24話 襲撃2
翌日。
「聞いたぞクルリ」
「はやい……」
歌う波音亭、起きたにがゆっくりだったクルリは遅い朝食を取っていた。
昨日とは違うシャツとズボンの姿でミディニは当然のように同じテーブルに座った。
店内は閑散としており周りには人はいない、がミディニは声を潜めて話しかけてきた。
「麻薬を追っているのだろう……?」
「えーと……ミディニさんでしたっけ? 僕は別にそんな事は」
「みなまで言うな、わかっている」
「チームの人がちょっと関係してそれで抜けてるだけで僕は全然関係ありませんからね?」
ミディニは目を閉じニヤリと笑う。
「私も少年の正義の志を嬉しく思う……」
「わかってない……」
こんな時に限ってウェルは別のチームとの依頼に出ている。
頼りにならない。
「ガーリヤさんとリディリはどうしたんですか?」
クルリは何とかして話題を変えようとした。
この二人のどちらからか麻薬の話を聞いたのは間違いない。
ガーリヤがわざわざこの人物に喋るとは思えないのでリディリかもしれない。
昨日の事からガーリヤがいればこの人物は何とかなる。
「リディリ様とガーリヤさんは隣街へ行かれた、私は神殿で待機を命じられてな」
駄目だった。
「全然待機してない……」
「突如と聞かされたこの国の危機に対し、居ても立っても居られなくなってな。いや表向きは待機でも、むしろこの国の正義の為に動け、という事なのだろう」
(恐ろしい事に)真剣な目で話すミディニ。
「よく今までこの人と遭遇しなかったな……」
クルリは狂人特有の論理の飛躍に恐怖していた。
こんな事なら昨日牢に入れるべきと主張するべきだった。
嫌な予感、というもう相手が何を言うかわかっていたが、一応聞くしかなかった。
「で、どうしたんですか?」
「今から麻薬を追おう」
「そうですか頑張ってください」
「? さあ行くぞ」
「僕は嫌です」
ミディニはこくりと頷くと立ち上がった。
「そうか、では行こう」
「お願いします、話を聞いてください……」
「わかっている、麻薬を売るような犯罪組織と対決することは恐ろしい事だ。だが君の溢れる正義の心が私に届いてる」
無理だ。
クルリは諦めた。
「恐らくここが犯人のアジトだ」
「はあ……」
スルフナン西南地区……端的に言ってしまえばガラの悪い場所である。
そんな中、表構えの立派な建物で落書きもされてない。
もうわかっている。
一応聞いた。
「ここはなんなんですか?」
「マフィアだ」
「はい」
わかっていた。
「なんだノリが悪いな」
クルリの気乗りがしていないことを察して背中をバンバン叩いてくる。
気乗りどころではないことを察してほしいが無理であると事はわかりきっていた。
「心配することは無いぞ、こいつらはどんなに殴っても衛兵を呼ばない」
「そんな心配はしていないのですが」
「しかし不思議だな、昨日お前と一緒にいた男はどう見てもマフィアだったのに衛兵を呼ぼうとするとは。おかげでガーリヤさんにこってり絞られてしまった」
「いやウェルさんはマフィアじゃないですし」
「嘘を言うな顔を見ればわかる」
断言する。
何を言っても無駄という事を再確認する。
「で、ここのマフィアが何で犯人なんですか?」
「何を言ってるんだ、麻薬ときたらマフィア、マフィアなら犯人だろう」
クルリはそろそろ走って逃げる事を考えていたが絶対に追いかけて来る。
昨日の身体能力を見るに逃げるのは難しいだろう。
「何故こんな事に……」
「そうだな……私も愛する祖国を蝕む病魔を憎む気持ちでいっぱいだ。それに私がこれを見事に解決すればリディリ様の尊敬も独り占めだ」
明らかに後半しか頭にない表情で語るミディニ。
「そうですか……」
どうやって逃げるか、クルリは考えていたがタイミングが掴めない。
逃げられてもこの狂人に恨まれる。
詰みである。
「よし! やる気がわいてきた! 行くぞ!」
ミディニは天に向かって叫ぶと足を振り上げた。
「オラッ!」
勢いのまま蹴破った。
「何だてめえ……てめえまたか!」
中からいかにもマフィアという男たちがわらわらと出て来る。
見たところ全員犬の獣人である。
「……知合いですか?」
「知らん。 だがここにはたまに来ている」
「何故?」
「さっきも言ったろう、マフィアはいくら殴っても衛兵を呼ばないんだ」
「はい?」
「だからむしゃくしゃした時にここら辺にたまにきて殴りに来ている。犯罪者というのは便利だな」
「犯罪者はあなたですよ!」
たまらず声を張る。
「? 犯罪者はマフィアだろ? 訳のわからないことを言うな」
きょとんとした顔で言って来る。
完全に間違えた、宿から出るべきでなかった。
「手前ら、わけわかんねえこと言ってんじゃねえぞ! 何が目的だ!」
「わかっているだろう」
「知らねえよ! ドア蹴破ったのはいいからさっさと帰れ!」
「帰っていいんだ」
クルリは思わず呟いたが、まあミディニに何回も殴り倒されているだろうから当然かもしれない。
「とぼけるなよ悪党共、お前たちが売りさばいている麻薬の事だ」
「ほんとに知らねえよ!」
マフィアが大声をあげる。
「ふん、まあとぼけるのはわかっている」
「とぼけてもいねえ! そもそもなんなんだお前は!」
クルリとしては完全にマフィアの同意していた。
マフィアがさばいているような単純な事ならウィーグ達スィラーン商会がとっくに解決しているだろう。
だがもうそんなことどうでもいい。
気付かれないようにじりじりと後ずさりする。
もう何とか逃げるしかない。
と、思ったらガシリとミディニに肩を掴まれた。
「ふっ、問われて簡単に喋るとは私も思っていない」
すごい力で掴まれててビクともしない。
ミディニは続ける。
「お前たちをこれからこのクルリが倒す、そうしたら洗いざらい喋ってもらおう」
「なんで?」
マフィアとクルリの声がハモった。




