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2 魔物狩り

 満腹になった俺は運転席でこれからのことを考えようとした。この車は魔石が超重要だった。それがすべてと言っても過言ではない。だからまずは魔石をどうやって町に入らずに補充するのかを考えないといけない。売ってくれるような行商人がいればいいんだけど。


「そう言えば魔物を狩れば魔石が取れるとか言ってたよな?」


「はい」


「どうやって狩ればいいんだ?」


「それは自分で考えてください」


 それはそうと思ったか。とりあえず武器になりそうなものを探してみよう。


 翌朝、俺は車で移動しながら武器になりそうなものを探した。振り回せそうな木の棒を3本と、投げやすそうな石を数十個拾って車に積んだ。

 メーターには時速100キロまでの表示がある。最高速度を試してみようかと思ったが、何しろ荒野であまりスピードを出すと、ひっくり返りそうな気がしたので四十キロくらいまでしか試せなかった。しかし仮にひっくり返ってしまっても軽ワゴンだし車重が軽そうなので、(テコの原理でも使えばだが)一人でもなんとか起こせるんじゃないと思っている。


「魔物が出そうな場所とか知ってるかい?」


 移動中に俺は車の精霊に話しかけた。


「魔物は普通、自然界の精気が豊富な場所にいることが多いです」


「精気?」


「精気と言うのは魔力の元になるものです。魔物は自然界の精気を吸収して、それを体内で魔力に変換することでエネルギーにしています」


「精気が多い場所って?」


「山や森、あるいは水辺などです。しかし人里に近い里山などには滅多に出ません」


 道が通っていない山や森にこの車で入って行くのは無理そうなので、とりあえず道を探す。街道はすぐに見つかった。山や森には道沿いに進めばいずれ当たるはずだ。


「道が凹んでいるのは何で?」


「魔動車がつけたわだちです」


「魔動車って?」


「この車と同じように魔石で動く車のことです」


 ちょうどその時、道の向こう側から車輪がついた木製の箱が走ってきて、道ですれ違いになる。木製の車の運転席の両横には煙突のように上を向いた排気管がついていた。


「あれが魔動車かい?」


「そうです」


 それからも何度か魔動車とすれ違い、何度かは後ろから抜いた。魔動車はあまり速度が出ないようで、どれも時速15~20キロくらいがせいぜいだった。だいたいママチャリぐらいの速度だ。


 轍を踏まないように慎重に走った。この車は古い規格の軽自動車なのでタイヤも小さくて細い。轍を踏むとすっぽりと嵌まってしまいそうで怖かったからだ。

それにしてもガタガタの道だった。荒野を走った時のほうがまだマシだったくらいだ。


「なんでこんなに道に凹凸があるんだ?」


「この国には雨季と乾季があります。冬が雨季で夏は乾季です。今は六月なので乾季ですが、地面がまだぬかるんでいた頃についた轍や足跡がそのまま乾いて路面に凹凸を作っているのです」


 街道は森に入った。分かれ道があったのでそっちに入ってみる。ここの森はそれほど鬱蒼とはしておらず、林に近かった。小さいこの車なら、道のないところでも場所を選べば入っていけないこともない。

 沼が見えたので道をそれたところに車を停めた。今日のところはここで魔物狩りをしようと思った。

 

 ジンジャエールとホットドッグで昼食をとってから、車内で魔物が来るのを待った。二時間くらい待ったが、まるで魔物の姿を見なかった。


「この森には魔物はいないってことはないよな?」


「いると思いますよ」


「姿を見ないけど……」


「警戒してるのかもしれませんね。おびき寄せるためには餌が必要でしょう」


「餌?」


「釣りと同じでまき餌が要るのです。ホットドッグをいくつか出しておいて匂いを嗅がせると良いでしょう」


「そんなんでいいの?」


「おそらく大丈夫」


「魔物は魔力をエネルギーにするって言ってたけど、食事をとる必要とかあるのか?」


「魔物はその特別な力を維持するために魔力が必要ですが、それ以外にも肉体を維持するために食事を必要とします」


 ホットドッグを餌にすると30分もたたないうちに魔物が現れた。車の精霊によると、ダイアウルフという種類の魔物らしい。狼に似た魔物だが漆黒の体毛にたてがみを持ち、目が赤いのが特徴だ。

 俺は棒を構えて待ちかまえたが、ダイアウルフは車から2メートルくらいのところまで駆けて来ると、見えない壁に阻まれたように強制的に止められた。そこが結界の境目なのだろう。

 魔物は牙をむき出しにしながら俺にうなり声を上げたが、何もすることが出来ない。後から仲間も4頭現れたが同じ状況だった。

 俺はその状態から結界の内から安全かつ容易に、棒で殴りつけたり石を投げつけたりして魔物を仕留めた。これで魔石を5個得ることが出来た。ちなみに魔石の大きさは鶏の卵くらいだった。


「この魔石一つでどれくらい走れるんだ?」


 俺は車に問いかけた。


「この車であれば、おそらく1000キロくらいでしょうか」


 魔石一つをガソリン満タンと考えると、燃費は二十一世紀の車とそれほど変わらないようだ。


「魔物と戦ってればレベルアップとかすることあるのか?」


「ありますよ」


 やる気が出た。魔物を餌で釣って容易に寄せることが出来て、それを安全な場所から倒すことが出来るわけだからバグ技のようなものだ。やらない理由がない。棒で殴るのは疲れるけど体力をつけるのにもちょうど良かった。こんな原始的な世界で運動不足はマズい。


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