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四話

騒がしいとまではいかずとも、和やかな雰囲気だった道中がアクアマリンの双子が合流したことで、一気に重くなる。

アリエはトウィンカの服の裾を握ったまま硬い表情で歩いているし、アクアマリンの双子とはいえばサフィアはアリエの行動を終始気にしており、ツウィズは心配そうに見守っている。


(なに、この変な状況……)


気まずい状況に場を和ませようとしても、会話の全てをぶちっとアリエやアクアマリンの双子に切られてしまい、どうすることもできなかった。ひきつった笑みでサランとレインに助けを求めるも、苦笑で返されてしまう。

二人にもどうにもすることができないらしい。


(なんてこった……!)


頼りの綱にばっさりと断られ、がくりと肩を落とす。こうなったら、早くアリエの家に着くことを願うしかない。

トウィンカの願いが届いたのか、元々アリエの家までの道のりがあと少しということもあってか、野原を歩き続けること数十分でようやく重たい空気から解放された。

野原を抜けると木で囲まれた塀で囲まれた村が見えてきた。塀がない唯一の場所から入り、アリエについていく。村の人たちはアリエが帰ってきたことに喜びながらも、煌びやかな服をまとっているトウィンカを見て訝しげな視線を送ってきた。しかしアクアマリンの双子にそのまま目を映すとなぜか納得したように、通常の仕事へと戻っていく。アクアマリンの双子と同じ軍服を着ているサランたちは、アクアマリンの双子と同じ仕事と仲間と思われているのか訝しげな視線を集めることはなかった。最も容姿が二人とも優れているため、年若い女性からの熱い視線は投げかけられていたのだが。それにしてもアクアマリンの双子を見たときの反応の訳がわからず、首を傾げてサランたちに尋ねるが、サランたちにもこの行動はよくわからないらしい。首を横に振られてしまった。

アリエは村人の不思議な行動に気づいていないのか、気にせず歩いていってしまう。トウィンカは服の裾をアリエに掴まれているため、そのままアリエについていくことになった。そしてアリエ歩くこと数分、村の中でも比較的大きな家の前で立ち止まった。


「ここがアリエの家?」


「ええ、そうよ」


一応返事をしてくれるが、声色は硬い。原因は分かっているのだが、こればかりはどうしようもない。トウィンカにできることはといえば、せいぜいアリエと一緒にいてあげることくらいだ。トウィンカは服の裾を掴んだままのアリエの手を、上から自分の手を重ねて包み込む。アリエの手は小刻みに震えていた。自分の妹に怪我を負わせた張本人と合わせるのが怖いのだ。


「大丈夫だよ、アリエ」


励ますように声をかけると、強張っていた体が少しだけほどけ、困ったような笑みを浮かべていた。


「ごめんね、ウィン」


「謝ることなんてないよ」


アリエは深呼吸を一つして、玄関の戸を開けた。

戸を開けて、最初に迎え入れてくれたのはアリエの両親だった。二人ともアリエの両親なだけあってアリエと雰囲気がよく似ている。アリエの両親はアリエの帰りを喜び、満面の笑みになる。そしてトウィンカやサラン、レインたちに目を向け、頭を下げた。


「この度は、遠路はるばるようこそおいでくださいました。本当にありがとうございます」


トウィンカたちのことはアリエが先に手紙で連絡しておいたのだろう。


「顔を上げてください。私はアリエの友人として、妹さんを治してあげたかったからきただけなんです。頭を下げらるようなこと、はなにもしていません」


まさか頭を下げられるとは思っていなかったトウィンカは、慌てて頭を上げさせる。アリエの両親はでも、と渋っていたが、サランとレインの説得によりどうにか頭をあげてくれた。その際トウィンカたちの後ろにアクアマリンの双子がいることに気づき、目を細めて彼女らに笑いかける。


「あら、あなたたちもきてくれていたのね。いつもありがとう」


アリエの母の言葉に、アクアマリンの双子とアリエの父以外の全員が、目を見開けて驚く。どうやらアクアマリンの双子がとアリエの両親は知り合いだったらしい。誰よりも立ち直りが早かったサランが、皆が思っていた疑問を口にする。


「アクアマリンの双子とお知り合いなのですか?」


「ええ、週に一度はお見舞いに来て下さっているので」


アリエの方を見るが、初耳だったようで表情を驚きのまま固まっている。

そこでトウィンカたちはようやく村人たちの行動に納得した。

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