〜父との再会〜
母には父はひどい男だと聞かされ、あることない事まだ小さな私に吹き込んだ母は、まさか私が泣いて父に縋り付くとは思わなかった様で、面食らっていた。
そして父との二人の時間を堪能した私は無理矢理母に引き離され、昔の家を後にした。
帰りには母のマニュキュアで真っ赤な爪が幼い私の柔らかい手の平をギュッと掴んで離さない。
タクシーの中で頭や顔をたくさん叩かれた。
その上母からの暴言が飛ぶ。
「あんた泣くんやったらもぉパパには会わさないよ!」
泣くのを堪えて肩を震わせ家に着いた。帰って一人考えていた。
次はいつ会えるの?
パパ助けて。
父との思い出をずっと思いだし、一人泣いた。
いろんな所へ遊びにいった事。
奈良公園で鹿に煎餅をあげた事。
コピー機で顔や手を写して遊んだ事。
父と弟と一緒に行ったうどん屋さん。
タイガーマスクのテレビを父と見た事。
父の妹がホットケーキを作ってくれた事。
たくさん父の思い出が頭の中を駆け巡る。
「もぅあんたにはパパはおらんの!」
「あんたのパパは新しいパパやねん!」
母にいくら言われても納得できなかった。
どうせママは私の事いらない癖に!
でもママがいないと生きていけない。
子供ながらにそう考えた私は、仕方なくこれからは母のゆう事を聞いて生きて行こうと思った。
それからは母に気に入られようと、小さいながらに頑張った。
トイレ掃除をしたり、母に紅茶を入れたり。
母に必要とされるため頑張った。
毎晩、母がいなくても、鍵っ子でも文句一ついわず我慢した。