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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第2章 英雄の成長
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野望








「俺はお前を殺さない」












アリアテーゼが驚いた顔をして、俺を見上げた。俺がアリアテーゼを殺さない理由は2つある。別に情が湧いたなどではない。



1つは既にリンが救出出来たので、彼女を殺す理由がなくなったことだ。むしろ説得して、対プロメテウスのために、協力をしてほしい。



そして、もう一つの理由はとても重要だ。



アリアテーゼは絶世の美女でダイナマイトボディのプロポーションを持っているからだ。



大切なことだからもう一度言う、ダイナマイトだ。ヤング何とかの表紙を飾っているグラビア級のダイナマイトだ。ドレスの姿で無意識に視線が誘導されてしまう。



俺には夢がある。ゲーム世界に来たからには、ハーレム形成を必ず成し遂げる。既に何人か候補を考えている。



アリアテーゼは外見的に俺の理想郷(ユートピア)には必要不可欠だ。



「レン、鼻の下伸びてる」



顔がだらけきってしまったようで、リンから氷点下の眼差しが送られる。



「ごほん、とにかく、俺はお前を殺さないよ、そもそも俺はプロメテウスに仲間を人質に取られて、お前を殺すように依頼されたんだ」



アリアテーゼの目に怒りと驚きが同時に生まれる。自分を騙したプロメテウスに向けての怒りだ。



「それにな、俺は確かにウォルフガングを倒した、あいつに無理矢理戦わされたようなもんだけどな、だけどもう一度復活させることができる」



「それは本当なの!?」



アリアテーゼは高慢な女から少女の顔になっていた。



「ああ、それは約束しよう」



これは事実だ。そもそもゲームで魔王軍幹部を仲間にするためには、ある条件のもと彼らを討伐しないもならない。



その条件は死霊術士デュアキンスをパーティに入れた状態で倒すことだ。



ウォルフガング戦では偶然ではあるが、デュアキンスがパーティにいた。条件は満たしているはずだ。あとはある儀式を行なえば、ウォルフガングは復活し、仲間に加わる。



その儀式をするのが難易度が高いが、俺はやるつもりだ。ソラリスも含め、最強パーティのためにウォルフガングは欠かせない。



「すぐにというわけには行かないが、必ずウォルフガングにもう一度会わせると約束する」



アリアテーゼの目から無意識に涙が流れる。



「約束しなさい……もし破ったら消し炭にしてあげるわ」



よし、これでアリアテーゼは敵にならない。味方に引き込むことができた。



さあ、もう1人の強敵を相手にしよう。



奴の性格は嫌というほど知っている。アリアテーゼが『魔力暴走』により、無力化した。この好機を奴は絶対に見逃さない。



扉が静かに開き、音もなく、風のような速さで何かが向かってくる。俺はアリアテーゼを庇うように立ちはだかる。



一瞬で無数の斬撃が俺を襲う。しかし、無敵時間であり、一切ダメージを受けない。もし効果が切れていても『剣の極み』により、俺はダメージを受けないが。



軍刀を振り抜いた男は邪悪な笑みで、笑っていた。



「ふはははは、ありがとうございます、レンさん、おかげでアリアを無力化できました、あとは私がやりますよ」



仮面を被るのをやめた賢王プロメテウスは、ドス黒い殺気を放っていた。



「アリア、残念ですが、君はここまでです」



「プロメテウス……貴様はやはり裏切り者だった、妾の読みは正しかった」



「ええ、あなたは勘が良過ぎました、しかし、残念です、今のあなたは無力な赤子同然、勝ち目はありませんよ」



俺は二刀流を構える。



「レンさん、何をしているのですか? 私は約束通り、リンさんを解放しましたよ」



逃げられただけなのに、恩着せがましい。



「俺も勘は鋭くてね、多分、お前、全員生きて帰す気ないだろ?」



「く、くふふふ、くはははは」



プロメテウスを心底楽しそうに笑う。指を鳴らした。



「御明察、全員殺しますよ」












正直まずい状況だ。プロメテウスを倒す準備はある。しかし、それは一対一の場合のみだ。



