5 召喚の目的、そして……
1~6話書き直し中でございます!
皆が驚いている理由と召喚された2つの理由がわかればなあ。
逃げたくても出口は相手がふさいじまってる。
しかもその先は薄ぼんやりとした光しかない。
相手が敵意を向けてるわけじゃないけど、なにをするにしても不利な状況だ。
俺も今はツッパれてるけど、どこまでできるか。
「王様。1つ質問してもいい?」
グロス王は眉をくい、と上げる。促されてるのかな。
「そもそも、俺はなんでここにいるんだ?」
「ファビオ、何故こうなったのかエリオに教えてやってくれ」
「はい、御意に」
黒ギャルのお姉さんもとい、ファビオが妖艶な笑みを浮かべて前に出てくる。
ファビオのフードから2つのちょこんとした角が飛び出ていた。実際の角じゃないから、そういうデザインなわけか。
それにしても胸がばいんばいんだし、谷間を隠そうともしない(パーカーは胸元まで開いている)。
そしてエナメルのミニスカート。
うん……黒ギャルだけどもしかしたらバンギャも兼任してるかもしれない。っていうかどういう原理が働いてスカートの中が見えないのか不思議。
そしてつるりと伸びたおみ足、適度な肉の付き具合でもの凄く最高の美脚です。
細いのはあんま好きじゃないんだよなあ……。
しかし、なんでこんな派手な人が王様の近くにいるんだろ?
と、俺が思っていると。
「エリオさま? もし貴方がご所望なら、私いつでも貴方のものになりますが?」
いつの間にか耳元で囁かれていた。近い近い!
「うわわわわっ!?」
腕をぶんぶんと振り回す俺。いや、だって良い匂いがするんだもん! これはずっと嗅いでるとなんか……やばいヤツだし!!
ファビオはにこやかに軽く避けて、自らの唇にしどけなく人差し指を持っていく。
「あン、貴方のファビオですけど?」
エロい。
こんな女テレビの中にもいないよ……!
むしろ軽く引くよ。
リリアの匂いは確かに良い匂いだったけど、ファビオの香水は自分の魅力をよく知った上で使ってる。
本能的に危険を感じるなー、この人。
すると、すぱーん! という小気味の良い音が響いた。
見るとリリアがファビオの頭を土突いて、ファビオが前につんのめっている。
ぷすぷすと煙が出ている頭をさするファビオ。
「リリア、痛いんだけど?」
「ファビオさん……非常に不快です」
するとファビオは胸の前に小さく両の拳を置いた。ぶりっ子ポーズかそれ? アイドルがよくやるヤツだよな。
っていうか、リリアを挑発してるよね貴女? メリットあんのそれ。
「えー? リリアちゃん、早速妬いてるのかなぁ?」
リリアが恐い顔になってる。この子短気だわ。
ファビオには話を進めてもらわなければならない。ちょっとリリアには申し訳ないんだけど。
「リリア……さん? すいません、この人の話を聞かせてもらってもいいですか?」
胸を揉んでしまった手前、強く言うのはいかんだろ。ここは紳士にな。
すると、リリアは一瞬目を丸くして、小さく「絶対殺す」と吐き捨てた。
俺に。
もう、ほんっと、あとでマジで心の底から誠心誠意謝ろう。不可抗力だとか、そんなのはどうでもいいんだ。
いまのやり取りを間近で見ていたファビオがにんまりと笑う。
「へぇ、リリアには優しくするのね」
「それはいいから、どういうことなのか聞かせてよ」
ファビオが頭をぽりぽりと掻く。
「いいわ。ざっくり話すと、貴方は私たちが召喚しました」
「うん。それはわかる」
ファビオが首を傾げた。
「あら、物わかりがいいわね」
目を細めた途端に冷たさが出てくる。
王様の威圧感とは違うけど、身体を舐められてるような恐怖感があった。
ファビオはそれまでの不真面目な感じを吹き飛ばして、冷静な雰囲気を身にまとった。本題に入るということだろう。
「じゃあ本題よ。エンフィールドは今深刻なエネルギー不足に悩まされているわ」
エネルギー不足? なんの?
