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イヌの国のネコの王子  作者: べしみ仁和
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44話 エピローグ

「はあああああああ!?」

 全て終わりクルリ一行だけが残った地下水道、クルリはリディリに罵倒されペシペシと叩かれていた。

「よくも騙してくれたわね! アホ! バカ! バカクルリ!」

「だからウィーグさんの作り話だって、僕のせいじゃないし」

 クルリ達だけ残った後、ウィーグが今のは作り話でクルリに芝居をしてもらったと話したのだ。

 それを聞いたリディリは再び呆然とした後、真っ赤に激昂し何故か怒りはクルリに向いた。


「うわあぁぁガーリヤ! アホクルリが騙したぁぁ!」

 終いには泣き出しガーリヤに抱き着く。

「よしよしお嬢様、クルリ君は悪い男ですね~」

「王子などと虚言を弄してリディリ様をたぶらかすとは……全く最低な奴め」

「あーもうそれでいいですよ」

「いや、すみません私がクルリ君にあんな事を頼んだせいで」

 ガーリヤとミディニにも好き勝手言われている、理不尽だが諦めた。


「なかなか面白かったな、じゃあ帰るか」

 ウェルが気楽に言う。

「そういえばウェルさんは反応薄かったですね」

 何となく気になって尋ねてみる。

「ん? まあ王子とかがどうより魔族を倒す方がよっぽど重要だからな、これからもバンバン殺していこう」

「嫌ですよもう……九割九分死ぬところだったんですよ?」

「まあそういうな、お前には魔族を殺す才能があると常々思ってた」

「心の底からいりませんよそんな才能……」




「いやー皆さんお疲れ様です、やっぱ無駄に偉そうな奴は駄目ですね。絶対あくどいことしてますね」

 フラバナが顔をだしてニコニコと労う、一晩明けて祝勝会をビルズフルの事を教えてくれたフラバナの所でやる事になったのだ。

「では皆さんゆっくりしていってくださいね」

 フラバナが去るとメニューを見ていたリディリがガーリヤに話しかけた。

「ガーリヤー、アホクルリに騙された苦しみがぬけないからお肉頼んでいい?」

「いいですよ~お嬢様は魔族を倒しましたし何でも好きなモノ頼んでくださいね~」

「やったー!」

「まだ言ってる……」


「いや、すみませんクルリ君、私のせいで」

「え、いやいやいいですよ別にこのくらい」

 まあ王子なのは本当なのだが、するとウィーグは少し声を落として続けてきた。


「……これが終わったら少しお時間をいただけますか?

 お会いして頂きたい方がいるのですが」

「……え? いいですよ」

 流石にクルリもだいたい気付いていた。



「こちらです」

 祝勝会が終わった後、他の皆と別れ路地に入ると立派な馬車が止めてある。

 御者が一礼すると扉を開けてくれる、馬車は装飾こそ華美では無いが作りや内装など質は最高級である。

 つまり商人の馬車……それも大商人だ、華美では無いのは貴族から疎まれない為である。

 王族用の馬車にも引けを取らないクッションの席に座る。

「……」

 じっと無言でウィーグを見つめるとウィーグは気まずそうである。

(まあいいか)


