他人と食べる
人がつくった食事を口にするのは何時ぶりだろう?なんだかとても心が温まる気持ちだ。
「とても、美味しいです」
こんな言葉しか出てこないことが惜しいほど、複雑な感情が溢れる。
「いえいえ、お粗末様です」
少女の母親は冗談交じりに、優しく笑う。
「時に、お聞きしたいことがあるのですが、『神』って聞いたことありますか?」
「???。いえ、たぶん聞いたことないですね」
「そうですか…」
どうやらまだこの村には来てないようだな。
「なんなんですか?それは」
「いや、それが俺もよく分かっていないんですけど、生命を生み出した存在で、今でもこの世界を見ていて、救いを求める者に手を差し伸べるとかなんとか、御伽みたいな話です」
「あ!そんな話、聞いたことがあります。どこでだったかな?まだ旅をしていた時ですけど、そんな話を耳にしました。それが神だったかどうかまでは覚えていないんですけど…」
「本当ですか!?」
本当にいたのか、疑っていたわけでは無いが、確証は何もなかったから少し雲をつかむような目標だったものが、現実味を帯びてきた。
「旅をされてたんですね」
「えぇ、この子が生まれて、少しでもこの子が暮らしやすいとこをと思って…。その前にいた村ではあまり良い思いをしなかったので…」
やはりこの人達も神の呪いがあるんだ…。しかし、これで呪われた者同士はいがみ合わない説は濃厚だな。
「だからこの村の人達には感謝してるんです」
???。感謝?俺の目にはあまり歓迎されているようには見えないが…。
「どこへ行っても歓迎されなかった私たちを受け入れてくれて、住むことを許してくれた。おまけに私が病気だと知ると、子供の力であまり役に立てないと分かっているはずなのに仕事を与えてくれたんです。きっと、人手が足りていな訳では無いのに…」
そうなのか…。俺は先入観で理不尽な目にあっていると思ったが、この村の人間は、元来とてもお人好しなのかもしれない。呪いは効いていても、困っていると放って置けない程には。