表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
In the sky  作者: Mischa Forsyth
1/1

私の特等席

この季節になると私は、あの人とよく来た「裏山」と呼ばれる場所で、あの人のことを思い出す。

小麦色に焼けた、健康的な肌。

男らしく広い背中。

骨ばっているけど、長くすらっとした綺麗な指。

そして私を見つめる、焦げ茶色で蠱惑的な瞳。

私は、彼の全てに惹かれ、翻弄された。

彼といるときが、私にとって至高のときで、安らぎのときだった。


初めて彼に会ったのは5年前の秋、病院の屋上だった。

私は風邪を拗らせ、肺炎で長い間入院していた。

幸いそんなに酷くはならず症状はすぐにおさまったが、母親が過保護でなかなか私を退院させたがらなかったのだ。

そんな母親の過保護さにだんだんイライラするようになった私は、母親が帰ると真っ直ぐ屋上に向かうようになった。

屋上から見る景色が、私のつまらない入院生活の唯一の癒しとなっていた。

病院自体が周りより少し高い所に在ったため見晴らしもよく、病院の周りには桜や紅葉などの木が植わっていたので、季節に合わせた自然の美しさを間近に感じることができたのだ。

屋上に来る人は少なくなかったが、広くてベンチも多かったので、私はのんびりと過ごすことができた。


屋上に通い始めて、2週間ほど経った頃だっただろうか。

いつものように、母親が帰ってすぐ、私は屋上に向かった。

いつもと同じように、おじいさんやおばあさん、お母さんと子ども、彼氏と彼女が、定位置に座っている。

いつものように、夕日がベンチを照らし、いつものように私は定位置にー···

座れなかった。

見覚えのない人が私の定位置のベンチに横たわり、寝息を立てていたのだ。

フードを被り、横向きで寝ているため顔は確認できなかったが、どうやら男の子のようだ。

雰囲気からしても、私と同じくらいだろう。

(困ったな、他の席も空いてるけど···)

他の席に座りたくはなかった。ここがお気に入りの、私の特等席だから。

しかし、気持ちよさそうに寝ているのに、起こすのも申し訳ない。

迷った挙げ句、私は病室に帰ることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