アリアテーゼや他の仲間を守りながらでは、とても倒せない。



奴の性格を考えると、俺を無視してアリアテーゼを狙う。ならば、その前に無敵時間内に倒し切るしかない。



「リン、ギルバート! アリアテーゼを……」



逃してくれ、そう言いかけた。しかし、俺はその判断が不正解だと気づいた。



この場を全員無事で切り抜ける。その可能性を1%でも上がる選択は別にある。ここで逃げるのは悪手だ。



英雄の思考は最も可能性が高い選択を弾き出す。しかし、それはやはり細い道だ。それでも他に手はない。



「プロメテウス、最後に1つだけ聞かせてくれないか?」



軍刀を抜こうとしていた手が止まる。俺が話しかけてきたのが予想外だったのだろう。



「おしゃべりなどしていて、良いのですか? 恐らく何らかのスキルでダメージを受けない状態を作っているのでしょうが、効果時間があるのでは?」



「どのみちすぐに効果は切れる、俺達に勝ち目はない、だから最後に聞きたいことがある」



俺が勝ちを放棄する発言をする。プロメテウスの性格からして、疑いながらも優越感を持つはずだ。



「ええ、良いでしょう、あなた達を殺すことはいつでもできますからね」



乗ってきた。これがプロメテウスの欠点だ。彼は傲慢であり、自信により油断をする。



「なぜ魔王になろうとする?」



プロメテウスに反応がある。俺がプロメテウスの目的を知っているのが予想外なのだろう。



「力ですよ、権力です、私は常に一番でなければ気がすまない、だから魔王様の代わりに魔王になる」



「この外道め! 恥を知りなさい! 魔王様への恩義を忘れたとは言わせない!」



アリアテーゼが激しい嫌悪を見せる。プロメテウスは無感情に彼女を一瞥した。



「確かに、魔王様には感謝していますし、憧れでもあります、しかし、あの人は封印された、つまり本当の強者ではなかった」



演説をするように両手を広げる。



「私は魔王様を超える力を手に入れたい、そのために私はまずこの城を手に入れる」



「ダンテが黙ってないわよ、あの方が本気になれば、あなたでは止められない」



「確かに、ダンテは全盛期より力が落ちたと言っても私を凌駕しています、しかし、彼は優しすぎる、魔王様を人質に取れば私の操り人形になってくれるでしょう」



「まさか……魔王様の生命維持装置を……」



「ええ、封印により魔王様は常に魔力を失い、衰退を続けています、ロストテクノロジーを利用した装置でその衰退を遅らせていますが、その装置を作ったのは誰だったかお分かりで?」



「信じられない……ここまで腐った奴だったなんて」



「失礼ですね、私はただ自分の目的のために手段を選ばないだけです、ダンテは我が子を人質に取られれば、必ず言うことを聞くでしょう」



俺は会話に一石を投じる。



「そこまでして魔王核が欲しいのか」



反応が今までと違った。余裕などが消え、プロメテウスは驚きを見せていた。



「なぜ……お前が、そのことを知っている?」



プロメテウスの狙いは権力ではない。真の狙いは魔王になることで手に入れることができる魔王核だ。



俺は知っている。ゲーム時代、俺はこのLOLをやり込んだ。隠し設定や細かいストーリー、背景など全てを知っている。



「……本当に君は何者なんですか? 誰も知り得ないことを知っていて、ウォルフガングを倒し、短期間で恐ろしいほど強くなり、アリアを無力化した、不可能なことを次々と成し遂げる」



「俺は英雄だからな、不可能を乗り越えるのが仕事だ」



そろそろ厳しくなってきた。ここはもう少し自分語りをしてもらおう。



「プロメテウス、お前が魔王核を求める理由を教えてくれ」



プロメテウスが俺をしばらく見つめる。そして、にっこりと笑った。



強烈な寒気に襲われる。

















「君、()()()()をしてますね」















気づかれた。俺の目的は時間を稼ぐことだった。



強烈な殺気がプロメテウスから放たれる。もう限界だ。



「リン、ギルバート! アリアテーゼを逃せ!」



緩やかに流れた時が急速に動き出す。全員が一斉に動き出す。



俺は剣を抜き、賢王プロメテウスに向かった。




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