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序章
わたしは、自分のことが嫌いだ。どうしようもなく醜い、わたしの姿。鏡を見ると嫌気がさす。周囲の友達の姿が、皆美しく見えて仕方がない。ああいう姿で生まれたらよかったのに、と羨む気持ちでいっぱいだ。
でも、そんなこと誰にも言えない。口に出して言葉にしてしまうと、それが逃れようのない現実であることを再認識しなくてはいけないからだ。だからわたしは自分自身の醜さを、心の中で四六時中反芻する。
喧嘩の絶えなかった両親は、皮肉にもわたしのことを「さくら」と名付けた。春が来れば美しく咲き誇る、あの桜のような人間のようになってほしいという願いをこめて。
桜の花は短命だ。そのような儚さを持つからこそ美しい。でも、わたしはこの気の遠くなるほど長い人生を、この醜い姿で生きていかなければならないのだ。