二〇〇文字小説『夜桜奇譚』
四月も半ばになると寒さも緩んで、その空気が夜桜を包み、辺り月影なくして代わりに赤き障子紙の提灯が洞から下がり、風吹けば朦朧たる光を淫靡に揺らす。枝振りてんでばらばらにして手入れされている様子こそないが、毎年四月ともなれば狂い咲き、苦悶充ち満ちる捻れ枝からはらはら舞う様は此岸の物と思えぬ。故にこの桜死期を悟ると云うが諸兄は首肯されざるや否や。提灯の明かりがふっと消え、目の内に墨画の桜が写り、消えた。
四月も半ばになると寒さも緩んで、その空気が夜桜を包み、辺り月影なくして代わりに赤き障子紙の提灯が洞から下がり、風吹けば朦朧たる光を淫靡に揺らす。枝振りてんでばらばらにして手入れされている様子こそないが、毎年四月ともなれば狂い咲き、苦悶充ち満ちる捻れ枝からはらはら舞う様は此岸の物と思えぬ。故にこの桜死期を悟ると云うが諸兄は首肯されざるや否や。提灯の明かりがふっと消え、目の内に墨画の桜が写り、消えた。
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