呪い誕生
元素に意志が在る。
この発見は人々に大きな可能性を感じさせた。
しかし、事はそううまくはいかなかった。
数年経っても、少年の他に元素を扱える者は現れなかった。
一度私の意志を汲み取ってくれた者ならあるいは…と思ったが、どうやらそういう訳にもいかないみたいだ。
元素が起こす現象を誰もが活用できれば、人類の生活は大きく変わる。
水に居住を縛られることもなくなる、暗闇に怯える必要も、高所に慄くことも、熱さや寒さ、飢えにも対応できるだろう。
なんとしても、安定して、誰にでも扱えるようにしたいな。
願いを聞いてくれる条件が分かればいいが、手あたり次第に試していくしかないか。
差し当たって 簡単な記号と行動を結び付けて…
果ての見えない実験の日々、、、
それはとても充実したものであった。
だがある日異変が起きる。
「あなたが 憎い」
突然母親から浴びせられた言葉に、思考が停止する。
母親が改まって話があると言い出したので聞いてみると、根拠のない嫌悪感が突然生まれたという。
「そしてこれは私だけじゃないみたいなの」
「村人たちがあなたを殺そうとしている。話をしているのを聞いたの」
「いや、ちょっと待って。話についていけないよ」
「私にも何が起きてるか分からないわ」
「でも、分かってしまう。村人たちの気持ちが、、、」
「あなたを排除することが、正しいことだと感じてしまう」
「あなたを愛したままなのに…」
冗談で、いや、冗談でもこんなことを言う人間ではない。
とても信じられないが、それが真実なのだろう。
「このままココに居れば、いつ村人に殺されるか分からないわ」
「村を離れて、もう、、戻れないと思った方が良いかも、、、」
「うん、、分かった。」
促されるまま、私は村を出る支度をする。
「これを持って行って」
「ありがとう、、これは?」
「お金とか、ちょっとした食べ物とか…」
「そうか、ありがとう」
「ごめんなさい。そのくらいの事しか出来なくて」
「ううん。十分だよ。」
母も辛いのだろう。嫌悪感というのがどれ程のものか、私には知ることも出来ないが、母のこんな暗い表情は見たことが無い。
いたたまれず、私は別れを急ぐ。
これが、最後の別れになるとも知らずに、、、