 この場でウィーグに聞くのは諦め、窓を眺めていると間も無く馬車は停まった。

 降りると見覚えがある、護衛の依頼の時に来たスィラーン商会である。

 ウィーグに案内され奥に行くと立派な扉の部屋に通された。

 部屋の中には三人の老人……一人は見覚えがある、確かここのリズラト商会長だ。

「ええと本日はお招きいただき……」

 クルリがとりあえず挨拶をしようとすると、老人たちは一斉に立ち上がって胸に手を当てた。

「先日の非礼をお許しください殿下」

「お初にお目にかかります、スルエド商会のミルツバでございます」

「同じくお初にお目にかかります、クラッダ商会のフラスグでございます」

「あ、ええとどうも」


 まあ分かってはいたがバレていた。

 ウィーグに促され席に着くと老人たちも座った。

「まずは御疑問に思われている事と存じておりますので説明させて頂きます」

 リズラトが口を開いた。

「私が王子殿下のお忍びの事を知ったのは殿下がハンターを始める前の事です」

「えっ?」

「歌う波音亭にてお姿をお見受けしたのです」


「そして大変失礼ながら調べさせていただき、後日王宮へ帰られる所からクルリ王子と判断致しました」

「ええと……その前にお会いした事ありましたでしょうか?」

「いいえ、ありません。ですがすぐにわかりました

 何故ならば殿下は若い頃の国王陛下に御尊顔がそっくりなのでございます」

 他の二人の老人も深く頷く。

「父さ、父上に?」

 初めて聞いた。


 しかしということは。

「ええと……もしかして私は外にいると顔ですぐわかってしまうのですか?」

「いえ、若き頃の陛下を……陛下として知ってる者はそうは居なかったはずです

 ですが歳を取った者の中には御顔で疑問に思う者もいるかもやしれません」

「そんな……」

 顔が親に似る、当然の事ではあるが不覚である。全然気が回らなかった。

「ご安心下さい、何十年も前の事でもありますし王子と確信しているのは恐らく主にここにいる者だけでしょう」

「ううむ……」

 どうしようもない、クルリ唸るしかなかった。




「まさかバレバレだったとは……」

 帰りの馬車の中でクルリはぼやく。

 ウィーグがうやうやしく答えてきた。

「いえ、会長の言う通り心配は無いかと存じます」

「いいですよもう今まで通りで、今更ですし面倒ですし」

「は、はい。では失礼ながら今までの通りに戻させていただきます」

「もしかして他の皆にもバレてる?」

 聞くとウィーグは少し考えこんだ。


「ウェルさんは恐らく知らないかと……ですが身分の高い事を察する位はしているかもしれません」

「リディリはまあ……大丈夫だろうけどガーリヤさんは?」

「難しいですが……彼女の立場から知りうる可能性もありえますし、勘づいているかもしれません」

「うーん……ギルドのティーリさんは?」

「身なりや雰囲気から王子とは行かなくてもこの国か隣国の貴族や大富豪の御子息と目星をつけているはずです

 ですがそこからは逆に不興を買う可能性を考えて身元を調べる事などは避けているでしょう」

「まあ……今考えると妙に親切だったね確かに」

 本当に今更である。


「まあ王様の若い頃に似ている人間が王宮に帰ればそりゃ怪しいか……」

 クルリなりに周囲を気をつけていたがまあプロにかかれば無理であろう。

「陛下の若い頃を知っている人間は少ないですし、言ってしまえばもし知ったとしてもどうしようもないかと」

「ううむ……あ! というかそういえば今回のアレでハンターとかビルズフルとか僕を王子と知っちゃってるじゃん」

 さらに今更な事を思い出したクルリ。


「ウェルさんが血の海を作らない為とはいえ何で盛大にバラしちゃったの」

 大量に知ってる人間がばらまかれた訳だ、問い詰めて来るクルリにウィーグは狼狽えながらも答えた。

「ま、まあ落ち着いてください。彼らにはウェルさんたち同様に芝居を打ったと伝える事になっています」

「いやでも絶対噂になるって」

「いえ、逆に考えてください」

「……逆に?」


「クルリ君が王子という疑い……噂は立つでしょう、ですが我々がそれを単なる誤解と広めます」

「うん」

「完全に疑問が晴れない人もいるかもしれませんが、殆どの人は単なるゴシップだったと思うでしょう

 そうなればもう一度何かあって噂が立ちそうになっても、前にもあったゴシップと同じと取り合わないはずです」

