153 総力戦
村の真ん中にある大きな集会所、そこは集められた子供や女性達で溢れていた。
もうかれこれ6日間集会所とその周辺の家屋にいる彼女達の緊張は限界に近かった。夜は灯りもともせず、声も出せない。しかし事情の分からぬ赤子達は昼夜を問わず泣き始めたりグズったりする。なんとか防音や沈黙の魔法をその度に唱えていたが何度かは声が漏れていた。
何時もはやんちゃ盛りの幼い子供達は周りの大人達の雰囲気を子供なりに察しているのかたまにじゃれ合う時もあるが大人しいのが救いであった。しかし火が使えなくなってから6日だ。ひもじさや不安から急に泣き出したりぐずったりする事も増え、周りの大人達も急速に疲弊が進んでいた。
そんな時に大きな声が響き渡る。
「女衆! 広場に集まってくれ! 子供も連れて全員だ。」
ガジの右腕の男の声であった。
広場に集まった女達の顔は緊張で強張っていた。当初は友達と泊り会などとはしゃいでいた未婚の少女達も薄々と自分達の置かれている状況に気づいていた。たまに聞こえる怒号や悲鳴が彼女達にも聞こえていたためだ。
広場に集まった女性達を見渡すのは2人。
1人はガジの右腕であるアレンと兵卒女衆の長アルミの右腕であるジェイナである。
「先ずガジ村長からの指示を伝えるぞ!
兵卒の女衆はこれより村の防衛の参加してくれ。あと、8歳以下の子供は貯蔵庫に隔離する。。。」
とチラッとジェイナに視線を送るアレン。視線を受けたジェイナは少し頷きアレンより一歩前に出て後を引き継ぐ。
「先ずは貯蔵庫に行く者達、、、貯蔵庫は今夜、明日にでも食料、水の確認が済み次第に封印結界を張って内側からも外側からも開けられないようになる。8歳以下の子供、乳のみ子とその母親前に出てきて。」
アレンの指示を聞いて少し周りの者と話を始めた者もいたがジェイナの発言を聞いてすぐに赤子を抱いた母親が4名出てくる。
何名かの理発的な子供も自発的に前に出てくる。そんな中
「えぇー? 俺この間9歳になったよ?来年は加護貰え・・」
「母さんが間違ってたの! お前はまだ8歳だよ!!!良いから行きなさい!!!」
初めて見る母親の剣幕に押されたのか母親に不満の表情を見せながら前に出てくる男の子。そんな男の子を顔つきは男の子を睨むような顔つきだが泣きそうな眼で見つめる母親。
周りの女性たちはそんな彼らの会話を聞こえないフリをしていた。。。何故ならこの母親は守られる子供の代わりに時が来れば村のために身をもってゴブリン達の足止めをする事を公言したのだ。そんな母親が5名続いた。
集まった総数33名に対して貯蔵庫はまだまだ余裕がある。が、
「次は貯蔵庫で子供達の面倒を見る者を5名選ぶ。。。未婚で兄弟が居ない者、あと両親が共に兵卒の者前にでて。」
この呼びかけに応えた娘達は10人。
「貴方達に好きな男が居るなら子供の世話でなくその男の側で防衛の手伝いをする事も出来る。どっちか選んで。。。ただ5名は貯蔵庫に行ってもらう。私が指名するから拒否は認められない。」
娘達は全員惚れた男の側での防衛を選んだ。そう言う年頃なのだ。
「・・・私が決める。貴女、そして貴女、貴女、、貴女そして、、、レイヤ。貴女達に貯蔵庫で子供の面倒を見てもらう」
「母さん。。。私は」
レイヤと呼ばれた娘がジェイナに口を開くがジェイナは娘の事を一瞥もせずに
「貯蔵庫行きが決まったものは早急に準備をして中で待機していてくれ。ただまだ時間はあるから挨拶なりしてきてくれても構わない。
あと、火の使用が今日から解除される。女衆は交代で炊き出しを頼む。ただし火を使って良いのは村の中央部の建物だけだ。細かい指示は後で出すが、牛を全部潰してせいのつくもの、保存食を作ってくれ。みんな先ずは食べる事から始めよう!」