33話 昼2
「いい天気ねぇー」
「そうだね」
リディリの呟きにクルリが返す。
中央広場のベンチに座ってのんびりしている。
「麻薬ってどう探せばいいのかしらねー」
「どうすればいいんだろうねー」
完全にダレている。
そもそも十歳が思いつきで行動しただけであるので当然だが。
「うーんどうしようか」
「もうなんかどうでもいいわー」
腹も膨れた昼下がり、もうやる気もなく投げやりである。
「じゃあどうしようかー」
クルリも同様である。
「思いつかないわー。 犬も歩けば棒に当たるっていうけどねえー」
「僕はネコだけどねー」
目の前の中央広場を人々が思い思いに過ぎてゆく。
たいていはイヌだがネコもいない訳では無い、ヒトもたまにいた。
気の利いた事も思いつかず、人々をぼんやりと観察していると横のリディリは居眠りしている。
クルリも眠気に抗わず目を閉じた。
「おらっ!」
「うわっ!?」
叩き起こされた。
「なに居眠りなんてしてるのよ!」
リディリは胸を張りながら居丈高に言ってくる。
「君の方が先に寝てたけど……」
「なに言ってるの! そんなわけ無いじゃない!」
「うーん」
反論は無駄であろう。
クルリがまあどうでもいいいかと考えた所でリディリの後ろにいる老人に気が付いた。
「その方は?」
「ええと……はじめまして、どうも」
老人が戸惑いながら挨拶をする。
どことなく気まずそうである。
「あっどうもはじめまして」
「……」
クルリも挨拶を返したがそこで会話が止まる。
「……で?」
しょうがないのでリディリに話を促す。
「じゃあ行くわよ」
「どこに?」
「このおじいさんの息子さんのところよ」
「なんで?」
「文句を言いにいくのよ!」
「うん?」
噛み合わない会話に老人が遠慮がちに話しかけて来た。
「あの…儂から説明させてもらってもいいかな?」
「あっ、お願いします」
「儂に息子がいるんじゃが……色々あったのか最近働くのをやめてしまっておるようなんじゃよ
別々に暮らしておるからたまに様子を見にいくんじゃが、埒があかなくてのう
しまいには門前払いまでされる始末じゃ」
「はい」
「今日も行こうか迷ってここで落ち込んでいたらこの……」
「リディリよ」
「リディリちゃんに話しかけられての、事情を説明したらうちの息子に文句を言ってくれると……」
老人は明らかに困惑している。
「おじいさんに冷たくするなんてなんてひどいのかしら!」
リディリがプンスカと怒っている。
察するに、いきなり話しかけて事情を聞いて、勝手に怒って息子の所に連れて行くように要求したのであろう。
まあありがた迷惑という奴である。
「僕らが行ってもしょうがないんじゃ無いかな?」
一応クルリは言ってみる、無駄ではあるとわかってはいるが。
「わたしが一言言ってやらないと気がすまないのよ!」
無駄であった。
「うるせえ親父! 色々あったんだ!」
「わかっとるが……このままじゃいかんだろう。色々あったのはわかってるが……」
門前払いはされなかったがそのまま親子喧嘩しているだけである。
玄関の前で言い争いになっている。
(何があったんだろう……)
どうでもいい、とちょっと気になる、が心の中でせめぎ合うクルリ。
「ちょっと! おじいさんにうるさいなんてなんてこと言うのよ!」
「なんだこのガキ!」
「なんだってなによ! 文句があるの!?」
「文句も何も誰なんだよ!」
リディリが参戦して混迷を極めている。
しょうがなくクルリが止めに入った。
「まあまあ落ち着いてください」
「だから誰なんだよお前ら!」
興奮した息子が手で押しのけようとしてくる。
クルリが反射的に避けると手が空を切った息子は盛大によろめいて倒れた。
「えっ、ええと大丈夫ですか」
「くそっ!」
男はよたよたと立ち上がろうとする。
(……酔ってるのかな? でもお酒の匂いはしないな)
「お、おい大丈夫かそんなフラフラして」
「うるせえ親父!」
威勢はいいが覇気はない、すると突然リディリが勝手に玄関のから家に入っていく。
「お、おい!」
慌てた様子で息子が追って中に入る、自然とおじいさんとクルリも家の中に入る事になった。
「やめろこのガキ! なに探してやがる!」
「おじゃましまーす」
靴を脱いでクルリも入る。
「お前も入ってくんじゃねえ!」
リディリを追いかけていた息子はこちらに向き直り怒鳴ってくる。
怒られたがリディリを連れ出さないといけない。
「なにやってるのリディリ。 もういいでしょ帰ろう」
声をかけるが一心に家の中をふんふんと嗅ぎながら歩き回っている。
「ほらリディリ」
リディリはいったん動きを止めるとジロリと睨んでくる。
「うるさいわねクルリ、ちょっと静かにしてよ」
「静かもなにも何してるの」
クルリは謎の我儘に手をこまねいている、一方息子は何か心当たりがあるようだ。
「くそっ! やめろガキ! はやく出てけ!」
「なんじゃお前そんな慌てて」
「親父には関係ねぇよ!」
また親子喧嘩を始めたがリディリはもう興味がないようだ。
「わたしたちには関係あるみたいね」
そう言うと目の前の引き出しを無造作に開けた。
「あっ! てめえ!」
中には薬包がいくつか入っている。
「それがどうかしたの?」
リディリは一つつまむと鼻まで持っていき嗅ぎながら答えた。
「麻薬よ」




