フルーツオレの呪い
朝の5時半、コンビニに行った。ナントカナントカ券という券を買わなければならず、仕方なく早起きしたのだ。
その券を貼り付けておかなければ、私の住む地域では、粗大ゴミの回収をしてくれない。捨てたいものがあったことを思い出し、回収日当日の朝に買いに行ったのだ。
コンビニに入った途端、いきなりフルーツオレが飲みたい気分になった。私は、普段、甘いものを食べない。飲まない。
(なんでいま…? )
と思いつつ、500ミリリットルのペットボトルコーナーをうろうろした。
(フルーツオレ、ある…。あるけどさ…。
粗大ゴミの券とフルーツオレ買うってどうなん…。
組み合わせ的に、どうなん…。)
店員の目が気になって、ペットボトルになかなか手が伸びなかった。
しかし、意を決してエイヤッとコンビニオリジナルのを1本。さらに、BOSSのフルーツオレも1本。手に取って即レジに向かった。
(きっと店員さんも私の買い物なんて忘れてくれる! )
私は自分の運を信じた。
だが、裏切られた。レジにはすでに、すっごい強者がいたのだ。
(フルーツオレの1.5リットル買おうとしてる…! )
めっちゃ寝癖ついてるグレーのスエットの男の人だった。
「あざした〜! 」
店員、超元気。男の人は1.5リットルのフルーツオレを買い、スリッパみたいなのをペタペタ言わせて、颯爽とコンビニを出て行った。
次のお会計が、私。
店員はきっと、今日はフルーツオレがよく売れると思ったに違いない。きっと、男の人よりさらに寝癖ボーボーの、クタクタの寝巻き姿の私を、その脳にインプットしたに違いない。
ーどんな時もとりあえず最低限、綺麗な格好でいよう…!
この日、私はフルーツオレを両脇に抱えながら、そう誓った。
また、彼のことは、肝が据わっているという点から、『フルーツオレの君』と名付けた。一体どういう経緯であんな寒い早朝にフルーツオレを買いに来たのか、非常に気になっている。
そして、『フルーツオレを連続で売った君』。つまりコンビニ店員さん。彼の思念により、私たちはフルーツオレを買わされたのでしょうか。
ちなみに、久しぶりに飲んだフルーツオレは、はちゃめちゃ美味しかった。なんていうか…フルーツオレって、フルーティー!!! 甘いのに…くどくな〜い!!!
その日以来、私は『フルーツオレの呪い』にかかった。足繁くコンビニに通い、フルーツオレを買っている。なんだかようわからんが、飲まずにいられん。もう、呪いとしか言いようがない。