落胆
あの後、俺は兵士たちを殺そうと思い攻撃した。彼らにかける慈悲は無い。思うところもない。
しかし、殺したい程憎んでるはずなのに、殺そうとする瞬間どうしても手が止まってしまう。なぜ殺せないのかは、自分でも分からなかった。ただ、少女たち親子の仇すら殺せない自分に嫌気がした。
その後、俺は兵隊を一人残らず倒し、壊滅させた。ふと横に目をやると、俺を見て震える村人が…。村人は近寄ってくると、色んな言い訳を言っていた。俺に殺されると思って必死だったのだろう。だがどうでも良かった、色んなことがどうでもいい、うんざりだ。何も聞きたくない。
震えるほどの怒りを向けるべきところ向けられない苛立ちは、感情を極端に冷めさせることで落ち着けた。
***
俺は当てもなく、足が向くままに旅をしていた。
人間が憎い。しかし、人に対する愛情も消えていない…。相反する二つの感情が自分の心を不安定にさせ、自分が何をしたいのか?何のために生きているのか?分からなくなっていた。
そんな時、騒がしい声が聞こえてくる。
「さっさと出ていけ!」
「わかった。わかったって!!」
フードを被った男性がなにやら追い立てられている。
関わる気は無かったが、男と目が合ってしまった。
「ねぇねぇ君。ちょっと手伝ってくれないか?」
「すみません。お断りします。」
「まだ何も言ってないじゃないか!!いや実はね。この街で流行り病が蔓延していて―」
フードの男は聞いてもいないのに話し出してしまった。
「原因を探ってたんだけど…色々探ってたら、僕が元凶だと疑われてね」
「俺には関係ない話だな」
「そんな事は無いさ。君は魔法使いだろ?」
!!?
「魔法使いになるような奴はね。みんなお人好しなんだよ」
そんなテキトーな事、ある訳ないだろ!それに俺はなりたくてなった訳じゃない!
「という訳なんだけど、手伝ってくれるかい?」
「なんで魔法使いだと分かったんだ?」
「んー…。カン、かな?」
カン?そんな訳…。何か隠してそうだな…。
「あんたがどんな人間かも分からない。実際、ホントにあんたが街に病を広めてるかもしれないだろ」
「だったらその目で見てきなよ。もし僕がこの街の人間に何か危害を加えるつもりなら、この街に対して、まだ何かすべきなのかどうかを…」