「国を運営するために必要なエネルギーよ。それを魔晶鉱石、サイネウスと呼ぶわ」
「サイネウス……」
「そう、サイネウス。これよ」
するとファビオは腰のホルダーから小指大の宝石をこちらに投げてよこした。
「虹色だ……。すげぇ宝石だな、コレ」
綺麗だ。
けど、多分これはほとんど原石の状態だ。磨くともっと綺麗になる。
昔ネットでアレキサンドライトの画像を見たことがあるけど、それよりさらにたくさんの色を持っている。
そして、くるりと回転させれば様々な色が中で乱反射して、面の1つ1つが様々な色を見せた。
こりゃ、すげぇ。
「色がたくさんあって綺麗だな。これが燃料? あんたたちの国ってスゴいんだな。俺の世界だとこんなの……いくらするんだかわかったもんじゃないぞ」
サイネウスを見た俺の正直な感想だ。
すると、奥で王様が腕を組み替えて、部屋の天井を見上げた。何か調子が悪いんだろうか。
「で、そのサイネウスが採れなくなってしまったわけ」
「採れなくなるとなにか問題があるのか?」
「えっ……わからない? エネルギー不足なのよ?」
俺が沈黙していると、横合いからちまっこいシオワーズ王女が現れた。ちまい。
俺は警戒されたくないので優しく声を出す。
「シオワーズ……えーと王女?」
この子の肩にさっきっから恐い鳥がいるんだよな。
コイツを刺激したくない。
俺をいつ食い殺してやろうか、みたいな雰囲気をずっと出しててさ、耐えられない。
「貴方は私のお兄様なんですから、王女なんて仰らなくていいんですよ」
にこっと全力の笑みをするシオワーズ。かわいい。
けどその……僕の身分はもう確定事項として扱われていくんでしょうかね?
それと、鳥。ガン飛ばすのやめてくださいこわい。
「私の国は今エネルギー不足が深刻だと申し上げましたよね?」
「う、うん」
何故かヤクザににじり寄られているような怖さを感じる。
全て鳥、お前が悪いんだ。
さっきは気付かなかったけど、今はお前の視線をヒシヒシとこの身に受けているぞ。
「さきほどファビオも申し上げました通り、この国はサイネウスで大体のエネルギーを賄っています。あとで実際お見せしますが、魔力船や信号、自動ドアなど都市のインフラなどはそれで全部動かしているんです。で、そのエネルギーが不足したために、私たちはそれを取りに行かなければならないんです。わかりますよね?」
わかるわかる。めっちゃわかる。この子イイ子や。
うん。
っていうかね。
魔力船はいいよね。ファンタジーだよね。
でもシンゴウってなに?
ジドウドアってなに?
「例えばこのトーキョースカイツリーですが」
んっ!?
……んん?
ちょっと待ってね。なんて言ったの?
東京……スカイツリーだって!?
何かが俺の中を通り抜けたように、鳥肌がざあっと立っていった。
理由はわからない。
王女の肩をがっとつかむ。リリアが反応しそうなもんだが、動かない。
まぁそんなことはいま、どうでもいい。
「王女……すまない、もう一度今の確認してもいいか? 東京スカイツリーって言ったんだよな?」
俺の突然の興奮状態をさもありなん、という感じでシオワーズ王女は受け止める。そして1人で頷いた。
「やはり、そうなんですね……」
王を含めた周囲の3人も1つ息を呑む。
鳥はというと俺の腕を突っつき始めた。痛い。痛いけど痛くない!
そしてシオワーズ王女は先ほどグロス王から渡されたスマホを俺に見せてくれた。
「これ、読めますか?」
俺の中に突如緊張が訪れる。そこに書いてあったのは……。