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47 重装騎士団

 あれから10日ほどで魔物の掃討も一段落ついた。

 いつの間にかディル家の件は王国の誰もが知っていた。バルカンが皆に話していたようで、メガメーデはそのことを裏切りだと怒っている。

 そのせいもあって王国の人々の間で強硬姿勢を望むような声が大きくなってきていた。王国の村々は魔物の流入によって大きな被害を被っているからだ。

 それと同時にディル家を侮るような空気も広がってきた。王国とギルドが組みさえすれば、戦いになったところで必ず勝てるはずだというような根拠のない楽観論が皆を支配しだしたのだ。


 そんな声に押される形で、ついに王国は魔物の流入の件でディル家に詰問状を送ることになってしまった。

 俺とメガメーデは時期尚早だと反対したが、あくまで強硬なギルドに押し切られた。もちろん理由はそれだけではない。魔物の流入で被害を受けた人々の声は、とうてい無視出来るものではなかったのだ。


 しかし、その詰問状はディル家によって完全に無視された。

 それだけではなくギルドが収入を増やすために自分たちでゲートを開いたのだという噂が、数日後からペロエの町などでまことしやかに語られ始めた。ディル家は反論するのではなく、逆にこちらのせいにしてやり返して来たのだ。


 こんな風に王国とディル家の争いは情報戦から始まった。

 しかし情報戦になれば我々が負けるはずがなかった。なぜなら移動販売と言う形態は噂を広めるのに最適だからだ。

 それに町の住民への最大の情報発信源である冒険者ギルドもこちらの手の内にある。ギルドは帝都から復興中のゾラにやって来る行商人たちへの影響力も大きかった。

 そんなわけで、やがて魔物の流入がディル家が引き起こしたことだということは、北レクリオンでは周知の事実のようになっていった。


 そのことに業を煮やしたのかディル家は、北と南の境界線であるアンテドン川の南岸で軍事教練を繰り返すようになった。いつでも相手になってやるぞとデモンストレーションをしているのだ。当然それは俺たちに対する挑発でもあった。

 メンツや名声が大事なのは平和なうちだけの話で、一度戦いになってしまえばそんなものはチャラになってしまう。乱世では勝てば正義になる。ディル家はそのことをよく分かっていた。無論それはディル家の戦力が確実にこちらを上回っているという自信があるからこそ出来ることだろう。

 ディル家による挑発は王国内の強硬論に火をつけて、さらに燃え上がらせた。これ以上、強硬論を抑えようとすると王国が分断してしまう恐れもあった。そうなると余計に向こうの思うつぼだった。もはや王国とディル家との戦いは避けられないのかもしれなかった。


 そんな状況のある日、俺は車の中でメガメーデに相談した。


「ディル家の戦力って、どのくらいだろう」


 俺はメガメーデに尋ねた。彼女はディル家の私兵だったこともあるので、内情をよく知っているはずだからだ。


「私が知る限りは、常駐している兵は全部で400ほどでした」


「そんなもんなのか?」


「もちろん、それが全てではありません。実際に戦うとなれば常駐兵とは別に、支配下の村から兵を招集するはずです。その数は分かりませんが500ほどは見ておいたほうがいいと思います」


「そうか……」


「しかし、招集兵や歩兵はあまり問題ではありません」


「というと?」


「ディル家の主力はあくまで重装騎士団ですので、それを討ち破らないことには私たちの勝利はありません」


「重装騎士はどれくらいいるんだ?」


「おおよそ200。常駐兵のうちの半分が重装騎兵です」


「そいつは厄介だな」


 重装騎士とは馬にまで完全防具を施した騎兵で、それは現代の主力戦車のようなもので、この世界においての最強の兵種だった。


「はい。しかし重装騎士団にも欠点がないわけではありません」


「欠点?」


「重装騎士による突撃は連続で行うことが出来ないのです。その重すぎる装備のために一度突撃すると人も馬も消耗しすぎるからです。

ために重装騎士団は一度使えば当分の間は休息が必要です。よって一度の戦場においての突撃の回数は、せいぜい二、三度が限界でしょう」


「二、三度か。それでも多いな」


「そうですね。けれどディル家にとっては重装騎士団は矛であるとともに本営を守る盾でもありますので、実際はここ一番の勝負所でしか使ってこないと思います。だからそのタイミングを見極めることが肝要かと」


「そのたった一度の重装騎士団の突撃を何とかしのげればいいんだな」


「はい」


 それなら何とかなるかも知れないと思った。


 俺たちは二人で作戦を練った。

 作戦のキモは騎士の突撃を撃退するなりスルーするなり、どんな形でもいいからとにかく凌ぐことだった。

 一度突撃を凌いでしまえば重装騎士団はしばらくは行動不能になるので、その間にこちらの機動部隊で敵の本営を突くというものであった。


「ディル家の軍が北レクリオンに侵入すれば、おそらく西部地区に向かうと思います」


 西部地区とはテオ村、ステナ村、ポロエ村がある一帯のことだ。ちなみに東部地区はオイフェ村、カイネ村、カデス村の三村がある地域のことを言う。


「なぜそう思う?」


「東部地区には騎士の機動力を生かせるような平原が存在しないからです」


「そうか。なら西に兵力を集中させた方がいいな。でもそれでいくなら敵が絶対に東部に向かわないようにはしておく必要もある」


「はい。それにはカデス村に多少兵を置いておけば問題ないでしょう。南からだとカデス村を陥とさないことには東部には向かえませんので」


 カデス村は王国傘下ではないが友好関係にある。それにカデス村は魔物の流入によってもっとも大きな被害を被ったということもあってディル家を特に深く恨んでいる。ディル家と戦うというなら協力してくれるだろう。


「敵が西に向かうにしても、ヘイラ山脈を越えてくる可能性は?」


「重装騎士団の山越えは難しいのでおそらくないと思いますが、兵を分けてくる可能性はありますね。その場合、ステナ村が南北から挟撃されることになります」


「どっちにせよ騎士団がいるほうが敵の主力だろうから、俺たちはそれに備えてヘイラ山脈の南側に構えるべきだな。北から別動隊が来るとして、それへの守りはステナ村に任せよう」


「私もそれが最善と思います」

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