第32話『世界の地図を受け取る日』
1. セレスティア・センター到着
馬車は城壁のような門をくぐり抜けた。
そこには“石と光でできた塔”がそびえる――
DSO本部、セレスティア・センター。
――蒼く輝くドーム、天蓋に映る星図。
中庭で出迎えたのは、落ち着いた黒衣のブリーフィ ング官(女性)と、数名の制服を着た研究者たちだった。
ブリーフィング官:「カイル・アストレイア。君たち、よく来てくれた。ここが我々の前線だ。まずは旗の下へ――説明を始める。」
カイルたちは長い会議室へ案内される。
広間の中心には巨大な空中ホログラムが浮かび 上がっていた――
世界地図、その周囲に微細な紋章や光点が踊っている。
2. DSOの目的と組織図
ブリーフィング官が指を動かすたび、地図上の各点に説明が表示される。
ブリーフィング官:「我々は DSO(異星保護組織)。この“異星”の均衡を守る組織だ。目的 は単純.....異星の安定と、そこに生きる人々の安全確保。」
画面に二つの大きな円が現れる──左が DSO(異世界側)、右が ERO(地球側)。
その間 に黒い矢印が何本も引かれている。
ブリーフィング官:「この間、君たちが戦った“魔獣群”は、ERO側の“実験兵器”である可能性が高い。EROは地球を“修復”するために異界資源へ手を伸ばしている。彼らは『錬金 DNA』を中心に組織化され、機械と生命を混ぜた実験を進めているのだ。」
画面に組織の階層図が映し出される。
カイルの目には、さっき学園で見た「No.8」「No.9」 の刻印が重なる。
3. 世界と“DNA”の概観
ブリーフィング官は紋章を一つずつ指して説明を続ける。
◎世界の核 — DNA
・この世界の“力”はすべてDNAに由来する。火・水・土・風・雷……精霊系のDNAと、影・時間・魔王などの悪魔系DNAが存在する。
・DNAは『具現化』する。つまり精霊や悪魔として外界に姿を現し、宿主と“契約”して力を貸 す。
・代償は必ずある。体力・寿命の消耗、精神の摩耗、暴走の危険。複数DNAを使えば代償 は指数的に増す。
◎誰が何を治めるのか
各DNAには「精王」「悪王」と呼ばれる支配者がいる。
彼らはDNAの秩序を作り、場合に よっては人間の運命に介入する。
・さらに、表には出ない「神DNA」を持った者たちが、時として世界の均衡を暗躍で動かす。 彼らは――我々の言葉では“裏の黒幕”だ。
ブリーフィング官:「この世界の分布は大きく2勢力に分かれる。異星側(DSO管轄)と地球側(ERO管轄)。表向きは“平衡”だが、実際は激しい緊張状態にある。」
4. ERO(地球修復組織)の正体
ブリーフィング官の言葉が、ぐっと重くなる。
ブリーフィング官:「ERO――地球修復組織。目的は地球の“再構築”と“元の世界に戻す”ことを掲げるが、手段は過激だ。錬金DNAの力を利用し、生命改変、兵器化、異界資源の強奪を行う。彼らは国家連合を背景に持ち、技術と軍事力を併せ持つ。」
ホログラムに各“州代表”が表示される
・アジア州:ロシア(軍+経済)
・ヨーロッパ州:ドイツ(経済)
・アフリカ州:ナイジェリア(経済)
・オセアニア州:オーストラリア(軍)
・北アメリカ州:アメリカ(軍+経済)
・南アメリカ州:ブラジル(軍)
・日本:単独で強力。錬金技術の拠点。
ブリーフィング官:「EROは“錬金DNA”を軸に組織化される。錬金DNAは“物質変換・合成” を得意とする。彼らはそれで生物ブロック(実験体)を作り、No.ナンバーで管理している。 No. は“実験番号”。君たちが倒したのはその一部だ。」
5. DSO(異世界側)の構成
ブリーフィング官が画面をスライドする。異世界側の地図に変わる。
ブリーフィング官:「我々DSOは複数の国で構成される連合だ。拠点は各国の軍・経済力を 活かし、DNA保持者たちを調整している。」
表示:
・カザトロフ国(経済)
・サリデク国(軍)
・コマディク国(軍)
・西ショウレグ国(経済)
・東ショウレグ国(軍)
ブリーフィング官:「各国は独自の得意分野を持ち、DSOの中で役割を分担している。君た ちの配属先は、我々の混血児特務班(仮称)。混血児は希少かつ危険だが、使い方次第で この世界の均衡を保つ“鍵”にもなり得る。」
6. コーデックスの“空白”と混血児の意味
カイルの手にある小さな板が映し出される。画面は各自のページを拡大表 示する。
