増加する。僅かにノックバックが起こるくらいで、吹き飛ばすことはできない。



『ドラゴンフレア』



ドラクロワが口内から火炎を噴き出す。単体攻撃では俺に全て回避されると分かり、広範囲攻撃に切り替えた。



俺は既にモーションから予測し、『ハイジャンプ』で上空に飛び、『エアリアル』で空中に留まることで回避する。



前方広範囲攻撃の『ドラゴンフレア』を回避するにはこれしかない。俺のHPでも『ドラゴンフレア』をまともに浴びれば一撃で死ぬ。



スキルが終わったドラクロワは間髪を置かずに上空の俺に攻撃を仕掛ける。空中なら回避が出来ないという判断だろう。ドラクロワは地頭は良くないが、戦闘IQはかなり高い。



本来なら『自爆ファイアー緊急回避』をするが、今は魔法の使用が制限されているため、【ファイアボール】を使用できない。



俺は仕方なく『イリュージョン』を使用する。俺の身体がぶれて、瞬間移動する。俺はすぐに居場所を確認する。ギリギリ場外にならない円の中だった。



このままでは負ける。『イリュージョン』はリスクが高すぎる。最善の選択を選び続けたにも関わらず、俺には敗北の可能性がある。



攻撃の手を緩めた為、ドラクロワのHPは完全に回復しているだろう。



「なんだ? てめぇ避けるのが上手いだけで、大したことねぇな」



ドラクロワが残念そうに言う。当たり前だ。本来ソロで勝てる相手じゃない。



制限が多すぎる。ゲームでは300レベルオーバーの4人パーティで魔法もアイテムも使って、ようやく勝てる相手だ。



ラストダンジョンの中ボスに魔法もアイテムも使えない上、ソロの状況で勝つのは不可能だ。



俺は今まで弱点やシステムの穴を突くような戦いが多かった。事前にあらゆる準備を施し、知識によって勝ってきた部分が大きい。



それが出来ない素の状態の俺はこんなものだ。まだまだ弱い。



それに今回の総選挙は宝物庫のアイテムが目的だ。俺とドラクロワ、リンの誰がキングになっても問題はない。俺が負けても目的は果たされる。




















「おい……お前……()()()()()()()()?」















ああ、そう言えばウォルフガングにも言われたことがあるな。



俺の表情は、不可能を前にしたときに変わる。それがどうも奇異に思われるらしい。



これは俺の普通だ。ただの英雄としての当たり前。



いろいろ言い訳を並べてはみたが、どうも俺の性に合わないらしい。勝ちを諦められない。



「何もおかしくないよ……ただお前と戦うことが楽しくて仕方ない」












さあ、竜人ドラクロワ(無理ゲー)を攻略しよう。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