19 女王、カイトに興味を抱く
「な、なん、、、、、、姉さま、珍しいね。姉さまがダンジョンの監察に興味もつなんて。」
と危うく ‘なんで姉さまがここに??‘ と言いかけた衝撃を堪えて務めて自然にシルビアに声をかける。
「今日は1階層から7階層まで全部確認しよう!なんか水資源フロアで下水の処理装置と上水の供給量で問題が起こるかもって話もあったし、農地フロアじゃあ、労働がきついって文句がでてたみたい。採石場や鉱山も同じ!!牧場フロアは、、、、なんだっけ、、、、えと、、、羊とかの毛でくしゃみがでて困る!!っていうのもあったんだ!!!!」
一気に捲くし立てながらアリアは絶望を感じる。シルビアの大きく見開かれた眼が明らかに興味を持つ視線に変わるのを見ていたのだ。
先ほどまでカイトを手に入れる為なら何でもするしできるという全能感におぼれていたが、目の前にいる存在はアリアを片手でしかも片手間にぶっ飛ばす程の力を持つことを知っている。しかもここに来てしまった。なんとか自分に出来ることはこの存在が日頃忌避する事を並べ立てて、自分から別なことに興味を持つように仕向ける事しかなない。シルビアが自分の全身を嘗める様に見るのを感じながら
「あ、後自分が教えているメイド達なんだけど大分訓練も終わったし、姉さまの前でお披露目したいんだよね。監察の後でなんだけど、、、、作法とか見た目とか、あ、あと、そう、、、そう!戦闘力とかも!!!!」
最後の最後に姉さまが興味を持ちそうな話題が出てきてちょっと自分を褒めてやりたい気分になる。これは食いついてくるはず。今までアリアがメイド達に戦闘技術を教えていることを知ったシルビアが何度か摸擬戦をしたいと話したのだがアリアはずっと拒否してきたのだ。象に蟻の戦いを見せても興醒めされるのが落ちと分かっていたためだ。しかし、そうもいっていられない。可愛がってきたメイド達だが彼女たちは今日この為に存在していたのだ!!とアリアは部下達を一括即売した。
「アリア。。。。あなたって発情期のハーピーみたいな顔してるけど大丈夫??それに何のことか知らないけど監察なんていかないわ。メイド達の方は、、そうね、そのうちね。」
とシルビアがコツコツとハイヒールの音をたてながら近寄ってくる。
(駄目だった。全然興味そらせなかった。。。)
瞬時に状況を悟ったアリアは次善の策に移行する。
「お、お姉さま実はお願いがあって! 二階に来られた客人ーーーー」
「珍しいわね。あの戦いぶりじゃないかしら? ハイ・エルフが精霊森林からでてくるなんて。。。。あぁ明日の午後一番は彼なのね。」
とシルビアが口を開く。シルビアの視線には暗くなった中、街を呆けたように見つめるカイトの姿があった。
(しまった。。。使い魔のリンクに介入された。。。。)
「彼らって面白い加護貰うのよね。世界樹って何考えてるのかしら?アリアには話した事あるじゃない?胸糞悪い奴隷紋が使われた戦いの事よ。その時にハイ・エルフも一緒にいたんだけど、彼らの加護は話してなかったわよね。名前は忘れたけどパッシブで便秘にならない加護、首を寝違えない加護、朝にすっきり目覚める加護なんて持ってる奴もいたわね。一体何の為のスキルか分からないわよね。。。だけど、強くて勇ましかったわ。永遠の命もあって顔も好みの者ばっかりだったけど。。。。不死性が私たちより弱いのよね。。。」
懐かしそうにシルビアが話す。
「それはそうと、あの顔は覚えがないわ。きっと新しく生まれたか、あの戦いに参加してなかった者なんでしょう、面白いわ。アリア、それと一緒に送られてきた私用の物も置いてあるんでしょう?今夜、私は貴方の部下として彼の晩餐に参加するわ。」
入管管理用の建物に向かって歩き始めたカイトを眺めながらシルビアはアリアのセクシーメイド服を指さした。