30話 朝
翌日、ウェルは若手のチームと近くの村の魔獣の駆除に参加していた。
「一匹そっちに行ったぞ!」
待ち構えた魔獣二匹のうち一匹を斬り捨ててウェルは叫ぶ。
ウェルは単独で待ち受けていたので残りは若手チームの四人が魔獣に向かう。
「──魔力よ満ちて形ありては穿ち、敵を撃て、≪槍≫よ!」
一人いる魔術士が詠唱を終えて魔術を放つ。
魔力の塊が突き刺さるが魔獣を倒すまでには至らない、そのまま突っ込んできた魔獣を残りの三人が囲んで何とか倒した。
手傷を負って暴れる魔獣を無理やり倒したので、大したケガはしていないものの魔術士以外はボロボロである。
「大丈夫か? よくやったな」
ウェルが歩きながら近づいて労う。
「あっウェルさん! どうも今回はありがとうございます!」
真正面で戦って一番ボロボロになっているイヌの青年が何とか立ち上がり礼を述べて来る。
ちなみに残りの三人はネコだ。
どうやら西ギルドでネコのハンター達がイヌのハンターを一人捕まえてリーダーにして面倒くさい事を丸投げするのが多いらしい。
この青年もそのクチの一人ではあるが……。
「ちょっとリーダー最近動き悪いわよー」
「もっと頑張ってよー」
「いやーごめんごめん、最近疲れが取れなくて」
ネコ達の勝手な言い分にも律儀に答えている。
確かに青年リーダーの動きは精彩を欠いていた──がウェルはまた別の違和感も覚えていた。
「大丈夫か? たまにはゆっくり休むといい」
「ありがとうございます」
「はっはっは」
さりげなく肩を叩き体内の魔力を探ると不自然に乱れている。
(麻薬だな……)
他の三人には怪しいところは無い。
これまでも幾つものチームと一緒に依頼を受けたが西ギルドでは比較的少数派のイヌに怪しい兆候、もしくは常用者と思われる者が多かった。
(ウィーグも俺達とチームを組むまではイヌが中心の中央ギルドにいた。
イヌに多いのか? まあ性格的にネコよりはストレスが溜まりそうだが……)
また翌日の朝、歌う波音亭。
「と、いう訳で今日はクルリ君にお嬢様の面倒を見てもらおうと思って」
「光栄に思いなさいよ」
いきなりあらわれては話を始めたガーリヤとリディリに、クルリは反応が遅れた。
「はい?」
「と、いう訳で今日はクルリ君にお嬢様の面倒を見てもらおうと思って」
「光栄に思いなさいよ」
「いや、聞き取れなかったわけでは無いんですが」
まったく同じ言葉を繰り返す二人。
クルリは本気で無視することも考えたが何とか耐えた。
「何て?」
「今日は私に用事があって一日お嬢様の世話~……じゃなかった面倒を見てもらおうと思って」
ガーリヤが答える。
「どっちもたいして変わってないと思いますけど……何で僕が?」
「クルリ君はそう思うのはわかってるわ……でも私はクルリ君が引き受けてくれると信じてるわ」
「なにも質問に答えてませんよね?」
「早く準備しなさいよね!」
何一つ納得していないクルリだがリディリはもう決まったものとしてせかして来る。
「もしかして何か今日は予定あったかしら?」
「いえ……特に」
「よかった! じゃあお願いね! 本当に適当にお嬢様の我儘に付き合ってもらうだけでいいから。
夕方を過ぎたら迎えに来るわ!」
「あのですね別に暇だからって別に引き受けるとは」
「あっ! もうこんな時間だわ! クルリ君ありがとう!」
「……」
わざとらしく時計を見て声を上げ、クルリの手を握って勝手に感謝してくるガーリヤ。
断るのは最初から無理だとわかっていた。
せめてクルリは無言で抗議の視線で見つめるが、ガーリヤはニコニコとこちらを見返して来るだけである。
「じゃあよろしくね!」
いい笑顔で去っていくガーリヤ。
「はやくしなさい!」
せかして来るリディリ。
溜息をついてクルリは立ち上がった。




