第93話『零の記憶』
静寂。
戦いの跡が残る“宇宙神殿”には、もう音ひとつ残っていなかった。
無数の星屑が降り注ぎ、砕け散った瓦礫さえも光に還る。
カイルとイルは、その中心で立ち尽くしていた。
1.記憶
息をするたび、肺が焼ける。
それでも、二人の瞳は確かに――「終わり」を見届けていた。
タルタロスの身体は、ゆっくりと光の粒へと変わっていく。
だがその瞳だけは、まだ意識を保っていた。
タルタロス:「.......これが......創造の力......か.........。零では抗えぬ.....真の秩序......」
イル:「違うよ。秩序なんかじゃない.......。私たちは、ただ“生きる”ために創ってるだけだ。」
カイル:「タルタロス。お前......本当は何を望んでた?」
少しの沈黙。
光の粒が揺れながら、タルタロスの口元がかすかに動く。
タルタロス:「.......“理解”だ。破壊とは何か、創造とは何か......。だが.......我らは.......上位の命に従うだけだった。」
カイル:「上位.........?それって、“テンペスト”か?」
タルタロスの瞳に、ほんの一瞬、驚きが浮かぶ。
そして、ゆっくりと頷いた。
タルタロス:「.......神創成組織。我らはその“破壊神幹部”に連なる.......“神 DNA具現体”。」
イル:「具現体.......?お前ら、本体じゃないのか?」
タルタロス:「違う。我らは“神の意志”を宿した、造られた器だ。..........創造神ブラフマーの力 を“複写”し、破壊に転用された存在。」
カイル:「........コピー、か。」
タルタロス:「テンペストの目的は、“神の再統一”。創造、維持、破壊、守護――四柱の神を 一つに戻し、“完全な神”を創ること........そのために、お前たちのような“神融合者”が、最も 危険視されている。」
イル:「つまり.........私たちは、テンペストの敵ってことか。」
タルタロス:「いや..........違う。お前たちは“可能性”そのものだ。破壊でも創造でもない......“ 選択の存在”。」
カイル:「選択、ね........。」
タルタロスの身体が限界を迎え、光の欠片となって崩れ始めた。
2.和解
その中で、彼は最後の力を振り絞り、掌を差し出した。
タルタロス:「我が力――**零の記憶**を授けよう。それは、神すらも知らぬ “始まりの記録”.......。いずれ、その意味を知る時が来る。」
カイル:「........受け取るよ。お前の想い、無駄にしない。」
タルタロスはわずかに笑い、静かに瞳を閉じた。
タルタロス:「......“次に生まれる時”は......創る側として.......会おう........」
光が、弾けた。
それはまるで、星が一つ生まれる瞬間のように――眩しく、美しかった。
イル:「.......カイル。」
カイル:「ああ。終わった......な。」
二人の掌には、小さな光の欠片が残っていた。
それが、“零の記憶”だった。
ふと、宇宙神殿の奥から風が吹いた。
誰かの声のような、祈りのような音が響く。
《――“選べ。創るのか、壊すのか。それとも、繋ぐのか。”》
カイル:「......どっちでもねぇよ。俺たちは、“生きる”だけだ。」
静寂が訪れた。
やがて、二人は立ち上がり、外の光へと歩き出した。
その背中に、タルタロスの残響が優しく重なる。
《ありがとう......“創造者”たちよ........。》
次回――
仲間たちとの合流。
そして――!!




