第103話『封印された真実』
コマディク国・中央都市――冒険者ギルド《キング》。
昼を過ぎた広場は、雨上がりの陽光が差し込み、
石畳に反射した光が淡く揺れていた。
1.ギルドへ
重たい扉を押し開け、カイルたちは中へ入った。
ギルド中はざわめきに包まれている。
壁に貼られた報告書には、
“七大悪魔”の文字が並んでいた。
イル:「......まるで戦争前の空気だね。」
ナイル:「もうすぐだな、“本番”が。」
カイルは無言で頷く。
目の奥に宿るのは、静かな決意と、痛み。
カウンターに座るギルドマスター・ドレイクが、 深く溜息をついた。
ドレイク:「......報告は聞いた。“傲慢の天使”との戦闘で、お前が傷を負ったってな。」
カイル:「ああ。でも、まだ終わっちゃいない。奴は.....俺の師匠だ。」
ギルド内の空気が、一瞬、張り詰める。
ドレイクは黙って目を閉じ、言葉を選ぶように呟いた。
ドレイク:「.....そうか。なら、お前に話すべき人がいる。」
ドレイクの背後の階段を、 小柄な女性がゆっくりと降りてきた。
金髪のショート。
深い群青色の瞳。
腕には、古びた雷の紋章の腕輪。
彼女は静かに微笑み、
???:「....あなたが、カイルね。」
エリック:「あんたは?」
ドレイク:「紹介しよう。彼女はリール・モノスト。エリナ・ヴァルステインの...旧友だ。」
カイル:「.........!!」
心臓が跳ねた。
あの名を聞いた瞬間、焼け焦げた記憶が脳裏に蘇る。
2.旧友の話
リールはゆっくりとカイルに近づき、
手に持っていた古いノートを机に置いた。
リール:「.......エリナの記録。彼女が、私にだけ残したもの。」
ページを開くと、細かい筆記と共に、雷の式陣、そして呪文詠唱。
けれど途中で、インクが滲み、文字が乱れている。
リール:「ねぇ、カイル。あなた、知ってる?――“スピリット・サンダー”って、本来、聖属性の中でも最高位の精霊適合体質なのよ。」
カイル:「.......知ってる。」
リール:「でもね、エリナは違った。あの子は、その力に“選ばれなかった”最初のスピリット 適合者。雷の精霊が拒んだ唯一の人間だった。」
ラミエル:「拒んだ......?」
リール:「うん。精霊は純粋な心を好む。でも、彼女の中には“怒り”があった。認められない こと、蔑まれること.......それが積もって、力が暴走した。」
ページをめくる。
そこには、焦げ跡のような跡が残る。
リール:「あの子はずっと言ってたの。“力が欲しい”って。」
カイルは唇を噛みしめた。
リール:「......そして、ある日。雷鳴と共に、一人の存在が現れた。“ルシファー”......堕天し た最初の大天使。」
空気が震えた。
エミリア:「だ.......大天使.......」
ドレイクが思わず拳を握る。
リール:「ルシファーは、言ったの。“命を断つくらいなら、私と契約しようって。お前の悲しみ を、世界への怒りに変えてやる”って。」
イル:「......そうやって、傲慢DNAを植え付けたの?」
リール:「ええ。彼女はその契約を結んだ。でも、最後まで自分を保とうとした。ルシファーの 声が頭の中に響いても―― “カイルにだけは手を出すな”って、何度も......。」
カイル:「.......!」
息を呑む。
拳が震えた。
カイル:《......俺なんかのために......。》
リールは小さく笑った。
リール:「“優しい嘘つき”。それが、あの子のあだ名だった。本当は、誰よりも誰かを守りた がってた。誰かに、認めてほしかった。」
静かにノートを閉じるリール。
リール:「......カイル。彼女はまだ、完全には堕ちてない。 “誰かの声”を待ってる。私じゃ届かない。けど........あなたなら。」
カイルはゆっくりと立ち上がる。
3.覚悟
拳を握り、瞳に光を宿す。
カイル:「......行くよ。今度こそ、奪われたものを取り戻す。」
リール:「........ありがとう。カイル。」
その瞬間、
ギルドの天井から、雷光が一筋――落ちた。
壁に焼き付いたのは、“六翼”の紋章。
ルシファーの封印が、完全に解かれた合図だった。
ドレイク:「........来やがったか。」
カイル:「次は、俺の番だ。」
――嵐が再び、動き出す。
次回――
リールの言葉を胸に、
カイルは再び“七大ダンジョン”へ――。




