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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

死んでもタダでは起きない! 強欲ブローカーと霊界ヒロインの異世界土地転がし

作者: ちいもふ
掲載日:2026/07/25

「――退去期限は昨日の日付で過ぎているんだよ、おばあさん。

ボロアパートの取り壊しに、これ以上の遅延は認められないね」


 都内の再開発エリア。


 弱肉強食の不動産界を渡り歩き、数々の「厄介な土地」を合法すれすれの力技で丸裸にしてきた、冷酷非情な不動産王・鬼瓦鉄男おがわてつおは、冷徹な目を向け言い放った。


 目の前では、長年その地に住み続け、最後の一坪まで抵抗を続けていた老女が悔し涙を浮かべて震えていた。


「思い出? そんなものに地価の価値はない。

金を生むのは『更地』だ。さっさと出ていってもらおうか」


 鉄男が契約書を叩きつけたその瞬間、蛍光灯が激しく点滅を始めた。


「――おも、いで、を……更地に、するな……ッ!」


 空気が凍てつくような冷気に包まれ、部屋の隅からドス黒い怨念おんねんの塊がい出してきた。


 かつてこのアパートで孤独死し、土地に縛り付けられていた地縛霊・サチコだった。


「なっ、なんだ……!?」


「私のつい棲家すみかを……ぶっ壊す奴は……許さなああああっ!」


 怨嗟えんさの叫びと共に、サチコの冷たい霊気が鉄男の心臓をわしづかみにした。


 激痛のなか、鉄男の意識はプツリと途切れ、強欲な不動産王の命日が呆気なく訪れたのだった。



「――おい、起きろ。

いつまで寝てるんだ、悪徳ブローカー」


 頭蓋骨ずがいこつを直接揺さぶるような冷たい声に跳ね起きると、そこはボロボロの木造天井が見えるほこりっぽい部屋。


 豪華なベッドではなく、わらの敷かれた硬い床の上だった。


「ここは……どこだ?」


「どこって、見てわからないのかい?

私たちが連れてこられたのは、どうやら別の世界らしいよ。

まったく、お前を呪い殺してやったはいいが、なぜか私の魂まで引きずり込まちまったじゃないか」


 声の主である半透明のドレスをまとったサチコが、宙に浮いたまま腕組みをして鼻を鳴らした。


 二人の脳裏に、突如として神を名乗るものの声が響いた。



『――転生者よ。

我が世界で、魔物に荒らされた辺境の領地を与えよう。

さあ、新たな人生を謳歌おうかするがいい!』



 外の様子を確かめるため、鉄男がボロボロの屋敷の窓から外をのぞき込むと、瘴気しょうきが立ち込め、ゴブリンや凶暴な魔獣が我が物顔で闊歩かっぽする『魔境の荒れ地』が広がっていた。


「ひゃあ、見事な廃墟だねぇ。日当たり最悪、治安最悪、地盤はゆるゆる。

お前のこれまでの悪行への報いとしては、これ以上ない極上の墓場じゃないか」


 サチコがケラケラと意地悪く笑う絶望的な状況のなか、鉄男の唇にはいつもの不敵な笑みが浮かんでいた。


「……ふん。笑わせるな」


「あん?」


「どんなゴミ物件だろうと、要は『仕込み方』次第だ。

インフラを通して、害虫まものを追い出し、ブランド価値を叩き込めば、クソ荒れ地を一等地にしてやれる」


 鉄男は拳を握りしめ、パキリと指を鳴らした。


「見てろよ。俺はこの世界でも、土地を奪い、開発し、ガッポガッポと儲けてやる。

お前もただの地縛霊で終わる気か?

今日からお前は、不動産事業の『共同経営者』だ」


「はぁ? 

誰がそんな悪徳ビジネスに付き合うか……っ!」


「おい、文句を言うな。

地代の代わりに、あの世への片道切符をもっと快適にしてやってもいいんだぞ?」


「っ、このド畜生め……!

でも、まあ……退屈しのぎにはなりそうかねぇ」


 怨念と強欲が入り交じる最悪にして最強のコンビ。


 不動産王による異世界開拓の第一歩が、こうして幕を開けた。



 翌日、鉄男とサチコは領地の一角にある、魔物の幽霊が出ると噂の廃墟の前に立っていた。


 中からはオークたちの下品な笑い声が響いている。


「さて、サチコ。最初の『立ち退き交渉』の時間だ。

相手は野蛮なオークの群れだが……頼んだぞ」


「まったく……。

生前も死後も、お前の都合に振り回されるなんて因果なもんだねぇ」


 ボヤきつつも、サチコは冷ややかな笑みを浮かべた。


 次の瞬間、サチコの半透明の体がドス黒い瘴気しょうきに包まれ、周囲の温度が真冬のように急降下した。


「――お前たちの『不法占拠』は、昨日付けで期限切れだよ」


 サチコの声が空間を揺らす地鳴りのように響き渡り、窓ガラスが内側から粉々に砕け散り、椅子やテーブルが宙を舞った。


 壁一面にドス黒い染みが浮かび上がり、床から無数の冷たい腕が伸びてくる。


『グオッ!?』


 極上の恐怖に当てられ、十数頭のオークたちは泡を吹いて、一目散に駆け出していった。


「立ち退き完了、っと」


 鉄男はほこりを払い、悠然と敷地に足を踏み入れた。


 霊力を消耗した様子で、サチコが漂いながらついてくる。


「ふう……疲れたねぇ。

まさか私が、モンスターの立ち退き代行までさせられるとはね」


「ご苦労だったな。

ほら、見てみろ、広大な敷地を」


 鉄男は荒れ果てた土地を見渡し、満足げに目を細めた。


 こうして地縛霊と悪徳不動産王による、異世界でのエグい土地転がしの第一歩が踏み出されたのだった。

 お読みいただきありがとうございます!


 強欲すぎる不動産王と、不憫な元・地縛霊による異世界土地転がし、いかがでしたでしょうか。


 生前も死後も休まる暇のないサチコと、どんな絶望的状況でも「仕込み方次第だ」と言い放つ鉄男のコンビ。


 クソ物件を更地にし、モンスターを恐怖で追い出し、果てはタワマンを建てる――。


 商売人の執念と霊界のパワーがあれば、異世界開拓なんてチョロい……かもしれません?


 気に入っていただけましたら、ぜひブックマークや評価、感想などをお聞かせいただけると励みになります!


 次の「悪質な不法侵入者カモ」は誰になるのか……?


 またお会いできれば幸いです!

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