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Reverse Card -リバース・カード-  作者: 火鈴あかり
Episode 01 - 暴虐のオウガ
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【 序章 】 当たり前の日常、始まる世界。

 朝の日差しが差し込む静かな部屋。

 少年はいつものように、学校に登校する準備を整える。


 学生服を身に纏い、身だしなみを鏡でチェックする。白い髪に紅い瞳を携えた、あどけなさの残る少年。


 ――うん、問題ないみたいだ。


 自分の姿を見て、そうひとつ頷いた少年は、カバンを手に、部屋から飛び出していった。

 なんら変わりない、普通の高校生の日常。――ただ、ひとつ。


「……そうだそうだ、忘れものっと」


 部屋から飛び出していった白髪の少年は、再び部屋に帰ってくると、その机に歩み寄る。

 様々な“カード”が散乱する机。そこから、ひとつのカードケースを手に取る。


「あったあった。これを忘れちゃダメだよね」


 自分だけの“デッキ”を手に、再び部屋から飛び出していった少年。


 ――ただひとつ、彼だけのことがあるとするならば。

 カードゲームが好きなだけの、普通の高校生。……ということだろうか。


 足音を響かせ、二階から一階へ降りると、誰もいないリビングを抜けて、玄関に。正確には、居住スペースを抜けて、店内の方に顔を出す。


『――それでは、ついに目の前まで差し迫った先行テストプレイに備え、“Reverse”の注目すべきポイントをおさらいしましょう!』


 やけに明るい声、テレビのアナウンサーの声だ。店内に響き渡る声を無視して、少年はカウンターに座る人物に声を掛ける。


「……姉さん?」

「ん。ああ、マモルか」


 ふと掛けられた声に画面を消して、彼女はその顔をこちらに向ける。


 紺色のショートヘアーに、凛々しさを感じさせる藍色の瞳。紺と白のワンピースに身を包み、その上に『カードショップ えちご屋』と書かれたエプロンを着けた女性。その大人びた雰囲気を考慮しても、高校生程度にしか見えない彼女は――岸道シズク。


 このカードショップ、えちご屋の店長であり、白髪の少年――岸道マモルの姉だ。

 出る際の挨拶にやってきたマモルは、首を傾げ、その黒い画面を覗き込む。


「姉さん、なに見てたの?」

「ああ、ただのニュース番組だよ」


 そっけなく笑って答えた姉に、「そっか」と声を漏らす。

 改めてカバンを背負いなおすと、店の扉の方に向かって歩き出す。


「それじゃ、いってきまーす!」

「ああ、気をつけてな」


 カランカランと音を鳴らし、元気に飛び出していったマモルを見送るシズク。


 いつもと何も変わらない、平穏な日常。

 マモルが確かに立ち去ったことを確認したシズクは、再びテレビの画面をつける。


『――完全没入型!? ゲームの世界実際に入り込む“リアルダイブ”技術は、空想科学として、物語の題材とされることはたびたびありましたが、そんな夢の技術がいま! 現実のものとなろうとしているんですよぉ! 歴史に残るゲーム間違いなしですっ!』

『――でも、ジャンルは“カードアクションバトル”……どんなゲームなんでしょうか?』

『――気になりますよね! いままでの常識を覆す、とは言われてますが、一体どんなゲームなのでしょうね? それでは、まずは公開されているムービーをチェックしてみましょう!』


 そんな賑やかな画面を眺め、ぽつりと声を漏らす。


「…………完全没入型ゲーム……“Reverse”……か……」


 世間どころか、世界中を賑わす、革命的なビッグタイトル。

 しかし、そんな楽しげな画面の中と違い、カウンターの席に座るシズクの表情は暗い。


「…………それがただの“遊びゲーム”なら、よかったのだがな……」


 それはまるで、この平穏な日常が壊れることを、危惧しているかのようで――。


 視点は変わり、白髪紅眼の無垢な少年は、というと。

 元気に商店街を駆け抜け、いつものように学校へと向かっていた。


 これから巻き起こる出来事を、まだ何も知らないまま――。



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