29話 フラバナ3
「麻薬を売ったらどうなりますか」
フラバナがリディリに聞く。
「気分が良くなるんでしょ?」
「それは買ったほうですね」
「じゃあなんなのよ」
「売った方はお金が儲かるでしょう」
リディリは首をかしげる。
「? そりゃあそうでしょ」
「儲かったらどうします?」
「そりゃあ……使うか貯めるんじゃないの?」
「でも麻薬を売っているのは秘密なんですよ」
「つまりなんなのよ!」
しびれを切らしたリディリにウェルが補足する。
「麻薬を売った奴は周りから見たら不自然に金を持ってるということだ」
「つまり急に羽振りが良くなった人間が怪しいという事なんですね~」
ガーリヤも説明する。
「つまり……あんたの店に急にお金を持っていてあやしい人間が来たってことね?」
リディリが特にまとまってないがまとめた。
「そうなんです、普段見ないけど羽振りがいい客だったんですが、妙に偉そうでしてね」
「そいつがあやしいのね!?」
リディリが食い気味に反応する。
「いやまあ、そうなんですけどもうちょっと説明させてください
見ない顔だったから最初は成金かと思ったんですが、成金にしては金の使い方とかが板についてましてね」
「それでまあともかく偉そうでむかついたから友人の修行仲間に会った時に愚痴ったら、古巣のグラズフルに良く現れるらしくてですね」
「グラズフル?」
「この国の最高級レストランですよ~」
ウェルの呟きにガーリヤが答えた。
「どうやらそいつはグルズ家っていう商家の名家の当主らしいんですが、
グルズ家ってのはとっくに没落してて特に何かあった噂も無いのに、最近妙に良く来るって首をかしげてたんですよ」
「つまりそいつが犯人なのね!?」
「まあ最近理由がわからないけど急に金回りが良いから怪しい人物ってだけで決まった訳でもないんですが」
リディリの決めつけにフラバナが気楽に答える。
「グルズ家はこの国の第一の商家で歴史も古く相当の名家なんですが~」
ガーリヤが説明を始める。
「前の内乱で今の王様につかなかったのでなんだかんだ没落しちゃったんですね~
ただまあ腐っても元が名家で爵位こそないものの古くから貴族のお嫁さんも貰ったりしているのでなんだかんだ家の格や影響力はあるんですが~」
「つまりそいつが麻薬で一発逆転を狙ったのね!」
リディリが食いつく。
「いや、別に怪しいだけで決まった訳ではないんじゃ……」
「偉そうな奴って嫌いなんで冤罪でもなんでも捕まってほしいですねー」
クルリが水を差すが、すでにリディリの中では犯人に確定していた。
フラバナは最初から他人事である。
グルズ家が犯人だとすると、ウェルはようやく話がわかってきた。
つまりウィーグは最初からそのグルズ家が犯人と、こちらに話した時から判明していたのだ。
グルズ家が状況証拠から犯人と推測出来ていたが確実な証拠な無かったので捜査を進めていたのであろう。
まあ当然と言えば当然である、衛兵や治安騎士隊でもないのに踏み込んで何も無かったら逆にスィラーン商会の痛手になる。
ただわからないのはそこまでわかっていて何故証拠が掴めないのかだが……。
後、そのタイミングで滅多にいないはずの盗賊、それも雇われたであろうハンター達によって馬車が襲撃された理由も不明である。
襲撃がグルズ家だとすればスィラーン商会を刺激するだけだし嫌がらせをしたかっただけとしか思えない。
まあそれはともかくグルズ家が犯人だろうということはウィーグは最初からわかっていたのだろうが、とりあえず盛り上がってるしウェルは黙っていることにした。
「さっそくそいつの屋敷に行ってとっ捕まえましょう!」
「お嬢様~別に決まった訳では無いですし、いきなり乗り込んでもこっちが捕まるだけですよ~、まずは証拠が無いと~」
「そもそも僕たちは関係ないんだけど……」
乗り気のリディリをガーリヤが諫めている、クルリはそもそもやる気がない。
まあ確かにクルリ達には関係のない事である。
「証拠があればいいのね!?」
「そうですよ~、もしそのグルズ家が犯人でしたらですけど~」
「じゃあ証拠を集めればいいのね! 私たちで捕まえるわよ!」
「ええー」
グルズ家が犯人ならウィーグと打ち合わせをしていたガーリヤが知らないはずは無いのだが……。
ウェルは喋っても面倒なので黙っている事にした。




