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2、服を買おう

「どうしてあんな事言っちゃったんだろう?」

 僕は後悔していた。

「おじゃましまーす」

 ユイは僕の部屋で、トイレを借りた後、僕の出したお茶を飲んでいる。この世界はユイの知っている世界とは違うという僕の説明を、ユイは神妙な顔で聞いていた。


「えっと、ところでお金持ってる?」

「うん。ほら、これ」

 そう言ってユイは腰元に結んでいた袋から、じゃらじゃらと袋の中身を机の上に出した。


「これって、金貨じゃない!? でも金だからお店に持っていけば売れるかな……? 今は僕のお金でどうにかするしか無いか」

 僕は財布の中を見た。

 アルバイトの給与を貰ったばかりだったので、まだ5万円くらいは財布に入っていた。


「それにしても……」

 ユイの格好はセクシーすぎて目立つ。っていうか、鉄の胸当てを外させたら、下着を着けていないみたいで僕は赤面した。

「服を買いに行きましょう。今の服は目立つから、僕のジーンズとカットソーを貸してあげる。着替えて下さい」


「えー!? これじゃ駄目なのか!?」

 ユイは頭をボリボリかいて、ため息をついた。

「駄目です。この世界の服を直ぐに買いに行きましょう」

「分かったよ」

 僕の言うことをユイは渋々聞いた。


 時計を見ると、まだ6時だった。

 なんとか洋服屋はやってる時間だ。

 僕は慌ててユイが着られそうな服を見繕って、外出の用意をした。


 ユイは少し小柄だったので、僕の服は大きめでダボついた感じが可愛かった。

「じゃあ、いそいで服と下着を買いに行きましょう」

「はーい」

 なぜだかユイは僕の言うことを素直に聞いた。


 外に出て歩いていると、ユイがおばさん向けの小さな洋品店に入っていった。

「あれ、欲しい」

「あれ!? 虎の敷物なんて入らないよ!?」

 ユイは頬を膨らませて言った。


「買う。気に入った」

「お嬢ちゃん、良いセンスしてるじゃない!」

 店のおばちゃんが出てきた。パーマがキツくてちょっと怖い。

「じゃあ、あれ下さい」

「はい、2000円だよ」

 思ったより安くて、僕はホッとした。


 ユイは買ったばかりの虎の敷物を嬉しそうに抱えた。

「さて、これで寄り道は終わりですよ。早く洋服を買いに行きましょう」

「えー、この店で良くない?」

「ここはちょっと……量販店に行きましょう」


 僕達は、駅前のショッピングビルの量販店に入った。

「じゃあ、下着を選んで下さい。お金はこれで」

 僕はユイに五千円札を渡した。

「え!? 紙じゃ無いか!! こんなので買い物なんて出来ないだろ? 金貨ならあるぞ?」

「ユイさん、そんな物だしたらお店が大騒ぎになってしまいます。しまって下さい」

 ユイは不思議そうな顔をして金貨をしまうと、五千円札を観察した。


「本当に異世界なんだな」

「早くしないと店が閉まってしまいますよ?」

「はーい」


 ユイは下着コーナーで、立ち止まった。

「どれを選べばいいんだ?」

「えっと、ユイさんは小柄だからSサイズで大丈夫だと思いますよ」

「エス?」

 僕はしかたなく、女性用の下着売り場に入ってSサイズの下着で上下セットの物を三つ選んでかごに入れた。


「洋服はどうしましょう」

「どれがいい? あんまりひらひらしたのは無しだからな! 戦闘のとき困るからな!」

「この世界では戦闘なんてありませんよ」

 僕はそう言いながら、長袖のシャツとジーパンやチノパンをいくつか選んだ。


「この辺りでどうですか?」

「ああ、良いね」

 ユイは気に入ったらしい。

「試着しますか?」

「うん」


 ユイは試着室に入り、次々と服を変えた。

「なんか布の面積が広くて、動きづらいな」

「今までが露出しすぎだったんですよ」

 ユイはどの服も似合っていた。


「それじゃ、服も3セット買っておきましょう」

 僕は財布の中を見た。1万5千円は入っているから、支払いは何とかなるだろう。

「ここに並ぶんです」


 僕は無人のレジに並んで、商品の入ったかごを置いた。

「おお! 人が居ないのにしゃべってるぞ!?」

「はい、支払い完了。荷物は……僕が持ちますね」

 

 ユイは虎の敷物を抱えて頷いた。

「それじゃ、帰りましょう」

「分かった」


 僕たちは買い物を終えて、アパートに帰っていった。

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