03 目をつけられました…
短めです
学年集会はあまり好きではない。集まるのも面倒、話を聞くのも面倒、あとずっと体操座りをするのが大変。私は五十音順だと一番後ろではないのだが、二列になって人数調整をしているが為に一番後ろに座っている。正直、有り難い。すぐに帰れるし、周りの人を気にしなくてもいい。
「………今年は皆さんにとって勝負の年です。部活はまだ続いていますが、皆さんは受験生です。勉学にきちんと励むように。…では終わります。」
「起立。礼。」
最後の学年主任のお話も終わり、痛くなったお尻をさすりながら立ち上がる。
「では、解散。」
今日はもう帰りのSHも終わっている為、後は帰宅か部活に行くだけになっている。授業初日だったせいか、心なしか生徒達の顔から疲労が見て取れる。私は一応演劇部に所属しているので、九月の文化祭に向けての活動をしに行かなくてはならない。少し心が重い。
「篠ちゃん。」
「……?北野先生。」
「倫政どうだった?」
「………あ。えっと…」
「楽しかった?」
「今日は政経だったので倫理はまだやってないです。」
「そうなんだ〜。先生はどうだった?」
「………不思議な人でした。」
「ふふっ。そうでしょう?私、萩野先生と仲良いから今日の六人の様子聞かせてもらったんだよ。」
「……そうなんですか?」
「御上さん面白そうですねって言ってたよ〜。」
「………え?」
どこでそうなったのかは全くわからないが、というより何故私のことを面白いなんて思ったんだあの人…
「…私、特に何も変なことしてないんですけど…」
「ふふっ。萩野先生にとっては興味の対象になったんだと思うよ〜?よかったじゃん、仲良くなれるかもしれないよ?」
「……いや、そんなすぐに仲良くはなれませんよ。」
「またまた〜。大丈夫だよ。萩野先生は篠ちゃんを傷つけるような人じゃないから。」
「…そうですか。」
「うん。明日も授業あるし、楽しんでおいで。明日は倫理をするって言ってたよ。」
「……楽しみです。」
「ふふっ。じゃあ、また明日。部活頑張ってね。」
「さようなら。」
……出会ったばかりの萩野先生に目をつけられたのは予想外だった。まぁでも、嫌われるよりは良いことだ。
「………さて。部活に行かないと…」
あまり部活に行くのは乗り気ではないが、文化祭の話がある為、行かなければならない。早く話が終わるといいな、なんて思うけど、多分終わらないことが予想される。
「萩野先生。篠ちゃん、明日の倫理楽しみにしてるって言ってましたよ。」
「…そうですか。変な子やな。」
「ふふっ。先生のこと、不思議な人でしたっても言ってました。」
「彼女は何というか…壁が厚そうですね。」
「…まぁ。少し人が苦手なんですよ。」
「きっと御上さんのマスクは風邪ではなくて、外界をシャットアウトしてるんでしょうね。」
「あら。もうわかってたんですか?…私が初めて会った頃からずっとマスクしてましたから…」
「あの長い髪も自分を隠す為なのかもしれないね。……倫理を学んでいく中で少しでも変われるといいなとは思いましたよ。」
「…ふふっ。萩野先生、珍しいですね。……一年間よろしくお願いします。」
「任されました…(笑)」
お立ち寄り下さりありがとうございますm(__)m