救い
街の様子を見に行くと、それなりに大きな街なのにほとんど人を見ることが出来なかった。
病に臥せっているのか?あるいはすでに多くが亡くなってしまったのか?なんにせよ流行り病のせいでこうなっているのであれば、なるほど確かに、このまま何もしなければ、この街から人が消えるのは時間の問題だろう。
「どうだった?街を見てみて」
「ああ、確かにあんたの言う通り、流行り病は随分と深刻みたいだ」
「じゃあ手伝ってくれるかい?」
前のめりに、まるで断れるとは思ってない様子で聞いてくる。
「それとこれとは話が別だ。あんたが本気であの街の住人を救おうとしていたところで俺には関係ない。むしろ、なんであんたはあの街の住人を救おうとするんだ?あんただって碌な目に合ってないだろ」
「うん……。そうだね…。でも、それは関係ないよ。………『人の役に立つか考えて行動をしなさい』薬師だった母に、口癖のように言って聞かされた言葉だよ。それがそのまま、僕の行動理念にもなっている。彼らにどんな扱いを受けようと、僕の行動は変わらないよ」
「大したお人好しだな…。俺には出来ないよ。そんな考えは…」
なぜか俺の顔は綻んでいた。純粋な尊敬の気持ちからだろうか?否定され続けてきた自分の価値観を肯定されたような気がしたからだろうか?とにかく、とても暖かい気持ちになった。
「君だってそうだろ?もし本当に興味が無いなら、僕の話なんて聞こうともせず立ち去ってる筈さ」
「ふっ…どうかな……俺は…」
しかし、この男の力になれるのは悪い気がしない。無理に人間を憎もうとしても出来ないのなら、いっそこの男の理念とやらに従ってみるか。正直、人間に対してもう期待することなんて出来ないが、この男を見ていれば、失望しきらないで済む。そんな気がした。