「うーん?」

「大丈夫です」

「そうかな……?」

「逆に考えてください」

「そうかも……」

 本当にそうなるかはともかく、クルリは言いくるめられた。




「結局どこまで知ってたんだ」

 祝勝会からリディリはミディニと帰り。歌う波音亭でウェルとガーリヤが飲んでいる。

「と、言いますと~?」

 大分飲んだので二人ともペースを落としている。


「……ダルクがいたとはいえクルリとリディリが勝てる相手だったとはとても思えない

 本人の説明は要を得ないし、奇跡が起きたか、あのメイドが間に合って何かをしたのかはわからないが危険すぎた」

 ガーリヤの動きが止まる。

「……内密で、話せる範囲でよいなら」


 そう言ってガーリヤはジョッキを置いて指を鳴らした、すると一気に周りの音が遠くなる。

 テーブルの周りを魔術の遮音壁で囲ったのだ。

「……クルリ君とお嬢様を転移させられたのは本当に私の落ち度です、何度謝罪しても足りません」

「済んだことはしょうがない。相手が魔族だと初めからわかっていたのか?」

 ウェルもジョッキを置き、ガーリヤに質問する。

 ガーリヤは頷いた。


「魔族の出現に周期があるのはご存じですか?」

「うん? 多い時期があるのは知っているが……規則性があるのは聞いたことがないな」

「星辰の運行やこの大陸の地脈のバランス……それらやさらに様々な魔術を組み合わせて、ある程度予見できるのです」

「本当か? そんな事が出来るなんて聞いたことが無いぞ」

「最終的に術者の直観によるものなので他者に証明できない上、術者があまりに希少なので秘匿されています

 万が一魔族側に知られたら大変な事になりますので」

「にわかには信じがたいな……」


 聞かされても半信半疑のウェル。

「この国に内戦があったのはご存じですか?」

「聞いたことはあるな、後継者争いだったか?」

「これも一応秘密にはなっていますが当時の後継者達に魔族が関わり内紛になっていたのです、現国王はそれを討伐して即位なされました」

「ふむ」

「ですがこの国にまた魔族が現れる事が予見されていて……それが今回だったのです

 今回いきなりあれ程の魔族が現れるのは想定外でしたが、まだ魔族の襲来は終わっていないでしょう」

「ふむ。クルリが魔族がいきなり苦しみだして隙が出来たとか言っていたが心当たりは?」


 ガーリヤが少し考える。

「……申し訳ありません、心当たりはありますがノーコメントです」

「後は……まあいいか、この国にいれば魔族と戦えるのは良い情報だ」

「ありがとうございます」


 ガーリヤがもう一度指を鳴らすと周囲の喧騒が戻ってくる。

 ウェルはジョッキを飲み干すと立ち上がった。

「ということはこれからもしばらく厄介になるが、よろしく頼む」

「とんでもない、ウェルさんがいてくれたのは思いも寄らない幸運でした。こちらこそよろしくお願いします」




「やっぱり実家が一番だな」

 歌う波音亭の近くに降ろして貰ったが気が変わって西宮の自室まで帰ってきた。

 昨夜は歌う波音亭に泊ったが、疲労か興奮か全然眠れなかった。

 やはり自室が一番である。

 祝勝会に置いてかれていたダルクが寄って来る。

「あーよしよし、じゃあおやすみ」

 ダルクの頭をぞんざいに撫でると着替えてベッドに入る。

 ダルクは不満げな息を漏らしたが大人しくベッドの横で丸くなった。

「それにしても疲れた……まったくなんなんだ魔族とか」

 クルリがぼやくが、すぐに眠りに落ちた。







「お疲れ様、よく頑張ったねクルリ。危なくてハラハラしたよ……あれ?」

 リヤンサが突っつくがクルリの意識は無い。

「よっぽど熟睡してるんだね……、じゃあこのままおやすみ、良い夢を」




 これにて『イヌの国のネコの王子』は終わります。

 読んでくださった方、感想をくれた方、評価して下さった方、どうもありがとうございます。

 未熟なこの作品に某所にてアドバイスをくれた方々もどうもありがとうございました。

 この話の続きは構想はあるがプロットは無い位の感じなので、もしかしたしたらその内に書くかもしれません。


 それでは最後までお読み下さり、重ねてありがとうございました。

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