第1話
神崎美羽__________。
鳳凰高等学校 普通科 2年B組のピッチピチの女子高生。
そんな彼女は今悩まされていた・・・。
彼女の目の前には進路希望調査と書かれた紙。
「進路調査ぁ~~~~??なぁ~~んでこんなの書かなきゃならないのさぁ~~。」
「美羽は決まってないの?」
高校の教室の中、放課後残って友人と一緒に進路調査という1枚の紙と睨めっこ中である。
美羽も高校2年になり、そろそろ進路を決めなければならない頃になったのだろう。
「全然決まってないよぉ~~。」
シャーペンを手でまわしながら美羽は紙をじっとみる。
美羽の通う鳳凰高校は7割以上の生徒が進学する進学校であり、ほとんどの人間が大学へと進む。
2年の進路希望調査ということで、大体の生徒はある程度なんとなく行きたい学校を書いて提出しており美羽とその友人以外教室には残っていない。
美羽もほかの生徒と同じように大学進学ということで書けばいいのだが、そうはいかなかった。
彼女には両親がおらず、現在は母方の叔母の家族と一緒に暮らしているのだ。
「まぁ・・・たぶん就職なんだろうけどさ・・・。」
「そっか・・。・・・・でも、美羽はそれでいいの??」
「まぁね。仕方ないし・・。」
そう答えながら美羽は進路希望調査の紙に就職という文字を書き込んでいく。
「美羽・・・。やりたいことが見つかったら叔母さんに言うんだよ。大学もいきたかったら自分の意思を伝えなきゃだめなんだからね。」
「そうね。やりたいことが見つかったらね・・。」
「絶対よ!!」
力のこもった友人のことばに美羽はおされながら返事をした。
「それじゃ、私これから部活があるから先に行くね。じゃあね美羽!!」
「ばいばい」
手を振りながら部活に急いで行く友人を見送る。
友人が見えなくなった所で、椅子にもたれ掛かり、ずるずるとずり落ちながら一息をつく。
「はぁ~~~。やりたいことねぇ・・・。」
自分がやりたいことは一体何なのであろう・・。
自分が通う高校は進学校であるが、だからといって周りの人のように大学に進学したいとまでは思わない。そして、現在お世話になっている叔母の家族に迷惑をこれ以上かけないためにも就職という道を選ぶのが妥当なのだが・・・・・その就職においてでさえもどの企業がいいのかも全くわからない。
自分がやりたいことさえもわからずにそのままずるずる生きている自分でいいのだろうか・・・。
そんな自分が嫌になってくる美羽であった。
あれこれ考えているうちに外はオレンジ色になっていた。
「もう、夕方かぁ~~そろそろ帰るかぁ~~」
立ち上がってブレザーを着て、右手に鞄を持つ。
そして、自分の見えない将来を考えながら美羽は家に帰宅するのであった。
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「ただいまぁ~~~」
玄関で靴を脱ぎながらいうとすぐに台所から小走りで駆けてくる足音が聞こえてきた。
足音の主は駆けてくるなりジャンプして美羽に飛びついた。
「美羽ちゃぁ~~~~~~~ん!!!!!おかえりぃ~~~~~~!!!!」
「うぐっ!!死ぬ!!死ぬ!!」
こともあろうことか駆けてきた彼女は美羽の首にぶら下がり抱きついてきたのである。
抱きつかれた美羽は息ができなくなり必死に抵抗し、首に巻かれた腕をたたいている。
「あのねあのね。今日のご飯はシチューなの!!少し早いかなあ~~っておもったけど・・・肌寒かったし、恵奈考えるのがめんどくさかったからシチューにしちゃったんだけどいいかしら??」
「いっ・・・いぃ・・。いい・・・か・・ら・・。は・・・な・・。」
「ホントぉ??・・でもぉ「かぁ~~~~~~さん!!!美羽が死にそうだよ」
「え??あらあら?美羽ちゃんごめんなさぁ~~い!!」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・。海斗・・ありがとう。助かった。」
美羽を助けたのは弟の海斗であった。もちろん義理の弟である。
2つ下の弟の海斗はお風呂から上がったのか髪がぬれていた。
ぬれた髪のせいか色気が出ており、いつも以上にかっこよく見える。ただでさえ普段でもカッコイイのに5割り増しだ。
「どういたしまして。」
口元をニヤリとあげてニヒルに笑いながら言った。
たった一言の感謝のことばをここまでエロく醸し出しながら言う中学3年生はそんなにいないだろう。お風呂上がりというオプション付きだからなおさらだ。
「あっ!美羽、今からお風呂入れよ。お風呂に熱湯入れっぱなしだから今から入るついでにとめといてぇ~~」
「えぇ!!??今ぁ!?何で今なのよ!!」
「だって後から入ると、また暖めるためにお湯入れなきゃならねぇじゃん。よろしくな!」
そう言って海斗は自分の部屋に入っていった。
私はこの海斗に言われ、お風呂に入ったことに後悔することになるとは夢にも思っていなかった。
「あらぁ~~。じゃあ美羽ちゃんがお風呂上がってくる頃に、晩御飯おいしく食べれるように用意しておくわねぇ~」
そう言って、叔母も台所に戻って言った。