1.大切だったもの。
音楽が好き。
そう思ったのはいつだったっけ。
昔と今では大きく世界が変わった。
いや、変わってしまった。
それでも、私は.....
20XX年、私たちが生まれたこの国から、音楽が消えた。
「はーる!おはよう。」
「あみ、おはよう!」
私、宮崎 華瑠 は現在大学2年生。
そして、高校の時であった友達、高梨 阿未 も同じ大学の2年生。
私たちが出会ったきっかけになったのは、音楽だった。
高校生の時クラスは一緒だったけど、話したこともなかった阿未と私を繋げてくれたのは、当時流行っていたDJの曲だった。
同じバス停でバスを待っていた時、いつものように音楽を聴いていたら、音漏れしていたみたいで。
「ねえ!それって、DJあやの曲でしょ!」
「え、う、うん。そうだけど。」
「あたしもそれ好きなんだよね~、特に“ウィスキーはロックで”!あれは中毒性あるよね。」
「え!あたしもその曲が一番好き!頭から離れないんだよね。」
「やば~、ねね!ちょっと話さない?」
「え?」
それから今までずーっと一緒にいた。
クラスでも話すようになって、阿未とはいつの間にか親友みたいになっている。
「ねえはる!きいてる?」
「え?あぁごめん!聞いてなかった(笑)」
「も~、それにしてもさ。」
話しを聞いてなかったことに少し膨れた感じで話し始めた。
「やっぱ、物足りないよね。」
「え?何が?」
「何がって...。法律だよ法律。」
「あぁ、音楽の奴?」
私たちが大学に上がる前、国が大きな法律を作った。
それは、音楽を聴くこと、歌うこと、口ずさんだり鼻歌にすること全てを禁ずる。
っていう意味の分からない法律だ。
最初はみんな反対していたけど、デモとかしている人たちは全員捕まって、今ではもう逆らう人はいなくなっていた。
「なんで、あんな法律作ったのかな~。」
「本当だよね。別に音楽なくしても何も変わらないのに。」
国が音楽をなくした理由はいくつかあった。
1つ目、音楽のせいで若者が大きく変わり、悪いことする人が増えたから。
2つ目、音楽が流行ると、事故も多くなり死者も増えたから。
3つ目、音楽が影響で、自殺または他殺する人が急増したから。
そして4つ目、音楽に乗って動画をのせるアプリが増えて、若者の将来にひびが入っているから。
こんな私たちからしたらどうでもいいことで、いとも簡単に国は音楽を奪った。
そして一生、これから先も開くことのない箱に頑丈なカギを付けたのだ。
「私たちから奪ったものは大きいぞ~ってね。」
「音楽の存在覚えてるのって、私たちだけじゃない?」
「まだ、禁止されて2年しかたってないのに、みんな忘れてるよね。」
「お店も今じゃ無音が当たり前だし、テーマパークもほとんど閉園してるもんね。」
「本当に、毎日がつまらないよ。どっかにいいことないかなーーー!」
前まで普通にあったものが、いきなり消えると違和感しかないのに、
この国の人はもう慣れてしまったのか。
事故も死者も著しく減ったけど、これでいいのかな。
「だーもう!こんなことしててもな。ねえ、はる!」
「んー?」
「今日出かけようよ!」
「え?だってこの後講義が、」
「そんなのいいよ!たまには息抜きも必要!」
「えぇ~」
「ほら!そうと決まればレッツGO!」
「いいのかな~。」
音楽のない世界なんて、あの時は想像してもなかったけど。
無いってすごく、つまらないんだな。