ブリーフィング官:「入学時に触れた“契約の書”。あれは“魂の履歴”かつ“使 用可能な技の索引”だ。普通は儀式で確定した技群が記され、生涯分の“枠”が割り当てられる。」
ブリーフィング官はカイルのページへ指を向ける――白い余白が多く映る。
ブリーフィング官:「だが、空白がある者は――特殊だ。空白は“未確定の潜在力”。それは 後天的に埋まることもあるし、外部からの継承で埋まることもある。君のような混血児は、 複数DNAを“覚醒・継承”する可能性を孕んでいる。」
ラミエル:「つまり、あの空欄は“未来の技”?」
ブリーフィング官:「そうだ。ただし、それが“祝福”か“呪い”かは使い方次第。複数DNAが同時に暴走すれば、本人どころか周囲まで壊れる。」
ブリーフィング官:「あとは.....コーデックスを、解放しなくても、戦える。ただの記録書と思え。」
7. 転生の話
ブリーフィング官が問いかける。カイルの額に汗がにじむ。
ブリーフィング官:「転生──“前の世界”という言葉が出たが、我々は転生現象を完全に解明しているわけではない。ただ、確かな記録がある。約五百数十年前、“異端の存在”が地 球へ流れ着き、その系譜が断続的に影響を残している。」
ブリーフィング官:「それは個人的な因縁にも関わる。だが今は、目の前の脅威を止めることが急務だ。詳細は、段階的に君たちに開示する。」
ここでカイルの胸に“543年”の声がかすかに蘇る。
《託す.....543年後....必ず...》
だがブリーフィングは次へ進む。
8. EROの手法とNo.ナンバーの意味
科学者が立ち上がり、実験体の断面図を示す。
科学者:「EROは錬金を“兵器化”する。生体素材と機構を合成し、戦闘用の魔獣を作る。ナ ンバープレートは識別と制御用のタグだ。彼らは“量産”を目指している。もし計画が進め ば、数の暴力で異界を圧迫してくるだろう。」
エリック:「つまり、俺らは標的であり、また抑止の存在ってことか。」
ブリーフィング官:「その通り。だから混血児班の編成だ。だが注意してほしい――EROは “単独の敵”ではない。国家レベル、産業レベルで動く複合体だ。」
9. 技術的・戦術的要点(実践講義)
ブリーフィング官は戦術的なポイントを示す。ここは実戦的な“コツ”。
・連携の重要性:複数DNAの相性を見ること。水+風=制御、火+雷=爆発的威力、など 相性を活かす。
・代償管理:同化や高強度技を使う際は回復・代償対策が必須。DSOは医療班・精霊調整 班を用意している。
・情報戦:EROは隠密工作と偽旗攻撃を行う。惑わされないこと。
・救援ライン:DSOは緊急撤退ルートと支援部隊を用意。だがそれは万能ではない。 カイルは深く頷く。ラミエルは両手を握りしめ、エリックは肩で息をついた。ナイルは冷たい 目を伏せる。
10. イルのこと
説明の最後に、ブリーフィング官が一枚のスクリーンを示す。
そこに“観測ログ”が残ってい た――夜中の学園で銀髪の少女が短時間活動した痕跡だ。
ブリーフィング官:「昨夜、不明個体の観測があった。錬金の痕跡を持つが、同時に“保護者的行動”が確認される。名義上はERO領外の個体だが、正体は未だ不明。引き続き監視している。」
カイルの瞳が揺れる。
画面の少女のシルエットは、どことなく自分に似ていた――
ぬぐえない懐かしさが胸をつく。
11. まとめと配属宣言
ブリーフィング官は最後に、落ち着いた声で言い渡す。
ブリーフィング官:「ここまでが“今、我々が知っている世界”の輪郭だ。EROは地球の“復権” を掲げつつも、手段が穏やかではない。DSOはそれを止めるため、必要な人材を集める。 君たち四人――カイル・ラミエル・エリック・ナイルは、我々の“混血児特務班”に暫定で配属 する。訓練と任務の両面で、すぐに前線へ出ることになるだろう。」
四人には制服の小さなバッジが渡される――
蒼銀の星盾の紋が光る。
新しい章の始まりを告げる、重いが誇らしい重さだ。
12. カイルの独白
カイルは夜、窓辺に立ち、セレスティアの灯を見下ろす。
彼の胸には多くの知識と、さらに増えた問いが渦巻いていた。
カイル:《世界は広い。俺が知らなかったものがたくさんある。でも今はわかった。守るべきものがある。俺は……俺のやり方で、この世界を守る。》
首飾りをぎゅっと握り締め、彼は自分の拳の中に未来を固めた。
次回――
DSOでの初訓練と上層部の影。
訓練の合間に、カイルは“前世の父”の古い記録に触れ、さらに謎は深まる――。




